魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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シャルシルとレヴィのぶらり紋様破壊の旅 in次元世界♪
†††Sideルシリオン†††
はやてやシグナムと話をしたその後、少し怖い表情を浮かべたフェイトから散々説教を受けた。正直心が折れそうだ。いや、気付いていないだけでもう折れているかもしれない。
「はぁ・・・もう7時半か・・・」
フェイトは最初は真剣な表情で本気で心配してくれて、それは次第と愚痴となり、そして説教という三段変形。しかも口頭ではなく念話というのがミソだ。ぐっすりと仲良く眠っているエリオとキャロを起こさないようにする配慮だろうが、それが私にとっては苦痛でしかない。声のボリュームもさることながら、聴覚をシャットアウト出来ないというのが痛かった。
「最初の心配のところは純粋に嬉しくもあったが・・・はぁ・・・」
それにしてもどこかフェイトの様子がおかしかった。はやてやシグナムよりハッキリと。何かあるのか?と訊いても、大丈夫、と。何かあるだろ、あの様子だと。まぁ私に言うような事じゃないのだろう。私に関係しているのならきっと話してくれるはずだ。
「心遣いは嬉しいが、やはり耳が痛い」
ようやくフェイトから解放され、朝食を摂るためにアースラの廊下を歩く。フェイトは今なお眠っているエリオとキャロと一緒に二度寝に入るとのことだった。何故そんなにのんびり出来るのかと言うと、クロノたち六課後見人から、3日間の休養期間を六課はもらったからだ。とは言え何人かはすでに起きて、それぞれ行動中のようだ。
(にしても、さっきからなんだ? 人の顔を見て、どうして顔を赤くする?)
廊下を歩く中、始めは気にしていなかったが、性別関係なくすれ違う隊員たちが赤面していることにおかしく思った。さすがにこれは何かあると思い、目の前にあるトイレへと駆け込んで鏡を見る。鏡に映るのは・・・
「・・・フフ・・・クフフフ・・・」
それはもう綺麗とも言えるほどの化粧を施された私の顔。自分で綺麗とか言ってて悲しくなるが。あぁそれ以前にあのド阿呆・・・。
「やってくれた・・・・」
全力で顔を洗う。ファンデーションにアイラインに口紅。くそっ、本格的に化粧しやがって。熱でうなされていた私になんてマネをするんだ。何故はやて達が私から顔を逸らし、すれ違った隊員たちが赤面する理由がようやく解った。
「すぅぅ・・・『『・・・シャルロッテェェーーーーッ!』』」
『うおうっ!? なんだぁ!!?』
リンクと念話によるダブル音響攻撃。するとシャルから驚きの声が返ってきた。あろうことにシャルは『いきなり何するのさ、ルシル! 頭キィーンしたじゃないの!』と文句を言ってきた。おいおい。君に文句が言える資格があると思っているのか、ん?
『義姉さん・・・あとで話があるから』
出来るだけ怒りの感情を抑えて、約束を取り付けようとする。
『えっと・・・お姉ちゃんにはないかな~、あはは・・・』
『・・・逃げたらピーのピーで、プーのペーでポー、ついでにパーだ』
『ごめんなさい』
ある程度シャルの苦手な事を並べると、シャルは即謝罪。シャルの撃墜を確認。
「ふぅ、まったく・・・。シャルは私の顔を落書き帳だとでも思っているのか?」
化粧も力強く洗ったことで完全に落ちた。結構苦労したがな。女性なら、もっと別の化粧品などで落とすのだろうが、男である私は知ったことか。ハンカチで濡れた顔を拭き、「よし。スッキリだ」一息つく。
「さあ、行こうか」
それじゃ説教へと参りますか。もう二度とこんなマネが出来ないようにこってりと。
†††Sideルシリオン⇒リインフォースⅡ†††
「うぅ、酷い。酷いよ。ルシルに汚されたよぉ・・・おえっぷ」
「そんなん言うてもあれはシャルちゃんの自業自得やで?」
シャルさんが涙目でそう話して、はやてちゃんが溜息。
「はやてちゃん、シャルさん、どうぞですっ」
「ありがとな、リイン」
「リイン・・・ありがとう♪」
艦長室に備えられたソファに座るはやてちゃんとシャルさんにお茶を出す。するとシャルさんは優しく撫でてくれました。気持ちよかったですー♪ さて、どうしてシャルさんが項垂れているのかと言いますと、それはさっきの朝食での出来事でした。
