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SAO二次創作者と、二次主人公ズの、やりたい放題桃太郎

作者:鳩麦
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第五章 強襲作戦 後編

【りょう】

階段でまさきと別れたりょうは、頭上で石化やら毒ガスやらといった異常自体が起きているとはつゆ知らず、ズンズンと下層へと下りていく。やがて階段が終わり、殆ど船底に近い区画にりょうはたどり着くと、廊下を進み、突き当たりについさっき急いで開けたかのように半開きになった扉を見つけた。

りょう「お?当たり?」
のんびりと、りょうは扉を入っていく。と……

?「……ん、客か」
部屋の奥から大きな太刀を背負った男が歩いてきた。
身にまとうのはボロボロの外套とその下に鈍い光を放つ鎧。
長い間手入れしていないのか、結びの紐などはあちこちがほつれていた。

「悪いな。あんたには何の恨みも無いが、こっちはお仕事なんだ。ちょっと斬り合って貰うぜ」
そう言うと男は背の大太刀を抜き、肩に背負った。

「……はぁ?」
いきなり物騒な事を言う奴だなと、りょうは自分を棚に上げて眉をひそめた。
と言うかなにやらこの男、先程までの連中とはどうにも毛色が違うように見える。荒くれ者、と言うよりはその出で立ちは武士のようにも見える。服装はボロボロの癖に刀だけは手入れが行き届いている立派な物であるのもその証拠だ。ならばこの男が今回の黒幕かとも思ったが、金のある武家のボンボンにしては明らかに裕福そうには見えないし、何より気配や目つきが鋭すぎる。その佇まいは明らかに戦場を知っている……言わば軍人のそれだ。

りょう「何だアンタ。ほんとに海賊か?」
違和感を覚えたまま、りょうもまた冷裂を肩に担ぎながら言った

男「あー……。まぁ海賊ちゃあ、海賊だよな。今は」
男は何かを思案するように目を泳がせながら頬をガリガリ掻くと、やや迷いながら言った。

男「ちょっと昔は城勤めとかしたけど、殿様が戦でバッサリとやられてな。……ぶっちゃければただの敗残兵よ。今はここに拾われて用心棒やってるけどな。お前さんが何しに来たかは知らんが、俺は引けねぇんだ」
男は目を細めると挑発するように刀を揺らし始めた。

りょう「おいおい、肩入れするにしたって相手間違えてんじゃねぇ?女に拷問じみた事する奴に、金でったって雇われてちゃ、お侍さんの名折れだろ」
担いだ冷裂の柄で肩をトントンと叩きつつ、りょうは言う。

りょう「別段あんた自身にゃ俺だって恨みねーんだ。居なくなるなら見逃すし、怪我させてーわけじゃねーから出来れば道開けて欲しいんだが」
男「は……?ちょっと待て……女に拷問?何言ってんだあんた。略奪行為の報復かと思ったら言うに事欠いて女に拷問だぁ?知らねぇし、知ろうとも思わねぇ。それにな……」
チャキ、と大太刀の先をりょうに突きつけ、切り払う。

れい「『戦いこそが我が誇り』……それに付随する有象無象は関係ねぇ。侍の名なんざ君主を死なせた時点でとうに折れてる。刀持って立ちはだかるのなら、俺はそいつと斬り合うのみ」
おしゃべりは終わりだと言うように男は殺気を放ち始めた。

りょう「……知ろうとも思わんか……」
のんびりした口調でりょうは言った。

りょう「誇りねぇ……まあ俺にはそう言うのねぇからこんな事言うのはあれだけどよ……」
頭を掻きつつりょうは言った。

りょう「その誇りとやらは人様に迷惑掛けてるやつをかばってるお前さんとの行いを、誰に、何のために誇ってんだ?」
何のいらえもなく、彼は青年が吐き出した殺気を受け止める。
青年は相変わらずの静かな表情と殺気を消さぬままに、呟くように返した。

れい「どうやら見解の相違があるようだ。俺は俺であり続ける為に、金の為ならこの手を血に染めよう。汚い金でも、何でもいい。……雇い主達が何かをやっているのは知っているが、俺は知らん……っと、話は終わりだったな。……参る」
男は床が抉れる程足を踏みしめ、一息で斬りかかって来た。
刀の軌道は左からの水平斬り。

りょう「ああそう……かい!」
鋭い切り込みをりょうは弾きながら足払いへと持って行く。
右手で持って右肩に当ててた冷裂の柄を左側に回転させるようにして刀弾いてからそのまま柄を脇の下通して穂先レイに向けつつそのまま下方向向けて足払い。

男はピクっと眉を動かすと、左腕を太刀の柄から放すと冷裂の腹を上から殴りつけ軌道を逸らそうとするが、人間離れした怪力で振られた大質量を動かす事はままならず腕は弾かれた。
しかしそれが幸いし、体丸ごと運動ベクトルを変えられた男は横に飛んで言った。

れい「…………がっ!?」
広い船底を勢いよく転がって行くが、大太刀を床に差して停止すると血の塊を吐いて立ち上がった。

れい「チッ……人間だと思ったら物の怪か。どんな腕力してやがる」
そんな言葉に、りょうは傷ついたような顔をしてから、苦笑して言った。

りょう「物の怪ってお前……ひでぇな。ちゃんと人間だっつーの。人より力あんのは認めるけどな。てか、それならあんただって今の反応とか十分人間離れしてるってのって……ん?」
と、りょうはなんとなく違和感を覚えたように考え込むような声を出した。なんとなしに、先程冷裂を殴りつけた男の左腕に目がいく。

