Element Magic Trinity
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ヒカリ
煙と木々で下が見えない。
六魔将軍のレーサーの自爆からグレイとティアを庇って落ちていったリオンははたして無事なのか?
「リオン・・・」
「そ・・・そんな・・・リオン様が・・・」
目に涙を浮かべ、呆然と崖下に広がる樹海を見つめるグレイとシェリー。
すると、ティアがふらりと足を進めた。
「・・・ない」
「ティア?」
「アイツがこんな簡単に死ぬハズないっ!」
苛立ちと怒り、微量の悲しみを混ぜたような声でティアは叫ぶ。
「確かにな。あいつが死ぬハズがねぇっ!探すぞ!来い!」
「絶対見つけてやる・・・で、絶対蹴り飛ばす!」
「オイオイ・・・」
その青い目にはっきりとした闘志を宿したままグレイが造った氷の階段を下りていくティアにグレイは呆れる。
しかし、シェリーは涙を流したまま、動かなかった。
(なぜ・・・リオン様が・・・なぜ・・・)
その脳裏に、屋敷を出る前の、薄い笑みを浮かべていたリオンが浮かぶ。
(誰のせい?)
「そこにいるのは解っている。出て来い!」
「面白い登場、期待してるぞー」
ジュラとアルカはとある一方を見て口を開いた。
「!」
「おっ」
すると、一瞬にして足元の地面がぐにゃんと柔かくなる。
そしてそのまま土はUの字を描くように曲がり始めた。
「さすがは聖十の魔導士と地火の威武」
声が響く。
その声の主はホットアイ、六魔将軍の1人だ。
「せい!」
「オラァ!」
ジュラは地面の土を棒状に硬くしホットアイに向けて放つ。
アルカは土で構成した蛇を一斉に飛ばした。
が、それらは全てホットアイに当たる前に液体のようにべちゃっと崩れ落ちる。
「私は土を柔らかくする魔法。そしてアナタは土を硬くする魔法。アナタは元素魔法の大地。さて?強いのはどれデスカ?」
目の前にいるのは敵。
それを認識した2人は戦闘態勢を取る。
「無論、魔法の優劣にあらず。強い理念を持つ者が勝つ」
「んな難しい事考えなくても、どっちが強ェかなんて拳で解んだろ?」
ビキリ、と血管が浮く。
基本何でも拳で解決主義のアルカは苛立たしげに拳を握りしめた。
対するホットアイは、にっこり笑う。
「違いますネ。勝つのはいつの時代も、金持ちデスネ」
「!」
ココロが小さく反応を示した。
毒に苦しむエルザの看病をするルーシィとナツ達の帰りを待つヒビキ、そしてその目の良さを生かして残るココロの3人の下に、ついに彼等が戻ってくる。
「着いたー!」
「ナツ!」
「アラン君!」
茂みの中からウェンディとハッピーとシャルルを抱えたナツがやってきた。
その後ろからアランとルー、ヴィーテルシアも顔を出す。
「どうなってんだ!?急に頭の中にここまでの地図が・・・」
「それより早くウェンディちゃんを」
「そうだ!」
ヒビキの古文書によってここまでの情報を与えられたナツは頭に急に地図が現れた理由を聞こうとするが、その前にエルザが先だ。
ナツはウェンディを下ろし、さっそく起こしにかかる。
「起きろウェンディ!頼む、エルザを助けてくれーっ!」
「ちょ、ナツさん!あんまりウェンディを揺らさないでくださいよっ!」
「とりあえず落ち着け!」
ゆっさゆっさとウェンディの肩を掴んで思いっきり揺らして起こそうとするナツに慌ててアランとヴィーテルシアが声を掛ける。
すると、ゆっくりとウェンディの目が見開かれていき―――――
「ひっ!」
「!」
ナツを見ると同時に後ろに後ずさった。
「ごめんなさい・・・私・・・」
「落ち着いてウェンディ」
頭を抱えて震えながら謝罪の言葉を口にするウェンディをルーが落ち着かせようと背中をなでる。
その姿にルーシィは少し目を見開いた。
「今はそんな事どうでもいい!エルザが毒ヘビにやられたんだ!助けてくれ!頼む!」
そう言うと同時にがばっとウェンディに向かって土下座するナツ。
「毒?」
「えっと・・・どういう事?」
ウェンディ同様、状況を知らないルーは首を傾げる。
説明する為にヴィーテルシアが口を開いた。
「お前達が攫われて直ぐ、エルザが毒に苦しんでいる事が発覚した。やったのは六魔将軍のコブラの連れる毒ヘビだ」
「六魔将軍と戦うにはエルザさんの力が必要なんだ」
「お願い・・・エルザを助けて!」
続くようにヒビキとルーシィも口を開く。
「も・・・もちろんです!はいっ!やります!がんばりマス!」
状況を理解したウェンディは意気込むように拳を握りしめた。
嬉しそうな笑顔を浮かべたナツが顔を上げる。
「よかったぁ~」
「いつまで伸びてるのよ、だらしない!」
気を失っていたハッピーとシャルルも目が覚めたようだ。
「ウェンディ、魔力大丈夫?僕がやろっか?」
「いえ、ルーさんは戦えるから魔力を温存しておいてください」
心配そうに問うルーにそう答え、ウェンディは早速エルザの解毒を始める。
ぱぁぁぁ・・・と淡い緑に近い色合いの光がウェンディの掌から溢れる。
(ジェラールがエルザさんにひどい事したなんて・・・そんな事・・・)
ジェラールは歩いていた。
樹海の奥地へと足を進めていく。
(それにしてもコイツ・・・心の声が聴こえねぇ。心の声さえ聴こえれば後を付ける必要もねぇのに)
そのジェラールの後を付けるのは、六魔将軍のコブラだ。
(止まった)
ピタ、とジェラールが足を止める。
コブラは近くの岩陰に隠れ、顔だけを覗かせた。
その視線の先には・・・幾つもの鎖で繋がれた、他よりも遥かに大きい木があった。
(何だここは・・・!?樹海にこんな場所が。まさかブレインの言った通り・・・ここにニルヴァーナが・・・)
ジェラールが大木に手をかざす。
すると、鎖が千切れ、木が爆発するかのようにはじけ飛んだ。
(おおっ!)