・―・―・回想なのですよ~♪・―・―・
ルシルさんは、シャルさんのイタズラの所為で大変お怒りで、シャルさんを散々お説教をした後・・・
「さあ、義姉さん。義弟の憤怒の籠もった手料理、食べてください」
「「「・・・」」」
わたし達の目の前に出された料理。それはルシルさんが厨房を借りて作ったものです。その料理のすべてからある野菜の匂いがするですよ~。色もほとんどある一色に統一されてますし。
「トマトのサンドウィッチ。ポテトサラダ、トマト風味。トマト100%ジュース。デザートにはトマトプリン。さあ、どうぞ! 私の心のこもった手料理です。美味しいですよ」
オールトマトのフルコース。見ればシャルさんは涙目になって、ルシルさんを上目づかいで見るです。男の人が見れば一発で落とされそうな表情ですが・・・
「あまいな。君を相手に私が落とされると思ったか?」
さすがに弟のルシルさんには通用しなかったですね~。
「チッ。・・・酷いよ、ルシル。トラウマなのに・・・」
「こっちのセリフだ。化粧された顔のままで目撃者続出。こっちがトラウマになるわっ。というか朝食だからということでの妥協だ。ありがたく思え」
結局シャルさんはトマトフルコースを食べました。涙をポロポロこぼして、何度も嘔吐しそうになって、見ているこちらが辛いですぅ~。
◦・―・―・回想終わりなのです♪・―・―・
「――で、どないするん? レヴィヤタンのこと・・・」
「うん。これから会いに行こうと思う。ルシルを連れて。だからルーテシア達の入院してる病院へ入る許可がほしいんだ」
「ん。そこんところは任しといて」
昨日確保した召喚士ルーテシア・アルピーノ。ガジェットを掃討し終えたと同時に気を失って、今は管理局直系の病院に検査入院してるです。そしてシャルさんとルシルさんの敵でした“ペッカートゥム”の1人であるレヴィヤタンもそこにいます。
「あーそれとバトルはアカンで? 病院やしなぁ」
「ん、努力はするよ」
「努力やのうて絶対な」
「りょーかーい」
そうしてシャルさんとルシルさんはアースラを後にしました。
†††SideリインフォースⅡ⇒レヴィヤタン†††
「・・・第三の力、第四の力・・・」
「あ・・・」
病院の庭先の木陰でルーテシアの髪を梳いていると、第三の力と第四の力が来た。白色は笑みを浮かべながら歩いて来るけど、黒色は目を見開いてわたしを見てる。わたしがこうして生き残っている事を、今こうして知ったって顔をしてる。警戒レベルMAX。いつでも応戦できるように意識を切り替える。
「来たよ、レヴィヤタン。そしてこんにちは、ルーテシア」
「な・・・どういうことだ、これは・・・。シャル!」
「っ!」
黒色が怒鳴った所為でルーテシアが肩を竦めてた。イラッときた。だからわたしは黒色の前まで近付いて、ぬいぐるみでボカッと殴打する。黒色はキッとわたしを睨んできた。怖くない怖くない。そう、怖がらないで良い。わたしの身の安全は白色が保証してくれてる。でも・・・やっぱり怖い。それでもわたしはルーテシアのために、言いたいことを言ってやる。
「・・・大きな、声・・・出さないで・・・ルーテシアが・・・怯えてる・・・」
「・・・え、あーっと、それはすまない・・・ルーテシア、でいいかな? はじめまして、ルシリオン・セインテスト・フォン・フライハイトだ」
「・・・ルーテシア・アルピーノ」
ルーテシアと黒色が握手しているのを見ながら、「今日は・・・何しに来たの?・・・」白色に声をかける。ルーテシアの自己紹介を聞いて、目を見開いた黒色は、「アルピーノ・・・」って小さく呟いている。
「アルピーノ・・・?」
「?」
黒色がアルピーノに反応した。気になったけど、それよりまずは目的が何かを知らないといけない。白色と違って、黒色は今のところはきっと敵だ。
「あなた達が目的としていたことを聞きに来たんだけど」
「そう・・・」
「いつの間にそう気楽に話せるような仲になったかを教えてもらいたいものだな」
黒色はルーテシアに気付かれない程度に、わたしに向けて威圧感を放ってくる。ルーテシアに配慮していることだけは感謝しよう。わたしの場合は、仕方がないから。
「我が手に携えしは確かなる幻想」
「っ! シャル! 何をするつも――」
「私に触れぬ」