りょう「なんだあんた。それ義手か?」
れい「ありゃ、ばれたか」

苦笑すると男は左腕を覆っているボロ布を捲り上げる。

れい「……反応に関してはアレだ。常日頃から銃弾とか避けてると出来るようになる、多分。練習時の命の保証はしないが」
りょう「ぜってー練習しねえ」
再び苦笑して、りょうは返す。
男は再びりょうと奥の部屋を隔てるように移動すると、今度は刀を上段に構えた。

れい「まあ銃弾云々はともかく、今のは正直危なかった。今度はちゃんと『観』ておくようにするぜ。これ以上四肢とか首とか切られたら大変だ」
りょう「ん……何だよ。何かやる気っぽいな~オイ。止めろよ?一撃必殺とか……」
れい「有ったら良いな、そんな技。安心しろ、有ったら最初から使っている」
上段に構えた刀をゆっくりと下段に、左の腰の後ろに刀を回すと今度は右へと振り切った。

れい「今のが俺の間合い。本当ならここに入ったものは悉く叩き伏せるんだが……あんたの力には勝てない。だから、ここに入ったら避ける事にする」
男の顔は段々と楽しそうに綻んでいった。

りょう「なんで楽しそうなんだよ」
苦笑しながらりょうは言った。

りょう「しかし……間合いね。間合いか……」
りょうはなんとなしに冷裂を縦横に振ると、考え込むように顔を伏せてから言った。

りょう「まあ突破しなきゃなのはこっちだしなぁ……」
言いながらりょうは滑らか動きで冷裂を構え……一気に突き出した。

不意打ち気味だったその動きだが、男は慌てた様子は無い。それを斜めに受け、冷裂に押し出されるように横へ移動し……。

れい「ほら、俺の間合いだぞ?」
手首を器用に動かして鋒をりょうに向けると捻りながら心臓に向かって突き出す。

りょう「ひゅう♪」
りょうは奇妙な声を上げると、振り下ろした冷裂を縦にしつつそれに身体を引きつけるようにして一回転して回避。
ほぼ男の真横で一回転するような体制から回転を利用して……

りょう「粉ッ!」
男のわき腹目掛けて腰だめに掌底を放つ

れい「力任せもここまで来ると……!」
それもしっかり観られていたらしく、軸足に重心を移動し体重の離れた足を上げ、引き戻した肘と膝で腕を挟み込まれた。

────

ULLR「れい、衝撃が僅かに抜け、腹部に小ダメージ。りょう、腕に継続ダメージだねw」

鳩麦「成程関節で受けたか。まあ防御してくれたならいいやw」

────

りょう「まあそうくるよ……」
挟み込まれた腕に鈍い痛みが走るが、別に構わない。掌底からコンマ数秒遅れて、男の対応と同時に振り上げた足で男の腰を……

りょう「……なっ!」
薙ぎはらう。

────

鳩麦「どうよ!(ドヤッ)」
ULLR「げっw」

────
れい「くっ……!?」
男は内心、敵の腕力を警戒していた故に虚の攻撃である掌底を手数をかけて防いでしまった。
咄嗟に後ろに跳ぶが、ダメージは避けられない。

れい「つぅ……」
今更気がつくが掌底の衝撃も僅かに抜けていた。今のと合わせてもボディダメージはさほどでは無いとは言え、この青年相手に打算はリスキー過ぎる。

れい「……やれやれ」
趣味に走り過ぎていた自分に呆れ、気持ちを切り替える。

れい「悪かった。これは決闘、だったな」
言うと、男は上段に構え、滑るように間合いを詰めてくる。
今までと何ら変わらない。だが、

れい「……ッ!!」
何ら変わらない筈のソレは今までとは比にならない、明確な『斬る』という意志が込められていた。

りょう「……!」
りょうはヤバい。と、咄嗟に感じ取る。理論的に説明できるような、具体的などうこうでは無い。先程までとは明らかに、……気迫が違う……!

────

鳩麦「え、ちょ、すっげー怖いんだけどw」

────

「奥義―――」

────

ULLR「構えてw」
鳩麦「いきなりですか!?」

────

りょう「――――!?」
奥義と言う言葉によってでは無い。
本当に珍しく、完全に直感だけで、りょうは構えた。

―――《心刃合錬斬》

一般に、武器術の究極とは武器を手足の延長として操ること。これはそのさらに先。
刀と身を一体にし、自ら刃となって敵を刻む。
一般ではないという意味で真に《奥義》だ。

れい「ハァッ!!」
りょう『上、等!』
反応し、流れるように。冷裂を振り上げる。
起こすのは、最も身体に染み付いた動き。自分が一番慣れ親しんだ一発を……

りょう「割れ、ろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
その名を《剛断》。
りょうは力任せに冷裂を振り下ろし、それが突進してきた男の刀と……激突した。

────

気がつけば俺は天井を見上げていた。頭の先からつま先まで一ミリも動かす事が出来なかった。

れい(……負けたか)

真っ先に頭に飛来したのは「次は何処で職を探すか」だった。負ければ契約は破棄が約束だからだ。
船が島に着いてから『れい』は強力な気配を4つ感じていた。その内1つが自分の対峙したあの青年。
思えばその瞬間かられいは『呑まれて』いたのかも知れない。
弱々しく現実世界に引っ掛かる意識の中、横に青年が立つのを感じた。

れい「―――あんた、名は?」
りょう「桃太郎……ってのは冗談で……涼人。みんなりょうって呼ぶがな」
横に立ったりょうは、にやりと笑って言うと、浴衣に手を突っ込んだまま言う。

