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専守防衛

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第二章

「いざとなったらすぐに軍が集められてライフルだって皆持っているうえに食料の備蓄だってしているんだよ」
「そこが日本と違うっていうのね」
「専守防衛にしたいんなら軍隊が必要なんだよ」
 しかもその軍はというと。
「かなりの規模のがな」
「じゃあ私の言うことが間違ってるっていうの?」
「そうだよ」
 まさにその通りだというのだ。
「あんたどっちの国もわかってないよ、若し」
「若し?」
「あんたみたいなこと言ったら」
 日本が交田の言う通りの政策をしたらというのだ。
「日本が攻め滅ぼされるよ」
「何処に攻められるっていうのよ」
「北朝鮮だよ」
 津上は代表としてこの国を挙げた。
「今だって核ミサイル開発してるだろ」
「あれはいいのよ」
「どういいんだ」
 津上は怒って交田に言い返した。
「核兵器持っていて何がいいんだ」
「あれはアメリカへの備えだからいいのよ」
 腕を組んで憮然とした顔での主張だった。
「だからいいのよ」
「そんなこと言ったら日本も持っていいことになるぞ」
「日本は駄目に決まってるでしょ」
「だから何でそうなるんだ!」
「日本は過去に何したのよ!」 
 論理のすり替えだった、明らかに。
「それ考えたら駄目に決まってるでしょ!」
「北朝鮮は過去に何をしたんだ!日本の過去も調べたら何もしていなかったぞ!」
 交田の言う様なことをだ、津上は反論した。
「拉致はいいのか!」
「それはそれこれはこれよ!」
「何がそれはそれだ!」
 こんな調子だった、とにかく交田はスウェーデンを理解していなかった。彼女にとってこの国は理想の国なのだ。
 しかしスウェーデンを知る者はこう言うのだった。
「あそこはあそこで問題がありますよ」
「問題のない国なんてないですよ」
 こう言うのだ。
「そもそも理想の国なんてないですよ」
「そうした国は」
「どの国だってそういう意味で一緒ですから」
「理想の国とかも」
「ないです」
 こう言うのだ、彼等は。
 しかしだ、交田はというと。
 相変わらず己の考えを変えない、それで言うのだった。
「だから何度も言ってるでしょ」
「日本はスウェーデンになれっていうんだな」
「ええ、そうよ」
 前と同じ番組で津上に話すのだった。
「今の日本は駄目なのよ」
「だから皆言ってるだろ」
 津上は腕を組んでむっとした顔で交田に言い返す、今も。
「スウェーデンはあんたが思ってる様な国じゃなくてな」
「スウェーデンの軍隊は綺麗な軍隊なのよ」
「そんな軍隊あるか!」
 怒ってだ、津上は反論した。
「どの軍隊でも同じだよ。日本軍でもな!」
「日本軍は悪い軍隊だったのよ!」
 交田は目を怒らせて力説する、とはいっても周りの目は冷たいがそんなことを気にする彼女ではないから余計に難しい。
「散々悪いことしたでしょ!」
「だからその証拠はあるのか!」
「証拠なら幾らでもあるでしょ!」
「極東軍事裁判の証言は全部否定されてるでしょ」
 ここで一人言って来た、台湾人の近美玲だ。白髪の老婆だがその顔立ちも姿勢も実に凛としたものである。
「それも慰安婦も」
「慰安婦はあったのよ!」
 まだ言う交田だった、まるで獣の様な顔で。
「クマナスミ報告で!朝墓新聞の一面に載ってたでしょ!」
「あの一面嘘だろ!」
 津上はまた怒った。
「あれはあの新聞の事実を捻じ曲げた虚報なんだよ!」
「虚報ですって!?」
「ああ、そうだよ!」
 こう主張するのだ。 
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