それは一瞬だった。突然現れた赤い布が生きてるみたいに黒色に巻きついた。足首から口元まで縛られた黒色は、バランスを崩して転倒した。
「それじゃあ話してくれる?」
「・・・え?・・・うん、わたしの知っていること・・・全部話す・・・」
それが約束だ。ルーテシアやアギト達と一緒に居続けるための・・・。だから話そうと思う。わたしたち“大罪ペッカートゥム”の目的だったことを。さっきまでのように木陰に座る。本当はルーテシアには聞かれたくない話。だけど、嘘をついたままじゃ一緒にいる資格なんてきっとない。けどその前に・・・
「白色・・・」
「ん?」
「アレ・・・放っておいていいの?・・・」
「いいのいいの♪」
わたし達の視線の先、赤い布でグルグル巻きにされた黒色が転がったままで放置。あの赤い布に巻かれると“力”が出せないみたいだ。
「で、この次元世界で何をしようとしていたの?」
「・・・うん・・・・わたし達は――」
話す。“ペッカートゥム”が何をしようとしていたのかを。正直わたしの知る事はそんなに多くなかったりする。初めからどうでもよかったから。この次元世界と呼ばれるものが滅ぼうがどうだろうが。けど今は違う。守りたい。大好きなルーテシア達の生きるこの世界を。だから知りうる限りのことを白色と黒色に話した。
「レヴィ・・・今の本当?」
「・・・ごめん・・・ルーテシア・・・。今まで騙して・・・ごめんなさい・・・。でも今は違う・・・・わたしは・・・この世界を守る・・・何があっても・・・」
ルーテシアの両手を取って握る。信じてくれなくても、たとえ嫌われてしまっても、わたしは守るよ。大好きなルーテシアも。そのルーテシアのお母さんも。そしてみんなが生きるこの世界を。
「・・・じゃあ、これからもよろしくね、レヴィ」
「・・・うん!」
嬉しい。ルーテシアに逢えてよかった。
「白色、黒色・・・絶対に負けないで・・・」
「もちろん!」
「むーむー!」
転がってる黒色が激しく動く。わたしは白色に視線を移す。
「んーなになに。それは当然。だから安心しろレヴィヤタン・・? それはそうと今日は一段と素敵でとても綺麗ですねシャルさん・・・? だって。フフ、そんな素敵でとても綺麗だなんて・・・嬉しい!」
「むぅぅぅーーーー!!」
違うみたいだ。黒色の目が鋭くなって猛抗議を訴えてる。なにか歴代の許されざる嫉妬が知ってる白色や黒色と全然違う。わたしたち“絶対殲滅対象アポリュオン”と戦ってる時と違って、なんていうか面白い。
「えーなになに。今までのことを反省して、ふんふん、これからは誠心誠意尽くして、ふんふん、私のために何でもする?・・・うっそー、嬉しい!!」
「むぅぅぅぅーーーー!!」
その2人のやり取りを見て、ルーテシアが、そしてわたしも可笑してつい、「クスクス・・・」笑ってしまった。するとルーテシアが少し驚いたような顔になった。そう言えばルーテシアはお母さんが起きて、初めて心が生まれるって言っていた。結局それもスカリエッティの嘘だったみたいだけど。今のルーテシアにはちゃんと心が、感情があるもん。
「あ、そうだ。ねぇ、レヴィヤタン。1つ訊きたいことがあるんだけど・・・」
赤い布から解放されようとのたうち回る黒色を無視して、白色が歩いてくる。わたしはそれに首を傾げることで応えて、その先を促す。
「ベルゼブブが結構まずい感じになったのに、このミッドの界律は動かなかった。それについては何か心当たりとかない?」
「・・・許されざる怠惰の紋様・・・。それが界律の目に干渉してる・・・」
「「っ!!」」
白色と黒色が息を呑むのが判った。それも当然かもしれない。“界律”に干渉するなんて普通は出来ないから。
「ねぇ、それってさっき話してくれた目的に関わってくるんじゃないの?」
それがあると計画が果たされることになる、って話なのは聴いてるから「うん・・・それがあると・・・結構危険・・・」頷き返した。
「じ、じゃあそれを破壊しないと、目的が果たされるんじゃないの!?」
「・・・言われてみれば・・そうかも・・・」
「おーーーーーい!!」
ツッコミというのを初めて見た。
「・・・行こう・・・紋様を壊しに・・・」
立ち上がってルーテシアを、そして白色と黒色を見る。この世界のために紋様を壊して、世界を守る。
「むぅむぅ・・・」
「えー、そんなことして本当にいいのか?」