りょう「あんたは?」
れい「俺は、れい。りょう……あ、いや。歳上か……りょうさん、あんたがさっき言ってた話……俺の雇い主が酷いことしてるってのは、にわかに信じがたいんだが……。俺も知らないことがある以上、盲信はしない事にした」
意識が、遠のく。喉を動かし、声を発するだけでも相当な負担だ。

れい「奥に、この海賊団のパトロンが居る。話した事はあまり有ないが……嫌な感じはする。……気を付けて」
りょう「おい、落ちんな。あんたはどうすんだ。おい」
少し焦ったように声をかけたりょうに、れいは内心苦笑した。

れい「しばらく休めば、動ける……と、思う。ま……死にはしない」
りょう「さよか……はぁ。ったく潔い事……ま、じゃあ……なるたけ戻って来るまで気絶しててくれよ」
肩をコキン、コキンとひねりつつ頭を掻くと、りょうはのんびりとした様子で奥へと歩き出す。
正直腕が痛かったが、文句を言おうにも言う相手が気絶まっしぐらなため、諦めた。

────

鳩麦「あぶねー」
ULLR「どこがw」
レオニス「レイ君も強いと思いますがw」
鳩麦「いやいやいやwアレ弱体化してるでしょw」
ULLR「えっと……まぁ、本編よりはw」
霊獣「あれでかw」
蓮夜「本来ならどうなるのだろう……」
鳩麦「互いに奥の手使って船が壊れると思うw」
なべさん「寧ろりょうが船壊さなかったのが意外……」
鳩麦「貴方が言うか広域殲滅型主人公w」
蕾姫「www」

涙カノ「次は蕾姫先生?」
鳩麦「そですね」
蕾姫「お手柔らかにw」
鳩麦「冗談wりん相手に加減とかwまぁ、丁度よく引き当てたの敵キャラの中で一番強いのだしな」
蕾姫「マジかwこれは辛いかもしれんw」
鳩麦「言いつつ余裕そうですけどねェ!」

開始

────

【りん】

りんは、先にりょうやまさきと別れ、崖上を利用した看板上部への渡し板から、船の上へと降り立った。
どうやら海賊には海賊なりの衛生意識があるようだ。完全に木製の甲板の上は綺麗に掃除されていて、床はピカピカだった。

りん「一応見て回るか……。しの、俺の後ろから離れるなよ?念のため弓を渡しておくが、無理はするな」
しの「うん、わかった」
凛の一言に、しのがこくりと頷いて返す。二人が会話をしつつ数歩歩いて甲板中央部に来た頃……

??「Hey guy」
不意に、頭上。マストの上から声が響きました。
と、同時に、ヒュッ。と風切り音がします。

────

蕾姫「本命さんが来たのかw!?」
鳩麦「フフーフ♪まぁ多分読まれてたと思うがw」

────

りん「伏せろ!」
突然の風切り音に、俺はとっさにしのを抱き抱えて前方に片手倒立前転。しのを途中で柔らかく甲板の床に落とすと腰から剣を抜き、声が下方を鋭く睨みつける

直後に、ストンッ!と言う意外にも軽い着地音がして、睨みつけた場所に人影が降り立った。
流れるように立ち上がった男は長身で、本当に海賊なのかと疑わしくなるような黒く裾の長い……所謂ポンチョと呼ばれる服をフード部分を目深に被って着ており、顔が良く見えない。

??「Oh Sorry 脅かしちまったな。予定じゃ脅かす前に終わるつもりだったが……」
言いながら、男は刀身が八割方甲板に埋まった中華包丁のような武器を持ち上げる。間違いなく、降りて来ると同時に振り下ろしたのだろう。

??「Ah……アンタは……」
言いながら、男は目を細めて詩乃を見る。

しの「なっ、なに?」
いきなり現れた男、しかも自身を拷問していた盗賊の一味に不躾な視線を向けられ、その視線から逃げるようにりんの影に隠れる

少しその様子を観察した後、男は納得したように言った。

??「Hmmm……成程。さしずめ、アンタらは……お役人が遣わしたdog(兵隊)か何かか?」
薄笑いしつつ、男は言う。それは見ようによっては詩乃の様子を楽しんで居るようにも見えた。

りん「そんな狗に成り下がった覚えはないな。俺は人から畜生に堕ちたやつらを狩りに来たハンターってとこか」
妙なイントネーションを交えて話す男の様子を油断なく見る。飄々としている様に見えるが、全身に無駄なく力が入っていて隙がない

??「HaHa.all right all right 理解した。実際言い返せる義理でもねェな。But 流石に俺達もそうそう掃除されてたんじゃァ、生きても行けねえ。なんで……」
言いながら、男は指の中でクルクルと大型の刃物である中華包丁をまるで重さが無いかのように回す。

??「Come on Fackin dog.無駄なオハナシは省いて、さっさと狩りを初めてくれよ」
フードの中で薄く笑いながら、男は言った。

────

鳩麦「ではお待ちかね。鳩麦のとこのPohさんでーすw
霊獣「わーわー」
レオニス「パチパチ~」
蕾姫「ホントに本命じゃねぇかw」
ULLR「あかんw強い方のPoHさんやw」

────

りん「しの、下がってな。……なら望み通り掃除してやるよ。それが最後の言葉でいいんだな?」
??「さてな。Ah……だが……くれるってんなら……」
ヒュッ、と、音がして、男は目の前に表れた。と同時に……

