東方清天落
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初話
前書き
初話です。改行とか、難しいですね。ドキドキしてます。
スタートです。
これは、物語。
ある者は、嘆く。
「未来なんてない。だって、すぐに今になる。今なんてない。だって、すぐに過去になる。
過去だってない。だって、もう無くなって、終わったことだから。
なら、僕はどこにいるの?」
ある者は答える。
「知るか。」
―――学校 放課後―――
「……んぁ、ふぅ……んぅ」
眠い、いつもこの時間は眠くなる。自分でもなぜなのかはわからないが、
とにかく眠くなる。眠っても、夢も見ないのだから、俺は疲れているのだろうか?
夢を見ないのは、眠りが深いからだ、とどこかで聞いたが……
「いつもいつも、よく寝てるねー。たまには早寝した方がいいと思うよ?」
眠気を覚まそうとしたところで、声をかけられた。
「別に……日付が変わる前には寝てるし……それに、今日は寝てないしぃ……」
そうだ、今日は寝ていない。今日は。
「いやいや、寝てたでしょう。先生が声かけても、一言も返事しないからいないことにして
授業進んでたんだよ?もうちょいでテストなのに、大丈夫なの?」
清水美夏(しみず みか)ほんとうに小さいときからちょくちょく縁があり、
よく同じクラスになっている。ちなみに学校は全部同じ。
「……なんと」
寝てたらしい。
「まぁ、赤点はないでしょ……あとで色々と見せてちょ~……」
「まったく、いつもそんななんだから。ちゃちゃっと眠気さまして、帰るよ?」
―――帰り道―――
「さて、今日はどっちの家でやろうか?ありがとう。」
「まだなにも言ってないよね、目が覚めるとすぐにいつもの調子になるんだから。
今日はそっちでやるよ?」
「……ん、わかったよ、んじゃあ、着いたら下で待っててよ。部屋かたしちゃうから。」
「多少散らばってるくらい、別にいいのに。あんたの部屋が散らばってるとことか、想像できないんだけど。」
「そうか?んー……まぁ、いいか。面倒くさいし。」
「自分で言っときながら面倒って……」
他愛ない話をしながら家へ帰る。
そう遠くない距離だが、慣れればそれ以上に短いように感じる。
俺の家には、体感、すぐに着いた。
「ただいま」「お邪魔しまーす」
玄関を開けたら、ちょうどそこに妹がいた。
妹も、学校から帰ってきたばかりらしい、制服に身をつつんでいる。
「お兄ちゃん、おかえりー。清水さんも、おかえりなさーい。」
「あ、美冬ちゃん、ちょうど着いたところ?」
「うん、そうだよー。今日は……まぁ、お兄ちゃんがノート見せて欲しいって言ったんだよね?後でなんか持っていきますよ。」
天城陽菜(あましろ はるな)俺の妹で、中学2年生。来年から受験生だと、勉強に励んでいる。俺とは違い、しっかりしている。中二病にかからなかったことに内心ほっとしている自分がいる。ほんとによかった。
「そう?こいつの部屋行くときについでに持ってくから、大丈夫よ?」
「ううん、私もあとで教えてもらいたいことあるから、そのときに持っていきますよ。
……あ、ご一緒しても大丈夫ですか?」
「全然おっけーおっけー。受験勉強偉いねー、こいつとは大違い。」
「やっと話振られたと思ったらそれか。いいじゃんか、進路に困らない程度にはできてるんだし。泣くよ?」
泣かないけど。
「それじゃあ、着替えたらお邪魔しますね。飲み物はいつもどおりでいいですか?」
「あれ?スr「うん、ありがとうね、先に部屋で待ってるね。」
疑問さえ入れてもらえない!?
