| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

万華鏡

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十五話 演奏その五

「皆今日は来てくれて有り難う」
「おいおい、制服かよ」
「阪神の帽子に半被か」
「また洒落た格好で出て来たな」
「いいじゃねえか」
「今年優勝したしな」
「それでだよな」
 観客達は五人のその格好を見て言う。
「そういう格好もいいな」
「野球は阪神だからな」
「巨人なんか応援出来るかよ」
「甲子園だよ、野球は」
「そうだよね、だからね」 
 それでだとだ、琴乃は彼等に笑顔で応えてだった。
 そのうえでだ、その観客達にこう言った。
「じゃあ今から野球の歌を歌うからね」
「六甲おろしか?」
「それか?」
「うん、それよ」 
 まさにそれを歌うとだ、琴乃も笑顔で応えてだった。
 早速歌いはじめる、すると。
 五人の歌と演奏に乗ってだ、観客達も歌いだしたのだった。
 六甲おろしを全員で歌う、関西だけはあった。そして歌い終わるとだった。
「アンコールアンコール!」
「もう一回!」
「六甲おろしもう一回!」
「頼むよ!」
「おいおい、これどういうことだよ」
 美優は観客達のアンケートについてだ、こう言ったのだった。
「アンコールかよ」
「ええと、これはね」
 どうかとだ、景子も美優に言う。
「どうしようかしら」
「次はカープの曲歌うつもりだったけれどな」
「それでもアンコール受けたから」
「歌わない訳にいかないよな」
「ちょっとね」
 困った顔でだ、景子は美優に言う。
「この状況は」
「じゃあもう一回歌うか」
「そうよね」
「皆、それじゃあさ」
 美優は予定を変えることにした、そうしてだった。
 メンバーにだ、こう言った。
「じゃあまたさ」
「ええ、六甲おろしね」
「それね」
「もう一曲歌ってさ」
 そうしてだというのだ。
「次の曲にいこうな」
「そうね、それじゃあね」
「ここはね」
 他のメンバーも頷いてだ、そうして。
 五人はまた六甲おろしを歌い演奏した、それからだった。
 他のチームの曲も歌う、だが他のチームはというと。
 阪神程ではなかった、幾分熱狂が落ちてしまった。声はあがったが阪神のそれを超えるものではなかった。
 それでだ、琴乃は演奏の後で四人にこう言った。
「やっぱり関西よね」
「そうね」
 里香が琴乃のその言葉に応える。
「阪神が一番ね」
「六甲おろしは凄い人気だったけれど」
 アンコールまで出た、それだけはあった。
 しかしだ、それでもだったのだ。
「広島とか中日は」
「西武やソフトバンクとかパリーグのチームもね」
「今一つな感じだったわね」
「ちょっとね」
 そうだったとだ、こう話すのだった。
 そして琴乃は微妙な顔で里香に話した。
「ねえ、阪神だけとかどう?」
「他のチームの曲は歌わないの」
「選手の人達の応援歌にする?」
 琴乃はその微妙な顔で里香に話すのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