PoH「先手でも貰おうか?」
右上から包丁染みたダガーを振り下ろす。
が、りんは慌てることなく剣を構えると……

りん「慌てるなよ。器が知れるぞ?」
左の剣で右下に逸らし──

りん「まあ、お話よりも肉体言語(オハナシ)がいいって言うなら付き合おう。対価はお前の首ってことでいいな?」
──右の剣で首を狙って居合いを放つ。

PoH「Wow!」
言いながら上半身を逸らして避けつつ……そのまま振り下ろした右手の包丁の刃を返して切り上げる。

りん「チッ……」
左の剣を盾にしつつしゃがみ込んで、左手が地面に着いた途端にそこを基点にローキック。

PoH「Fu!」
払われて体制が崩れた瞬間に振り上げた右手の包丁を地面に突き刺して起点に変更。そのまま下半身跳ね上げて靴に仕込んだ刃で首ねらいのサマーソルト。

りん「なっ……ッ!」
追撃のために構えていた双剣をとっさにクロスさせると靴の仕込み刀を受け止める。斜め下からの打撃に身体が浮かび上がってマストに背中からぶつかる。

しの「りん!!」
りん「来るな!」
心配してしのがりんの元に駆け寄ろうとするが、俺はそれを制すと口元に垂れた血を強引に拭う。
身体を反転させて着地しながら、男は相変わらずフードの奥でうっすらと笑った。

PoH「Ah-haha.成る程。アンタはそのKitty(お嬢さん)にとっちゃ、Heroってわけだな?」
しの「そうだよ! 私を助けてくれた、私のヒーロー。だから……絶対に負けたりしない!」
しのの言葉に、男はまるで面白がるように笑った。

PoH「Wowwowwow.コイツはマズいな。Heroってのは、確かどういう事情かHeroineの言葉で不思議とスーパーパワーを得るんだろ?」
相変わらずクルクルと中華包丁を回しながら、面白がるように、男は言う。

りん「……どうでもいいが……まぁ、休憩時間は終わりだ。前哨戦はもう充分だろ?そろそろ本番と行こう」
強く踏み込んで一気にギアをトップスピードに持っていくと、腰から二本の鋼糸を付けた手裏剣を投擲する

PoH「Haha.」
男は手裏剣をかわすと、そのままその場で流れるように包丁を二回転。一瞬の内に二本の鋼糸を切断する。

────

鳩麦「友斬包丁の切れ味は世界一ィィ!」
蕾姫「うるせぇw」

────

PoH「その気になってくれたのか?良い感じだ……well(さて)……」
りん「よく鋼糸に気づけたものだな。まあ、構わない。始めようか」
8つくらい同じ手裏剣を出して投擲

PoH「wow……こりゃ無理だ」
切断出来る二本だけよけて切断しつつ残りは見逃す。

りん「ふっ!」
全力で鋼糸を引いてかわされた6つの手裏剣を後ろから襲わせつつ前方から斬り下ろしを放った

PoH「It`s……」
ジャンプして空中に逃げる。と同時に地面に玉のような物を落としてく。

りん「はっ!」
手裏剣を剣で弾き返し、軌道を変え、ジャンプした敵へ追撃すると同時に、置き土産のように置かれた球を警戒して下がる

PoH「show time!!」
その瞬間、落とされた玉から爆光が走り、網膜を焼いた。と、数秒遅れて、男を狙っていた全ての手裏剣に繋がる鋼糸が切断される。

────

蕾姫「やっぱり光球か……」
鳩麦「ま、ばれてたかw」

────

りん「くっ……目潰し」
周りに鋼糸をばらまきつつさらに下がる

PoH「Hey hero.Are you OK?」
ギシッという音の後で聞こえた声は右側のすこし離れた位置から。
直後に何かがコツンとりんの足に当たります。

PoH「BAN……BAN……!」

────

蕾姫「パイナポー!?」
鳩麦「(ニヤリ)」

────

りん「させるか!」
全力で蹴っ飛ばす。そして鋼糸で破片手榴弾だった場合の破片を受け止めるクッションを作る

PoH「BAN!」
キィィィンッッ!!
凄まじい高音が、辺りに撒き散らされ、耳なりが残ります。

────

蕾姫「カノンの方かよ」
鳩麦「音響玉とでも名付けるか。擬音はブラフっと」

────

りん「っ……耳が……」
咄嗟に、ピンを抜いた手榴弾をリンは前方になげつけた。
爆発の風が少し頬を撫でるが、手ごたえは無い。と、次の瞬間、リンの後ろに居る筈の詩乃の隣辺りの鋼糸に、振動が有った。

りん「やらせない!しの、俺の後ろへ!」
反応の辺りへ斬り込む。更にりんの後ろに鋼糸の感が出る。と同時に、振った剣の先に手応えが起きた。

りん「キツイっ……な!」
後ろに向けて蹴りを放つ。が、直後に蹴った足と左腕に激痛が走り……視界と聴覚が戻った。

────

結論として、状況は悪化していた。リンの左腕手首にピックが突き刺さり、左足太ももには深い切り傷がある。そして同時に内心りんを傷つけたのは、目の前に居た左腕を怪我した詩乃と、血の付いた自分の剣だった。詩乃の横には適当な大きさの石ころがあり、
男は、一切の無傷だ。

りん「しの!?」
その光景を見て、りんは即座に状況を把握した。

つまりはこういう事だ。
奴はりんと、同時に「しの」の視覚と聴覚を潰す事で、二人から周囲の情報を把握する能力を大きく奪った。
しかし策敵の能力だけなら、りんには鋼糸を使った「振動」と言う方法がまだ残って居たのだ。それを利用された。
しのの隣に石ころを投げつければ、彼女は当然それに違和感を覚えて若干ながらその場から離れようとするだろう。その時、りんの鋼糸に掛かったのだ。結果……こうなった

