首縊り
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第五章
「その頃の唐のことは知っているな」
「はい、乱れていましたね」
「唐も衰え大乱が起こった」
「黄巣の乱ですね」
「あの乱はこの国の全てを覆った」
江南にはじまり広東から北に上がり長安を陥とした、そして山東まで逃れてそこで終わった。まさにこの国を一周した大乱だった。
「あれだけの大乱はなかった」
「その大乱の中で」
「この南京もだ」
「建業といった頃ですね」
「乱が及び乱れていた」
「それでなのですか」
「この屋敷の前に、唐の頃にも栄えていた家があったのだ」
関羽はその頃のことも知っていた、それで今話せるのだ。
「あの鬼はその家の娘だった」
「しかし建業が賊に脅かされ」
「そしてだ」
そうしてだったというのだ。
「賊に辱められる前にだ」
「自ら首を吊ったのですか」
「そうして鬼になったのだ」
縊鬼、それにだというのだ。
「それになったのだ」
「左様でしたか」
「それで」
「自ら命を絶つからにはそれなりの事情がある」
誰も好き好んで自ら死ぬ訳ではない、こうした場合もだ。
「無念であっただろう、それも特にだ」
「首を吊ることはですね」
「そのことは」
「特に苦しいからな」
だからだというのだ。
「縊鬼は特に恐ろしいのだ」
「まさか唐の頃からの怨みとは」
「それだけ長いとは」
「その乱の時に屋敷は焼かれ娘の家族も皆殺された」
その怨みもあったというのだ。
「それだけにな」
「ああなったのですか」
「左様でしたか」
「うむ、しかしじゃ」
だが鬼は冥界に行った、それでだというのだ。
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