そして、光が溢れだす。
(ついに見つけた!オレ達の未来・・・)
「終わりました」
一方、樹海ではウェンディによるエルザ解毒が終えられていた。
「エルザさんの体から毒は消えました」
『で!?』
妖精メンバー5人は聞き返すようにエルザを見つめる。
すると――――――
「ん」
「おっしゃー!」
エルザの表情に先ほどまでの苦しそうな色はない。
小さく意識の声も聞こえたし、目が覚めるのは時間の問題だろう。
という訳で。
「ルーシィ、ルー、ハイタッチだーっ!」
「よかった~♪」
「やったぁ~っ!」
ぱんっとハイタッチを交わす3人。
「シャルル~!」
「1回だけよ!」
喜び一色のハッピーに対しても変わらず冷たいままハイタッチには応じるシャルル。
「これで安心ですね!」
「ほら、お前達も」
「はいっ!」
安心したように笑みを浮かべるアランとココロとハイタッチをするヴィーテルシア(ちなみに人間バージョン)。
「ウェンディ」
「!」
スッと差し出されたナツの手に、ウェンディは手を合わせる。
ぱん、と音が響き、ナツは満面の笑みを浮かべた。
「ありがとな」
「・・・しばらくは目を覚まさないかもですけど、もう大丈夫ですよ」
その笑顔に一瞬ウェンディは止まり、すぐに目を伏せて小さく俯く。
「凄いね・・・本当に顔色がよくなってる。これが天空魔法」
「近すぎ!」
「起きた時エルザに殴られるぞ」
キスでもするのかと思うくらいの至近距離で顔色を確かめるヒビキにルーシィとヴィーテルシアがツッコみを入れる。
「いいこと?」
その空気を切り裂くように、シャルルが口を開いた。
「これ以上天空魔法をウェンディに使わせないでちょうだい。見ての通り、この魔法はウェンディの魔力をたくさん使う」
「私の事はいいの」
やはり疲れがあるのかウェンディは溜息を吐きながら目線を下げる。
「それより、私・・・」
「後はエルザさんが目覚めたら反撃の時だね」
悔いるような表情でウェンディが何か言いかけるが、ヒビキが遮るように口を開いた。
「うん!打倒六魔将軍!」
「僕も頑張っちゃうよー!」
「おーっ!ニルヴァーナは渡さないぞぉ!」
その場にいたそれぞれが意気込んだ、瞬間。
―――――――樹海が光に包まれる。
「ほへ?」
「何!?」
光が伸びる方へと目を向ける。
その光は天を支えるかのように伸び、それに絡まる様に黒い何かが伸びていた。
「黒い光の柱・・・」
「これは・・・!?」
「まさか・・・」
「あれは・・・」
その目に映る黒い光の柱。
それこそが、六魔将軍の探す魔法。
―――――――ニルヴァーナ!
(手に入れた!オレ達のものだ!)
それを間近で見ていたコブラは笑みを浮かべた。
それを見ていたのはコブラだけではない。
リオンを探すグレイとティア。
そしてその後ろに立ち、睨みつけるように2人を見るシェリー。
交戦中のジュラとアルカ、ホットアイ。
ウェンディとルーが助かったと知らずに探すレンとイヴ。
ニルヴァーナを探していたエンジェル。
現在捕獲され中の一夜。
「父上・・・」
「ま、間違いない・・・」
そして、拠点にいるブレインとミッドナイト。
「おめでとうございます。ボクはギルドの魔導士どもを殲滅してきましょう。真夜中までに。父上はあの光へ」
「ウム・・・」
「ニルヴァーナなのか・・・!?」
「まさか、六魔将軍に先を越された!?」
天へ伸びる黒い光の柱に驚愕し目を見開くヒビキとルーシィ。
驚愕しているのはアランやココロ、ルーやヴィーテルシアも同じだ。
「あの光・・・」
そんな中、ナツの表情は驚愕には染まらない。
「ジェラールがいる!」
――――――その顔は、怒りに染まっていた。
「ジェラール!?」
かつて敵対しナツとティアが倒したはずの男の名前。
それが突然出てきたルーシィは更に戸惑う。
「ナツ!ジェラールってどういう事!?」
ルーシィが叫ぶが、もう遅い。
ナツは既に光の柱へと走り出していた。
「私の・・・私のせいだ・・・」
もし、ジェラールがニルヴァーナを復活させたのだとしたら、そのジェラールを復活させたのは・・・。
ウェンディは自責の念に駆られる。
「ジェラールさん・・・?」
「どういう事?どうして・・・ジェラールの名前が・・・」
光を見つめ呟くアランと、事情を知らないココロ。
「会わせる訳にはいかねえんだ、エルザには!」
その目に怒りを燃やし表情を怒りに染めるナツは走る。
光の根源・・・否、ジェラールのいる場所へと。
「アイツはオレが・・・潰す!」
だから、気がつかなかった。
――――――――エルザの目が、僅かに開いていた事に。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
うん・・・ティアに恋愛はないかなぁ。
なんかあの人、誰かと生きていくっていうのが見事なまでに当てはまらない・・・皆『他人』で済ませちゃう気がする。
と、今日ふと思ったりしました。
感想・批評、お待ちしてます。
ページ上へ戻る