しの「っう……。大丈夫だよ。これは……私が勝手出てきたから……」
りん「っ……贖罪は後でする。……すまなかった」
ピックを引き抜く

PoH「どうした?Hero まだまだshowはこれからだろ?」
と、後方から例の男の声がした。静かなたたずまいで立ち上がったりんは、ゆっくりと振り向き、男を睨む。

りん「……船を傷つけるのは控えようと考えていたが、やめだ。全力でお前を殺す。残念ながらここからはshowにもならないただの殺戮だ……。だからさっさと……死んでくれ」
瞬間、りんは男の目の前へと一瞬で移動する。所謂、瞬歩と呼ばれる技術だ。そうしてそのまま全力で床を踏み抜き……爆心地を中心に半径5mほどを崩落させた。

────

鳩麦「げっw!?」

────

PoH「!?」
暴落箇所から離れる……前に一気に崩落が始まり、男は逃げる事叶わず、崩落に巻き込まれる。

りん「ふっ……」
短い吐息とともに爆砕エネルギーを少し流用したかかと落としを男の元へとりんは叩き込んだ。

────

蕾姫「剣士から拳士に変わってる気がするw」

────

が、男に慌てた様子は無い。

PoH「oops……室内か……so bad……」
そんな事を言いながら、空中で、体制を立て直し、かかと落としを決めに来るりんの脚を包丁で受け止めたかと思うと……

PoH「っハ!」
その蹴りを弾き返す。
が、りんの攻撃はまだ始まったばかりでしかない。

りん「これならどうだ?」
そう言ったかと思うと、お次とばかりに弾き返された反動で上に戻りながら、男に手榴弾を投げつけた。

PoH「こうだな」
その手榴弾を、男は包丁使ってテニスよろしく船内の向こうにぶち込む。
船の奥の方で、爆発音がした。

────

蕾姫「パイナポー……」
鳩麦「愛着でもあんのかw」

────

りん「はっ!!」
お次は剣だ。りんは甲板から飛び降りると、そのエネルギーを込めて自らの剣を振り下ろす。

PoH「ッハァ!!」
対し男はと言うと、自らの得物で有る包丁を振りあげると、其れを正面から受けとめ、弾き返した。

りん「死ね!」
その反動と鋼糸を利用して、りんは今度は天井に移動する。直後、天井を全力で蹴り、推進力+重力を込めて再度の切り込みを敢行。男の元へ、まるで弾丸のような速度でりんが迫る。

PoH「(急所(腿)斬られたままでこれとはなァ……!)Yeah!」
受けて……りんの左側に無理やりそらす。が……

PoH「……!」
反らし切れず、右肩浅く斬られた。

りん「浅い……なら!」
床に深々と刺さった二本の剣を破棄し、袖から二本の麻痺毒付きナイフを取り出すと懐に飛び込む

PoH「wowwowwow!」
バックステップで距離取りつつ。懐から取り出した麻痺ピック五本を一斉投擲

りん「…………」
何やらブツブツ呟き、空中に緑に輝く文字を発生させながら鋼糸で投擲されたピックすべてを搦め捕り、刃の向きを逆に
そして完成した魔法陣で熱風を生み出すとピックを男目掛けて放った

PoH「!」
地面にあった甲板のかけらの中からある程度の大きさがある物をつま先で蹴り上げて遮蔽物とし、飛んで来たピックを止める。
更にバックステップしつつ熱風で吹っ飛んでくる板をぶったぎって真っ二つにして視界を確保。

りん「くっ……」
右足の痛みで壁に手を付きながら投剣を投擲

PoH「……ッハァ!」
ダガー回して刀剣弾く。
バックステップ停止。地面にひっくり返ってた大砲の火薬口を仕込み靴と大砲擦って火花で……発射。

りん「バカか……」
発射されるまでのわずかなラグの間に鋼糸で大砲の発射口を塞ぐ発射された砲弾が鋼糸を突破できず暴発。小さな炎と、黒煙が上がった。

PoH「haha。そう言うなよ」
それが晴れると、相変わらずな様子の男が表れる。少なくとも、今の爆発によるダメージは無いようだ。

PoH「馬鹿は嫌いか?」
りん「お前は嫌いな方のバカだ」
痛み止めを飲みながら、りんは言った。

PoH「oh……残念だ。俺は嫌いでもねェがなぁ……」
肩をすくめて言った男に、凛は冷淡な声で返す。

りん「どうせもう会わなくなるんだ。だったら好きとか嫌いとかは重要じゃないだろ」
PoH「Hey Hey.つれねェな」
ぷらぷらと手をふりつつ相変わらずなうすら笑いを浮かべて、何処か楽しげに言う。

りん「敵と良好な関係を築こうとするほど、おめでたい性格はしてないんでな」

────

蕾姫「どこかの白い魔王様←おめでたい性格
どこかの金髪覇王様←おめでたい性格
どこかの征服王←おめでたい性格」
鳩麦「やwwめwwろww」

────

りん「そろそろ第二幕と行こうか」
上空に向かって投ナイフを複数投擲。重力に引かれて落ちてくる

PoH「?」
ナイフとりんを中止しつつ着弾点から離れるようにバックステップした男の頭上に……屋根が有った。

りん「さて……」
なんとも無い事のように小さく呟きながら、凛はゆったりととした動作から……一気に腕を振り下ろし……

りん「点でダメなら面でどうだ?」
通路に沿って両サイドを鋼糸でまっすぐ斬り、奥行き20mほどを崩落させる。

PoH「wow!スゲェな!」
男が飛び上がって少し気合いを入れたように包丁を上に向けて振ると、崩落した天井がばっくりと真っ二つに切れた。当然、その間を、男は通り抜ける。