初めて本当のことを白色が言ったのか、黒色が何度も頷く。黒色も結構苦労しているんだ・・・。なんか可哀想。
「いい。・・・その代わり・・・お願いがある・・・」
これを言っておかないと、わたしは消えることになる。
「・・・この世界を守るためには・・・・わたしも消える必要が・・・ある・・・」
「っ! レ、レヴィ!?」
「どういうこと?」
驚くルーテシアと疑問顔になる白色。
「・・・紋様を破壊しても・・・“罪”が残れば何度でも復活する・・・はず。だから・・・わたしも・・・消えないと・・・・ダメ・・・」
わたし達の目的。紋様を維持して、そして1体でもいいから“罪”が生き残る。そしてそこから“主”の目的へと繋がっていく。目的の詳細は知らないけど。この世界を守るなら、紋様を破壊して、そして尚且つ“罪”が全滅しないといけない。そこにはもちろん許されざる嫉妬も含まれる。つまり、わたしがこうして存在していると、“主”がこの世界に来ちゃうということだ。
「うそ・・・」
「・・だから・・・黒色にお願い・・・わたしが消えないように・・・してほしい・・・」
「っ」
この場の空気が一気に重くなる。その原因は黒色で間違いない。白色が黒色に何を言われたのか判らないけど、赤い布が解けて消えていった。
「ふぅ・・・後で覚えてろよ、シャル。さて、レヴィヤタン。今この場で君から力ずくで紋様のある場所を訊き、私たちで壊せると思うが・・・。それ以前に紋様を破壊せずとも、ペッカートゥムの生き残りである君を斃せば決着だ。こんなにも簡単な解決法があるのに、何故回りくどいそんな方法を取る必要がある?」
「・・・それは・・・そうだけど・・・」
黒色の言うとおりだ。この世界を守るのなら、わたしが消えるだけで果たされる。でも嫌だ。それは嫌なんだ。だってまだいたいよ。ずっとルーテシアといたいんだ。
「レヴィはわたしが守る」
「ルー・・・テシア・・・?」
わたしと黒色の間に立つルーテシア。わたしには背中を見せているから表情は見えない。
「ルーテシア、君は知った。私たちの正体とその在り方を。レヴィヤタンがいなくなればそれだけで世界は守ることが出来る。君の家族も、友達もみんな守れる。それなのに――」
「レヴィも家族だ!」
ルーテシアが叫んだ。わたしのことも家族だって・・・そう叫んだ。
「レヴィは・・・わたしの友達。そして大切な家族・・・。だから守る。だからレヴィをわたしから奪おうとするなら・・・」
「・・・ルシル。そうやって子供を試すのは感心しないよ・・・」
身構えるルーテシア。すると白色がそう言いながら黒色の肩を掴む。すると黒色から威圧感が薄らいで、そして消えた。
「・・・まったく。本当にペッカートゥムなのか信じられないな。いいだろう。ルーテシアの強い心に誓おう。レヴィヤタンをどうにかして残す、と」
緊張か、それともやっぱり怖かったのか、ルーテシアが急に座り込んだ。心配してすぐに前に回り込んで顔を見る。
「よかった。これからも一緒だよ」
少し弱々しいルーテシアの微笑み。
「ありがとう・・・ルーテシア・・・」
こうしてわたしと白色と黒色の3人で、紋様破壊の旅に出ることになった。
†††Sideレヴィヤタン⇒シャルロッテ†††
アースラのはやてに許可(ルシルがなのはとフェイトに土下座したんだけどね~)を取って、今私たちはミッドから遠く離れた無人世界に来ているんだけど・・・。目的は界律干渉の紋様を破壊すること。レヴィヤタンの“位相転移”で、それはもう一瞬で目的の世界へ到着です。
「――で、レヴィヤタン。この世界の場合はどこにあるの?」
全てがジャングルとも言えるこんな世界、早々に立ち去りたい。こういう場所に限って、何かやばいのが出てくるんだから。
「・・・もう少し」
そしてテクテク歩いて、ようやくジャングルから抜けて草原に出ると・・・
「ほらぁ、やっぱり出てきた!!」
――アウカサウルスの群れが現れた――
――初代ポケ○ン 野生○ケモン戦BGMスタート――
「おお、恐竜だな。初めて生で見た。感動だ・・・!」
目の前に大きな恐竜が現れた。おののく私に対して、目を輝かせているルシル。そんなことを言っている間にも、その恐竜どもが餌である私たちを狙って向かって来る。
行動コマンド
たたかう
バッグ
にげる
しぬ
何、この上の行動コマンド!!?っていうか〈しぬ〉!? 死ぬのもコマンドで決定!?
