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闘牛士

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第三章

「だからだ」
「それじゃあね」
「引退する前に色々やってみる」
 それを行う前にだ、まだだというのだ。
「最後の最後までな」
「あがくのね」
「相手も最後までやっているからな」 
 自分が倒す闘牛達もだというのだ、彼等にしても倒れ動けなくその時まで向かって来て戦う、いつもその彼等を見ているからこその言葉だった。
「俺もそうする」
「闘牛士としてなのね」
「牛もそうならだ」
 自分もだというのだ。
「戦う、最後の最後までな」
「そうしてね」
「それが闘牛士ならな」
 そうするとだ、彼は引退する前にやれることをやって身に着けるなら身に着けようというのだった、そしてだった。
 彼はトレーニングをこれまでより遥かに多くした、そしてその動きも。
 ただ身体能力だけでなかった、衰えたそれをカバーすると共に。
 技、それを見ていったのだった。
 その彼のトレーニングを見てだ、トレーナーは目を丸くさせて彼に言った。
 トレーニングの休憩の合間にだ、トレーナーはスポーツドリンクを差し出しながらそのうえで黒いジャージ姿の彼に言った。
「最近練習時間も増えましたし」
「それにだな」
「はい、トレーニングの仕方を変えられましたね」
「これまでは身体能力にばかり頼っていたからな」
「しかしそれをですね」
「変えてみている」
 今実際にだというのだ。
「技だな」
「それをですね」
「考えてみている」
 それでトレーニングをしているというのだ。
「これまでの俺はスピードばかりだったな」
「はい、確かに」
 このことはトレーナーも見ているからわかる、ベルゴンツィはトレーニングもあくまでそれをメインにしていたのだ。
 だが、だそれがなのだ。
「そのスピードがな、衰えてきているからな」
「それで技、ですか」
「身体のキレもな」
「これまではスピードに頼っていましたね」
「それをだ」
 技、それに切り替えていくというのだ。
「後は食事も変えるか」
「どうされますか、そっちは」
「これまでは闘牛の前も同じものを食べていたがな」
 普段通りに、というのだ。
「どうするかだな」
「それならです」
 すぐにだ、トレーナーは微笑んで彼にこう言った。
「レーサーみたいにしますか?」
「レーサーか」
「はい、レーサーはレース前には食事を切り替えますよね」
「確か炭水化物にだな」
「その料理にしますから」
 肉を主体ではなく、というのだ。
「それでどうですか?」
「炭水化物は熱になってだな」
「はい、身体の動きがよくなりますから」
 レーサー達がそうしていることには訳があるのだ、それでトレーナーもこのやり方を話したのである。
「どうでしょうか」
「よし、それじゃあな」
 ベルゴンツィも彼の言葉を容れた、そうしてだった。 
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