りん「面でもダメか……まあ……これで積みだな」
通り抜けると同時に、瓦礫が動き出している事に男は気付く。
幾つもの鋼糸が、瓦礫を捕えている。それらがりんが引いた腕と同時に……暴風の如く、荒れ狂うように渦を巻いた。

PoH「oh、こりゃぁ……」
その圧倒的な範囲攻撃を前にしても、ポンチョの向こうで男が見せた気配は、獰猛ば笑みだった。

PoH「Yeeeeeeeeah!!!」
瓦礫の間飛び回りつつ接近した鋼糸片っ端から斬りつつの舞い踊り。浅傷多数と引き換えにその範囲攻撃を捌ききると、甲板の端にストンッ。と着地した。


りん「あれで死なないのか」
そう言いながら、りんは呆れ気味に上に上がってくる。

しかし男はと言うと、少し面白がるように苦笑しながら、肩をすくめて言った。

PoH「いやァ、こりゃ駄目だな。」
言うと男は……甲板の端であるにも関わらず、バックステップをしました。当然、男はそのまま海へ落下します。

りん「……逃げるのか?」
PoH「そうしとくさ。またなァ。Hero」
そう言うと、男は遥か下の海へと落下して行きました。

りん「……逃がしたか。っと……」
と、不意にりんは、多量の出血のせいかよろけます。

しの「りん! 大丈夫?」
りん「ああ、問題ない。少しフラッと来ただけだ」
倒れそうになった俺を抱きしめるように支えてくれたのは、走ってきた詩乃だった

しの「酷い怪我……。えっと治療しないと」
りん「問題ない。自分で処置できる程度の道具は持っているからな」
そう言いつつ懐から針と治療糸を取り出す。とりあえず、一番出血が酷い太股の傷を結紮して、さらに縫わなければならない。

りん「というわけでしの、向こうを向いていてくれるか?」
位置が位置だけあって、縫うためにはズボンを脱ぐ必要がある。俺はフェミニストではないが、男として多少の良識は持っている。

しの「う、うん」
詩乃が向こうを向くのを確認すると、俺も反対側を向き、ズボンを脱いだ。
体勢を変えると痛み止めが切れかけてるのか、戦闘中では大量に出ていたアドレナリンが抜けたのか、鋭い痛みが走り、思わず呻いた。

しの「えっと、私が縫おうか?」
りん「いや、位置が位置だ。ズボンも脱いでるし、下は下着姿だぞ?そんな男の姿、しのに見せられるはずが……」
そこまで言ったとき、詩乃は俺の言葉に被せるように言った。

しの「私は……見たいな」
りん「自分が今何を言ってるかわかってるか!?」
驚愕で縫おうとした手が止まる。思わず詩乃の方を振り返ると、顔を赤くしつつもしっかりとこちらを見ていた。
そのまま四つん這いで寄ってきて、なおも呆然としている俺の手から針と糸を取った。

しの「私のために負った傷なんだし……。確かに恥ずかしいけど、りんのなら全てを受け止めたい」
りん「……そこまで言うならお願いしようか」
詩乃は今自分が言ったことが、愛の告白に等しいことに気づいているのだろうか?
とはいえ、ここは仮にも敵の本拠地である。真意を問うのは全てが終わった後だ。詩乃に太股を縫ってもらっている間に、左肩の刺し傷を手早く処置をする。

しの「はい、終わったよ」
さすがに長時間見ているのは耐えられなかったらしく、終わった途端に顔を背けた。
俺は軽く縫い跡を確かめてからズボンを履いた。

りん「ありがとう。……そういえば、俺が斬った傷は大丈夫か?」
しの「え?あ、うん。大丈夫」
俺の視界から隠すように腕をかかえて身体の向きを変えた。

りん「……見せてみろ」
しの「嫌っ! ダメッ!」
詩乃は抵抗するものの、少し強引に腕を引いて傷の様子を見る。

りん「……酷いな」
この傷を自分が付けたのだと思うと、悔恨が心の底から沸き上がってくる。守らなければならない少女を、守るはずの自分が傷つけたのだ
言い訳のしようがない。

しの「この傷は……私が動いたから。だからりんは悪くない! どうしても贖罪をしたいって言うなら……私の怪我が治るまででいいから、そ、傍にいて私を支えて!」
りん「……それは、誠心誠意勤めないといけないな」
しの「え、えっと……不束者ですが、よろしくお願いします!」
いろいろと段階を飛ばしているその挨拶はおかしい

りん「まあ……それは追い追い。とりあえず処置をするぞ。傷を見せてくれ」
しの「追い追い……。あ、うん、わかった」
そう言って服を脱ぎ始める詩乃。慌てて止める。

りん「なぜ服を脱ぐ。袖を捲ればいいだろう」
切れ込みも入っていることだし、傷に負荷をかけることなく、傷を外に出せるだろうに。

しの「りんになら見られてもいいのに……」
縫っている最中、そんな呟きが詩乃の口から漏れたが、聞こえない。

────

メンバー「「「…………」」」
蕾姫「www」
霊獣「エスプレッソは~、いらんかね~♪」
涙カノ「すみません一つ」
レオニス「こっちにも一つ」
蓮夜「同じく」
鳩麦「さーて、濃いめの紅茶入れてくるかな……」
蕾姫「おいおいw」
ULLR「相変わらず甘いですねw」
霊獣「途中までハイレベルな戦闘だったのにw」
涙カノ「実際戦闘描写最長じゃぁ……」
鳩麦「そだねwいやぁ、長かったw」
蕾姫「つかウチだけレベル可笑しくねw」
鳩麦「いや当たり引いたからさw」
涙カノ「俺が引いたらりくや死んでた……(ガクブル)」
鳩麦「はっはっはw」
レオニス「笑えねェw」