「に・げ・る・の!!」
行動コマンド
たたかう
バッグ
にげる◀
しぬ
わけの判らないコマンドだけど〈にげる〉を選択。
「カメラ持って来ればよかったなぁ・・・」
もう好きにすればいいよ、ルシル。というかカメラ構えてる間にパクッといかれるよ。さて、何故私たちは戦わずに逃げるのかというと、この世界は不可侵らしく、私とルシルは異物扱いされてしまっていて魔術が使えない。
「地球でもないのに恐竜って、まさに世界の神秘」
「知るかぁぁぁぁぁーーーーーッ!!」
だからこんな状況に陥ってしまっている。
「あれより・・・白天王の方が・・・もっとかっこいい・・・。白色と黒色も・・・そう思うよね?」
「うん、今は激しくどうでもいい!」
のんびり構えているレヴィヤタンを脇に抱えて猛ダッシュ。ルシルも私に続いてダッシュ。そして容易く追い抜いていく。
「って、ちょっと! こっちはレヴィヤタンを抱えて走ってるんだけど! こういう時は男のルシルが抱えてよ!」
背後に轟く恐竜の群れの足音を聞きながら、ルシルへと怒鳴る。私に振り向くとルシルは親指をグッと立てて、「男女平等」そう言って走り去る。
「アハ・・・ハハハハ・・・フフフフ・・・」
「・・・白色?・・・ちょっと・・・怖いかも・・・」
「上等だコラァァァーーッ!」
先を行くルシルをぶちのめすために歩法“閃駆”を使おうとする。
「・・・レヴィヤタン・・・」
「???」
レヴィヤタンの体重が邪魔だった。どうしよう。ここに捨てていこうかな。ダメだ。レヴィヤタンが居ないと紋様がどこにあって、どんなものかも判らないし、そもそも帰れない。
「もうーーーー! 何なのよぉぉーーーーッ!」
それから10分くらい全力ダッシュして、恐竜の群れを撒いた。そのあともちろんルシルをぶちのめした。あ~スッキリした♪
†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††
「痛ったぁ・・・。理不尽だ」
いきなり腹にレヴィヤタンを投げつけられ悶絶してしまった。その後、プロレス技のコンボを食らって一度気を失ってしまった。
「もう。ちゃんとレヴィヤタンに謝っておきなよ」
「意味が解らん! っていうか謝るのはお前だ!」
「・・・うん、謝罪要求」
シャルがあまりにも理不尽な事を言うからツッコミを入れてしまった。被害者2のレヴィヤタンもシャルに謝罪を求めている。
「・・・ごめんね、レヴィヤタン。ついでにルシルも」
「ついで!? それって謝ってな――」
「「「っ!」」」
――オルニトレステスの群れが現れた――
「ルシルが大声を出すからぁぁぁーーーッ!」
「私に大声を出させたその原因はお前だ!」
レヴィヤタンを横にして抱いて再度全力疾走。外界に影響を与える魔術が使えないのは正直痛いが、魔力を使えないわけじゃないのが唯一の救いだ。魔力を全身に巡らし、身体能力を向上させる。
行動コマンド
たたかう
どうぐ
にげる
しぬ
いきなり頭の中に浮かんだ行動コマンドとやら。〈しぬ〉って、おい。何となく試しに〈たたかう〉を選択すると・・・
ルシルの特攻弾頭
ルシルの特攻爆弾
ルシルの特攻地雷
ルシルの悲しき犠牲(笑)
「意味が解らん! 特攻ってナメてるのか! 犠牲って食われろってか! それに悲しきって! しかもかっこ笑いって!」
「っ!? いきなり・・・どうしたの・・・?」
突然の怒声の所為でレヴィヤタンを驚かせてしまった。どれを選択しても死ぬしかないって、私の命はそんなに軽いのか!?