「ほ、ほんとに泣いちゃうよ!?いいの!?」
「「……」」
泣きそう。
―――部屋―――
玄関での悲劇から数時間、
「―えっと、ここは―――」
「そこは、先に因数分解をしてから―」
「あ、そっか、そしたら分母と分子で共通なのが出るから―」
すっかり美夏と陽菜の一対一の個別授業となっていた。
まぁ、俺はノート写させてもらうだけだし、そもにわかんない問題が
あんまないからしょうがないっちゃしょうがないんだけど。
……あ、もうこんな時間だ。
「あ、なるほど、そうすれば代入で答えが出せますね」
「そうそう、ここのページの問題はだいたいこれと同じやり方で出来るから、
参考にしながらやってみて。」
「……なぁ、美夏。」
タイミングを見計らって声をかける。
「ん?なに?」
「今日はどうすんの?」
「ん?……んー、あと、30分くらいしかないや……」
「え?……あ、もうこんな時間!?すみません、全然気づかなかったです!」
「いやぁ、大丈夫よ。10分もあれば家に着くし、私も高校生なんだから、少しくらい遅くなったって。」
「そ、そうですか?もう、大分進みましたし、あまり遅くなっては……」
「うーん。ま、そうね。たまには早く寝ようかしら。」
「ん、じゃあ、送っていくよ。近いっつっても、暗いのは危ないだろ。」
「ありがとね。じゃあ、今日はお疲れ様、陽菜ちゃん。」
「はい、ありがとうございました。今度、遊びに来てくださいね。」
―――美夏宅前―――
学校からの帰りと同様、何気ない話をしながら歩く。
下校のときよりも、一層早いように感じた。
「じゃ、ありがとね、今日はさっさと寝ちゃいなさいよ?」
美夏の家は一般の家より少し広い。和風というより洋風で、目立ちすぎない、暖かい印象を受ける。
……2階の部屋の電気がついていない、今日はまだ両親は帰ってきていないようだ。
「わかってるよ、点数取れたって、単位落としちゃ意味ないからな。」
軽く話した後、挨拶を交わして別れる。
……俺は、まっすぐに、家に帰る。
―――夜、自室―――
家に帰り、妹と少し話をし、「おやすみ」とかわしてから数刻、現在、23時を少し、本当に少し過ぎたあたり、外を確認し、妹が寝ているのを確認してから、ゆっくりと、音をたてないように、家を出た。
―――深夜、外―――
(……よかった)
俺がこの時間帯に外にいることは珍しい。自分で、そう思うほどには。
(……だけど、これからどうする?この時間帯だ、人はそうそう通らない)
まぁ、そうじゃないと話もできないからな。仕方ない。
さて、なんで俺がこんな時間に外にいるかというと。
(……なんとか他人に迷惑がかからないようにしないと……まったく、なんだっていうんだ。心当たりがない)
なぜか、見られているのだ。自意識過剰なわけじゃない。根拠はある。俺は、相手を、生涯において一度も見たことがないし、家の前で2,3時間もこちらの部屋を見ていたらそれはもうそうだろう。
(きっかけが欲しいなぁ。めんどくさい、こっちからいこう。)
怖いし、不安はある。だけど、これが陽菜や美夏に向けられるよりは遥かにいい。
どのみち俺が動かなきゃならないんだ。だったら、何も知らないうちに、が一番だろう。
―――時間:不明・場所:不明―――
おそらく、相手も俺が気づいているとわかってる。
だったら、こちらの意図をわからせれば応じるだろう……応じてほしい。
家も何もない、ただ広い場所へ出た。この場所は、俺に……俺たちにとって、とても大切な場所。
だからこそここを選んだ。何も知らない2人に、静かに無事に終わらせると形だけでも誓うために。
「……」
「その人」はただ黙ってついてきて、僕の前に現れた。
マンガみたいにこちらが声をかけたわけでもない。
……さて、目立たない範囲におさめないと。
「……すみません、正直、我慢が出来なかったもので、何か僕に用でも?」
「……」
「……そういうわけではないのですか?なら、なぜ、僕のあとをついてきていたんですか?
それに、家の前で僕の部屋を、いや、僕の事をずっと見ていましたよね?これ、警察の人に言っても、いいんですよ?」
一度に話しすぎた。こちらの手札が無駄になる。変な緊張感のせいだ。普段ならこんなこと絶対にしないのに!
「いえ、確かにあなたを付け回していましたが、害意はありません。」
「……害意はない、ですか。信用が、できないです。」
「もちろん、今のところは、です。それが正しい対応でしょう。」
「……僕は子どもですから、難しいことはできません。あなたの、言いたいことは、
なんですか?」
落ちつけ、今のところは、安全が保障されている。
焦るな。
「簡単に言うと、観察を、させて頂きました。勝手だと、お思いになるのも、当然の事でしょう。申し訳ありませんでした。」
深く頭を下げられる。今の俺のあたまでは、返す言葉を選び出せない。
その行動に気が緩みかけるが、背負っているものを思い出す。
「……なぜ?」
観察、というからには、なにか、目的、俺に何かをやらせる?だとしても、何故俺だ?
いや、この人のこと自体、見かけたこともない、仮に、そう、仮に、誰かに依頼をされて、この場にいるのなら、手当たり次第にという事も、いや、だめだ、楽観的すぎる!!