鳩麦「では最期に黒幕ってかボンボンを倒して戦闘終了だ」
蕾姫「強いの?」
鳩麦「いや?てか此処まで来たら誰だか予想つくんじゃない?」
メンバー「「「「「あぁ、うん、まぁw」」」」」

────

【りょう】

りょう「……で、何時の間にお前さんは捕まったわけ?」
「んぅ……!」
りょうの進んだ奥の部屋には、どういう訳だか奇妙な光景があった。腕を後ろ手に縛られて椅子に縛り付けられたお幸が、猿轡噛まされた状態で捕まっていたのである。
結構広い部屋の中で、周囲は20人程度の男たちに取り囲まれていた。

??「ッフフフ……。まさかこんな所まで来るとはねェ」
りょう「…………」
椅子に縛られたお幸の横に座った男がやけにニヤニヤとした笑顔を浮かべながら言った。

りょう「アンタがこの鬼さん方の裏って奴?」
男「鬼?何を言っているのか良くわからないけど……まぁこの賊どもに活動に必要な色々をくれてやっている。と言う意味なら、僕はそれにあてはまるだろうねぇ」
りょう「へぇ……武家の坊っちゃんだって?」
特に感慨もなく、世間話をするような口調で、りょうは言った。しかしどうやら男にはそれが気に食わなかったらしい。
チッと技とらしく舌打ちをすると、見下ろすように睨みつけて粘り気のある声で言う。

??「オイ、口のきき方に気をつけろよ?平民。僕はね、由緒正しき須郷家の血を引く二男。須郷信介なんだ。本来なら、お前みたいな平民は顔を合わせることすら赦されない・・・・・・上の人間なんだよっ!」
りょう「…………」
金切り声のような声とともに投げつけられた林檎を、顔面に当たる前に右手で受け止め、シャリシャリとほおばる。

りょう「……で?その信介公が、こんなしまで何してんのか、とかはまぁ聞かないけど……あー、お聞きしませんけど。彼女を捉えてどうしようと?」
信介「ふん。決まってるね。今から始まる交渉の材料に使うんだよ。お前達!」
下っ端「へいっ!」
りょう「…………」
信介の一声で、周囲の男たちが一斉にりょうを取り囲む。

りょう「……これは?」
信介「今からお前には、そいつらと戦ってもらおう。全員倒せたら君の勝ちだ。ただし、もし少しでも抵抗したり攻撃をよけたりしたらそのたびに……」
言いながら、信介は懐から小太刀を取り出すと、お幸の手を強引に自らの前に差し出させ、それを突き付ける。

さち「んぅっ……!」
信介「この子の指が、一本飛ぶよ?」
りょう「……はぁ……」
溜息をついたりょうの眼を、 信介はねめつけるように見た。

信介「此処に来るまでに、散々僕の遊び道具を散らかしてくれたそうじゃないか。今だってね、この小娘が間に合わなきゃ、お前は調子に乗って僕の前に立っていたんだろう?そうしようと考えただけでも万死に値する。今から精々、殺された方がマシだと思える程度には後悔させてやるからねぇ……」
りょう『此奴は……話通じそうにねぇなぁ……』
割と諦め加減で(相手の人格に対してだが)そう思ったりょうの前で、不意に、お幸が動いた。
抑えられた手足をバタバタと動かして、必死に逃れようとし出したのだ。

さち「んぅっ!んぅぅ~!!」
信介「あぁ……!?この……煩いんだよ!!」
さち「んゔッ!?」
りょう「……!」
そのささやかな抵抗に、男は業を煮やしたらしい。
突然刀の柄の部分でお幸の顔面を殴ったかと思うと、それを何度も何度も繰り返す。

信介「道、具が、生、意気、に!!動くん、じゃ、ない!!」
さち「ん゛ッ!ん゛ぅっ!ゔっ!ッ……!」
何度も何度も鉄の柄で顔面を殴られ、くぐもったうめき声を彼女は上げた。殴られる程に、顔面に傷が増えていく。

信介「お前は、僕の、玩具で、道具だ!今更、何を、したって……!」
殴り続ける内、徐々に信介の中でテンションがヒートアップし始める。既に殴られ続けたどれかの内どころが悪かったらしくお幸は目がうつろで意識が朦朧としていたが、そんなことはお構いなしだ。
この入り江についてからと言う物、信介はイライラを募らせ続けていた。屈強であるはずの手駒達が次々にやられていた事をこの男は知っていたし、その原因が立った数人の男であることも知っていた。
なまじ自尊心の固まりのような人間であるために、そのストレスその物に対して我慢がならなかったのだ。
そしてそのはけ口は、今の一瞬のいら立ちで一気に爆発した。

口汚く意識の朦朧とした状態の少女の顔に唾を飛ばし、何度も何度もその顔面を殴り続ける。
何度も、何度も、この苛立ちが収まるまで、気が晴れいつもの優越感に胸が満たされるまで何時までも……!!