ルシルの特攻弾頭
ルシルの特攻爆弾
ルシルの特攻地雷
ルシルの悲しき犠牲(笑)◀
「は!? 待て、私は何も選択していないぞ!?」
いきなり私の犠牲が選択されたことに驚きと怒りを覚えた。
「ルシル・・・あなたのことは・・・忘れないから!」
「シャ――おまっ・・!」
そんなふざけたセリフが聞こえ、シャルの方へと視線を移すと同時に顔面へ迫る靴底。それをまともに受け仰け反る。それと同時に抱えていたレヴィヤタンを離してしまう。
「ぐは・・・!」
後頭部から地面に転倒。地面を少し転がり、そして見た。レヴィヤタンを抱え、嘘泣きしながらダッシュで逃げるシャルを。
「あああああああああああああ! あのバカ女ぁぁーーーーーーーーーッ!」
私の犠牲を選んだのはアイツか。だからと言ってこのまま無抵抗で食われてしまうわけにもいかず、迫るオルニトレステスの群れを肉弾戦で数を減らし、向こうが距離を取ったところで全力離脱。そこから全力でシャルとレヴィヤタンの後を追う。何としても私を売った超絶非道のシャルに土下座させるために。そう、そのためだけに、私は今を必死に・・・生きるっ。
「お、生きて帰ってこれたんだ。信じてたよ、ルシル!」
ようやく追いつき、私の姿に気付いたシャルが両腕を広げて、それはもう可愛らしい笑顔で抱きつこうとしてくる。白々しい。さっきは私を囮にして逃げたくせに。騙されんぞ、そんな笑顔ではなっ。迫ってくるシャルをヒラリと回避。そのままシャルの足を引っ掛けてコケさせた。
「いだっ! 何するの!?」
「こちらのセリフだボケっ!」
ここまで酷い目に遭うのはなかなかない。まさか恐竜のえさになる寸前だったことなど。
「・・・白色、黒色・・・着いた」
大口論の出鼻を挫くようにレヴィヤタンが私の袖を引っ張った。レヴィヤタンが指さす場所へと視線を移すと・・・
――それは大きなティラノサウルスが現れた――
――初代ポケモ○ ジムリーダー戦BGMスタート
私の知るサイズの2倍はあろうかと言う巨体を誇るティラノが居た。いい加減にしてくれ。最後の最後でティラノ(巨大)って、神はどれほどの試練を与えれば気が済むのか・・・。
行動コマンド
たたかう
たたかう
たたかう
たたかう
たたかうオンリー・・・。なるほど逃げれないってか。
「ああもう。やってやろうじゃない」
「ああ。魔術がなくとも恐竜相手に後れを――」
――Mors certa/死は確実――
私とシャルの背後から巨大ティラノサウルスへと向かうすみれ色の閃光。
「「・・・」」
いや、待ってくれ。何故レヴィヤタンは“力”を使えているんだ。ここに来た時には使えないとかって言っていたはずなんだが・・・。
「確かに・・魔術は使えない・・・。でも・・・力は・・使える」
「「ええ~~」」
レヴィヤタンの放った砲撃の直撃を受けたティラノが吹っ飛んで空の星となった。
「・・・大罪が・・・許されざる嫉妬が・・・ここに命ず・・・」
未だに固まってしまっている私とシャルを置いて事を進めるレヴィヤタン。何故かすごく惨めな気持ちになってきた。別に泣いてないぞ。レヴィヤタンの言葉に応えるかのように現れる紋様。幾何学模様のそれが淡く輝き、そしてレヴィヤタンが止めと言わんばかりに砕いた。
「・・・これで・・・1つ目」
一息ついたレヴィヤタン。そう、これでやっと1つ目だ。ここ最近心が折れそうな事柄が起きてばかりな気がする。
「ねぇ、ルシル」
「なんだ?」
「いろいろごめんね」
「気にするな」
「あと・・・18個」
「「・・・・orz」」
折れた。いま確実に心が折れた。それはもうポッキリと綺麗な音を立てて折れた。
「それじゃ・・・転移出来る場所まで・・・戻らないと・・・」
ドサッと音がしたかと思えばシャルが後ろで倒れていた。
「もう・・・やー・・・」
気持ちは痛いほど解る。
「今日中に・・・終わらせないと・・・」
それから私たちはこの世界の入り口を目指して走り出す。
――カルカロドントサウルス×4が現れた――
「出たぁぁぁ!」
「レヴィヤタン! 攻撃攻撃!!」
「・・・はふぅ」
背負っているレヴィヤタンが気の抜けた声を出しながら砲撃を撃って、カルカロドントサウルスを散らした。
――ゴジラサウルスの群れが現れた――
「いやぁぁぁぁぁ!」
「シャル! モ○ハンの腕前はアリサ以上だったろ! 何とか出来ないのか!?」
「ムリーーーー! っていうかリアルとバーチャルじゃ全然ちがーーーう!」
「追いつかれる・・・・」
「何とかしろーーーー!」
レヴィヤタンが迫るゴジラサウルスの足元に細すぎる砲撃を撃って、散らした。どうしてあんなに小さいのか訊いてみると、「わたしも・・・目をつけられ始めた」とのことだ。
――スゼチュアノサウルスが現れた――