「……言葉が足りませんでした。あなた、というよりも、人そのものを、です。」
「……」
「あなたに頼みたいことはただひとつ」
もう、考える、いや、俺が考えつくようなことではない。
そう思い、相手の言葉を待つことにした。
「とある世界に、行ってほしいのです。」
……ここまでの相手の口調から、頼むといっても、決して下手に出ているわけではない。
「一度向こうにいけば、しばらくの間は戻ってこれはしないでしょう。これは、1年だとか、そういった単位ではありません。戻ってこられない可能性も十分にあります。
……友人、家族への事もあるでしょう。行くかどうかをお決めになりましたら、再び、この場へ。」
「……まって、全然理解が」
「理解できないのは承知しております。ですが、こちらもあまり余裕がないのです。
あなた「達」の「家族」のことも、その世界が関係しています。」
「……っ!お前は」
「誰かがここの近くを通るようです。他に質問が無ければ、これで。」
「……じゃあ、ひとつだけ。僕に、拒否権は?」
「貴方の意のままに」
「……選ぶのは自由だと、言いたいの?」
「時間がありません、どうか、決断は、覚悟をもって。」
そういって、「その人」は消えた。
ちょうどそこに、見回りでやってきた警察の人が来た。
見つかると面倒だ。少し遠回りをして、見つからないように帰ろう。
―――24時前 自室―――
家に帰り、思っていたより時間が経っていることに驚く。
それだけ緊張していたという事か、情けない。
(あの人が言っていたあの言葉)
―――あなた「達」の「家族」のことも、その世界が―――、その言葉が頭の中で何度も響く。だけど、
(なんて言えばいいんだよ……こんなこと、)
結局、何も悟られないように、なんて、無理になってしまった。
(……。)
自分の心は、ただひとつの事を叫んでいた。
―――翌日、学校―――
「……ねぇ、美夏?放課後、学校終わった後、少し、いいかな。」
「……?わかった、どこで?」
「あの場所で」
―――夕方 場所:不明―――
「ごめん、急に呼び出しちゃって!いや、実は頼みごとがあるんだよ!」
「……まったく、なに?一応は、聞いてあげる。」
見破られてる。まぁ、これじゃあ、しょうがないか。
「大事な事でしょう?はっきりと、伝えてよ?」
まったく、告白かも?とか、少しくらい思ってくれてもいいのに。
……でも、ありがたい
「……うん、そうだね。言うよ。」
「陽菜の事……しばらくの間、頼みたいんだ。」
「……」
沈黙。一瞬の、沈黙。
「あの子にはちゃんと言ったの?」
「ああ、言った。泣かせちゃったよ。」
「そう。」
「……。」
「……あんたがこういうとき、聴いても何も答えないのはわかってる。
だから、何も聴かない。でも、その代り、何もしない。」
「……うん。」
「いつ、戻ってくるの?これも一応、聞いといてあげる。」
「……わからない。けど、皆が生きているうちには、必ず、帰ってくるよ。」
「……そっか。なら、いいや。陽菜ちゃんの事は、私たちに任せない。私の親にも、うまく言っておいてあげる。だから、必ず、無事で、帰ってきなさいよ。」
「……うん、約束するよ。約束だ。」
「……じゃあ、いってらっしゃい。」
そうして、俺たちは、この世界で、別れた。
―――数時間後―――
太陽が沈む。こんなにきれいな夕焼けも、しばらくは見れないのかな。
結構、好きだったんだけど。
そんなことを思っていると、
「……」
「その人」が、現れた。
「……今、この場にいるという事は、決まったのですか?」
「……うん。」
「では、あなたの答えを。」
「俺は、行く。……もちろん、自分で言っていることはわかってる。覚悟だってしているつもりだ。
時間、まだ少しはあるでしょう?質問くらい、いいだろう?」
「なんでしょう?」
「なんで、俺なの?」
「私が、そう、決めたからです。」
「やっぱり、俺は子どもだから、わからないや。もう1個、質問。」
「どうぞ。」
「俺、まだあなたの名前を知らないな。なんていうの?」
「……」
「……?」
「……私の、名前は、エイリエス、と、申します。」
「エイリエス……ね、わかった。もう、聞くこともないや。」
「そうですか。……では。」
「うん……っと、そういえば、俺はどうすれば?」
「何もしなくて大丈夫です。私に任せて頂ければ。」
「わかった。」
「では、いきます。」
エイリエスと名乗ったその人は、何かを呟き―――聞こえなかったわけじゃない、聞こえても、俺には聞き取れなかった―――俺の目の前の空間を、握りつぶした。
「―――っ」
歪む、視界が、感覚が、世界が、なにもかも、歪んでいく。
いや、変化しているのは唯一つ。
「あっ、うっ」
俺自身。存在そのものが、消えていく感覚。
これは本当に大丈夫なのかと、思うほどの、痛みに襲われる。
…そういえば、任せろとは言っていたけど、安心しろとは言っていなかったな…
「これからあなたの、生き方を、見させて頂きます。」
こんな状況なのに、声ははっきりと聞こえる。
「私はあなたに対して何の制約も設けません。」
そういえば、俺は何の世界にいくのだと、
「あなたの感じたままに、歩んでください。」
いまさら、思うのだった。
後書き
初話、終了です。いかがだったでしょうか?
約5500文字ですが、2話から、ガクッと減ると思います。
モチベーション維持のために、幻想郷へ行くところまで書かせていただきました。
感想、心待ちに待っております。
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