「大き過ぎぃぃぃぃッ!! っていうか肉食のエンカウント率が高過ぎるーーーー!」
「そう言えば草食とは一度も会ってないな」
「やっぱり・・・白天王の方が・・・かっこいい」
「どっちでもいいわ!!」
そんなこんなで何とかこの世界から脱出。もう二度とこの世界に来るものかと思った。
†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††
「も・・・もう・・・いやぁ・・・」
「気をしっかり保て、シャル。もうこれで終わりだ・・・」
そう、ようやく残り1つとなった。ここに来るまでに私とルシルが一体どれほどの精神的な死を体験したか・・・。そう、例えば・・・
―――ある管理外世界
「◇*☆♂÷○」
――耳長裸族(狩人)×6が現れた――
この世界じゃ魔術は簡単なものなら使えるようだ。でも、だからと言ってこの世界の住民を傷つけたら確実にアウトだ。どんなペナルティを負うことになるか判らない。
「ここは任せろ」
そう言ってルシルが私たちの前に躍り出て、「#@?Ζ¥」よく聞き取れない言葉を口にした。耳長裸族さん達(あう~、目のやり場に困るよぉ~)の言語と似ている。さすがだ。ルシルには彼らが何て言っているのか解って、その上で会話も出来るんだ。
「@○§*☆」
「*¥◇ΠΨ」
そこで一度会話が途切れて、沈黙が流れる。どうしたのかな?って思ってルシルの声を掛けようとしたら、耳長裸族の方々が剣や槍や弓矢を構え始めた。
「うえっ!? なんで!?」
「ふむ。やっぱり適当では駄目だったか・・・残念だ」
ルシルがそんなことを言って、レヴィヤタンを抱えて即逃げ出した。っていうか・・・
「あなたの頭の中が残念だっつうのっ!」
尊敬して損も損、大損だ。
「私の尊敬の念を返せ、ルシル!」
全力ダッシュのおかげで何とか逃げ切って、無事に紋様を破壊出来ました。これからは、ルシルを尊敬しないようにしようと思った、まる
することはやめよう。そういえばこんなことも・・・
―――第26管理世界エルドラド
「こんな街中にもベルフェゴールは来て、紋様を描いていったわけ?」
私たちの目の前にあるのは賑やかな街並みと多くの人々。人が溢れていて活気づいている良い場所だ。
「・・・こっち」
レヴィヤタンの言うがままについていく中、ある店で信じられないものを見た。
「これって、ベルフェゴール・・・・だよね・・・?」
間違いなくそこに張ってあるのはベルフェゴールの写真。
「ん? ・・・バエルじゃなく、ベルフェゴールというのが本当の名なのか・・・」
ルシルがそんなことを言いながら、私の横からその写真を見る。無表情なのに、どこか満足そうにピースサインを決めているベルフェゴールの写真だ。その写真の下の空きスペースにはこう書かれている。
――超得盛りチャーハン(30人前)を3分で完食――
「「・・・・」」
えっと、何をやっているのか。紋様まで歩く中、その他にもベルフェゴールに関連するようなものがあった。
――ダンス大会に飛び入り参加で優勝――
――ミス・エルドラド特別賞――
――市民のど自慢大会優勝――
「「・・・・」」
ベルフェゴール、お前は一体何をしようとしていたの。本当に謎ばかり残して逝ってしまったね。出会い方が違えば、たぶんそれなりの知り合いになれたかも・・・。で、その世界の紋様は比較的楽に破壊出来た。
そんなこんなで、ようやくここミッドチルダの紋様だけとなった。レヴィヤタンは全く疲労の色が見えないのに、ルシルはそれはもう酷い顔色だ。たぶん私も似たようなものだ。あんだけ走って叫んで・・・。
「あとは・・・ここだけ・・・」
着いたのは自然が多く残る空間。そう言えば、アルトセイムってフェイトの故郷だったっけ。
「・・・大罪が・・・許されざる嫉妬が・・・ここに命ず・・・」
そう囁いたレヴィヤタンの足元に最後の紋様が浮かび上がる。
「っ・・・神秘が・・・強い・・・」
吹き荒れる神秘の奔流に、レヴィヤタンは吹き飛ばされそうになりながらも必死にスカートの裾を押さえて踏ん張っている。私も全力で捲れ上がろうとしてるスカートを押さえて、ルシルの方を見る。するとルシルは、私には無関心と言わんばかりに横を通り過ぎていく。
「べ、別にいいけど・・・何かムカつく・・・」
そのままレヴィヤタンの近くまで行って、“グングニル”を手にして「これで・・・・終わりだ・・・!」突き刺した。パキンって音がして紋様が散って、吹き荒れる神秘の奔流も治まっていく。
「・・・終わった~」
時間にすれば20時間ちょいだったけど、それ以上の時間を過ごした気がする。
「さて、あとはレヴィヤタンをどうするかだが・・・」
ルシルがレヴィヤタンに視線を向ける。レヴィヤタンはその視線を真っ向から受け止めて、「・・・難しい・・・?」不安げに小首を傾げた。
「いや。お前の話だと、そのぬいぐるみこそが“嫉妬”の本体なんだろう?」
「・・・うん・・・そう」
最初、レヴィヤタンからその話を聞いた時は驚いたけど、今までのレヴィヤタンの行動を見れば納得するしかない。戦闘でも転移でも、必ずレヴィヤタンが手にするクジラのぬいぐるみから強力な神秘を感じ取ることが出来てた。
「つまりは本体であるそのぬいぐるみを破壊し、尚且つお前の人格とその身体を保つようにすればいいわけだ」
「で、どうするわけ?」
紋様の復活を阻止するには“罪”が消えるのが絶対条件。だから嫉妬の“罪”の本体であるぬいぐるみが消えればそれでオーケー。でも本体が消えたら、それに追随するレヴィヤタンも一緒に消えることになる。
「・・・ルーテシアとレヴィヤタンが契約をすればいい。レヴィヤタンが消えないように、この世界に留まれるように、ルーテシアを楔とする」
「そんなことって本当に出来るの? ルシルのように“存命の概念”がないんだよ、レヴィヤタンには・・・」
ルシルはたとえ本契約が終わっても残ることが出来る。ルシルやマリアのように生きたまま“界律の守護神テスタメント”になった2人だけの裏技のようなものだ。当然、すでに死んで肉体が無く、魂も玉座に就いた私には出来ないことだ。だから私は残ることは出来ない。ま、仕方ないけどね。
「確かに。だがそこにもう一手打つ」
「「???」」
疲れ切った顔で微笑を浮かべるルシル。その一手が判らない私とレヴィヤタンは一緒に小首を傾げるだけ。その疑問が晴れることなく、私たちはルーテシアの待つ病院へと向かった。
†††Sideルシリオン⇒レヴィヤタン†††
黒色に任せた以上は信じる。もし上手くいかなかったとしても、ここまでしてくれたことへの感謝があるから恨みはない。でもやっぱりルーテシアと別れるのは辛いかも。
「レヴィ、おかえり」
「ん・・・ただいま・・・ルーテシア」
病室のベッドで横になっているルーテシアにそう返す。この何気ないやり取りがすごく嬉しくて、すごく楽しい。
「ルーテシア、レヴィヤタンをこの世界に残す方法を提示する。それを受けるか否かは君の――」
「何でもする。・・・レヴィが、残ることが出来るなら」
「・・・覚悟あり、か。レヴィヤタン、こっちへ」
黒色の言うとおりにルーテシアのいるベッドまで近付く。
「我が手に携えしは確かなる幻想」
そう告げた黒色の右手に黄金の瓶が、左手には虹色の珠が1つ現れた。さらにベッドの横にある小さな木製の台の上に小さな黄金のコップが現れた。
「さてと、久々にやってみようか・・・」
黒色がその黄金のコップに、黄金の瓶の中身を注いでいく。コップに注がれた液体は、透明な水のようなものだ。
「マン・ウル・フェオ・チュール・イング・シゲル・ベオーク」
病室の床に十字架と剣の紋様が描かれた。そして、虹色の珠から淡い虹色の光が溢れていく。それはとても強い神秘。たぶん“罪”以上の神秘だ。
「2人とも、これを飲むんだ」
わたしとルーテシア、それぞれに黄金のコップを渡す。お互い顔を一度見合して、そして一気に飲み込む。
「「・・・おいしい」」
何かに例えることが出来ないほどの美味しさ。
「よし。レヴィヤタン、ぬいぐるみを今から破壊する。おそらく壊れたと同時にお前も消えていくだろう。だが、その前にこの宝玉を呑み込み、ルーテシアと契約を交わすんだ。手っ取り早い方法としては口づけ、キスだ」
黒色がわたしの持っていたぬいぐるみを手に取る。
「それじゃあ始めるが、心の準備はいいか、レヴィヤタン、ルーテシア」
「「うん」」
同時に頷く。わたしは虹色の珠を手に取って、いつでも呑み込める準備をする。ルーテシアはすぐにでもわたしと契約が出来るようにすぐ横に移動した。
「いくぞ・・・!」
黒色が“グングニル”っていう槍を左手に携えて、「貫け、神槍グングニル・・・!」クジラのぬいぐるみを貫いた。その直後、大きく裂けた“許されざる嫉妬レヴィヤタン”の本体であるクジラのぬいぐるみが光の粒子となって散っていく。それを見てすぐに虹色の珠を呑み込んで・・・
「「んっ」」
ルーテシアと契約を交わす。わたしの中で荒れ狂う神秘の奔流。正直苦しくて、暴れたいくらい辛い、痛い。でも、これはわたしが存在するのに必要な通過点。意識というものが落ちていく感覚。完全に目の前が真っ暗になった。
「・・・おかえり、レヴィ」
そそいて次に目を覚ました時、わたしは、この世界に残ることが出来たと理解した。
「うん・・・ただいま・・・ルーテシア」
ルーテシアと抱き合って、わたしは生を実感。ありがとう、黒色。
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