刃「“オイ”」

その瞬間、“世界が硬直した”

あくまで体感的な物だ。けれども、主観的に見ての彼らにとってのその現象は、間違いなくそれが最も正しく表した言葉だった。
空気が重くなる。そのせいか、それとも別の理由なのかは分からない。けれども体が動かない。頭の中が真っ白になって行き、心臓を掴まれたように心音が小さく、遅くなっていく。音が遠ざかり、足が震える。

そんな状態な物だから、信介がその血霧に気がついたのは、一瞬遅れた後だった。
自分の頬に当たったうっすらと温かく鉄くさい物に、無意識のうちに指で触れた。見るとそれは見慣れた赤い液体だ。しかし自分も目の前の女も其処まで血を流してはいない。ならばどこからと、働かない頭は勝手に疑問に思ってしまったらしい。
本人の意思とは無関係に、首が回り、そちらを向く。

──血濡れの右手が顔面を覆い尽くす──

それが、彼の見た人生最後の光景だった。

────

霊獣「須郷くんに合掌」
レオニス「AMEN」
蓮夜「やっぱりリョウが鬼だったw」
蕾姫「モロ逆鱗に触れてたからなぁ」
ULLR「ちなみに彼等どうなったんです?」
鳩麦「腕力で全員の首引きちぎった後須郷君の顔面は握力で力任せに握り潰しましたが何か?」
なべさん「わぁ素敵w♪」
涙カノ「こええ……」

鳩麦「さ、続けるぞ~」

────

さち「ん……」
鈍い頭痛と共に目を覚ましたサチは、何かに揺られている感覚と、身体が何となく温かい事に気が付いた。

さち「え、と……」
一つ揺れるごとに、意識が覚醒して行く。顔や身体の至る所が痛かったが今はそれが意識をはっきりさせる手伝いをしてくれていた。
特に身体は問題なく動かせる。と、少し身体を動かしたのだが……

「ん?あぁ、起きたかよ」
さち「ふぇ……?えっ!?」
其処まで来て、ようやく彼女は自分の状態に気が付いた、さちはどう言う訳か、リョウにおぶられていたのだ。

さち「す、すみませ、ひゃぁ!?」
りょう「あ、ばかっ!?」
慌てて降りようとすると、どう言う訳かさちは片腕だけで支えられており、バランスを崩して危うく転び掛けた。
見ると、りょうは片手に武器と共に、男を一人抱えていたのである。
しかしそれを指摘するより先に、さちにはする事が有った。

さち「す、すみません!まま、まさかおぶっていただいてたなんて!」
りょう「いや勝手にやってんだから別にいいっつの。てか恐縮するより歩けるなら歩こうぜ?なんかこの船浸水してるっぽい」
さち「えっ!?あ、はいっ!」
苦笑して言いながら歩き出したりょうに、さちは慌てて続く。確かに足元には水が薄く張っており、どういうわけか船の中からギギギ……という少々不穏な音が響き始めていた。

さち「あ、あの……その人は……」
りょう「ん?あぁ、此奴か。お前のとこ行く時槍やり有ったんだが、根っから悪人でも無いらしくてな。このままその内沈む船底に気絶さしとく訳にもいかねーからな」
さち「は、はぁ……」
船から出たら、そこいらへんに放りだす。と言う話しだったので、とりあえずさちは納得しておいた。
と、同時に、気になったもう一つの事を問う。

さち「あ、あの……りょうさん……」
りょう「ん?まだなんかあんの?」
さち「は、はい。あの……あの方達は、結局……」
言いながら、さちは言い淀むように言葉を止めた。
自分が此処に居て、りょうには目立った外傷は無いのだ。どうやったのかは分からないが、どうなったのかはある程度分かる。
聞きたくは無かったが、聞く義務はある気がした。

りょう「……死んだ。……てか、殺した。全員な」
さち「…………」
その言葉はどう言う訳か、サチの心を深く刺した。
分かってはいるのだ。あれは最早人でなしと言うレベルを超越している。あれだけの事をした者たちに、死と言う罰が振り落ちるのはある意味当然なのかもしれない。

そして敢えて言うなら、其れを望んだのは自分だ。だが……

「「…………」」
なんとなく重くなった空気に耐えかねたように、りょうが片手で頬を掻いた。

りょう「あー、まぁ、なんつーか、なんだその、悪かった」
さち「ど、どうして謝るんですか!?私は、りょうさんや皆さんに……あ!妹達は……」
りょう「あぁ、そっちは全員無事だ。一人も死んでねーし、見たとこ命に別条もねぇよ。ひでー状態だったのは間違いねーけどな」
さち「よ、よかった……!」
ほぅ、と息を吐いたさちに、りょうは少しだけ微笑む。そのあと少しだけ、自嘲気味に溜息をついた。

りょう「けどまさかお前の方に手が向くとは思わなかったんで……あの有様だ。なっさけねーってか、顔の方も、もうちょい手早く片づけてリゃな……」
さち「い、いえ!これは、私が勝手にしたことで……」
実際あそこで抵抗したりしなければ殴られたりはしなかっただろう。
こうなるのは、ある意味分かっていてやったのだ。謝られるようなことではない。が……りょうは首を横に振った

りょう「……いいや。結果的にあれで隙が出来て助かったんだ。ったく助ける側が助けられてんじゃ世話ねーよ」
さち「そ、そんなことはありませんっ!」
りょう「…………」
珍しく大きな声をあげて反論した少女を、りょうは不思議そうに見る。

りょう「なんだよ、お前が其処まで……」
さち「……これだけは、譲りたくないんです」
こだわる必要は無いだろ。そう言われるより前に、さちは言葉を挟み込んでいた。

さち「……だって、だってやっと終わるんです……ずっと怖かった毎日も……不安だらけだった夜も……!」
りょう「…………」
さち「怖くて眠れなくて……一人で泣いて、皆で居たころの事だけ思い出してた……でも、これからはもう怖がらなくていいんです……!全部、全部皆さんの……りょうさんのおかげなんですよ……!?」
ある意味、その言葉は必死なようにも見えた。
訴えかけるような視線に、思わずりょうは言葉を返すことすら忘れて、その瞳に見入る。

さち「だから……だから……本当に、その……謝らないで、下さい……この感謝を、どこに向けたらいいのか分からなくなってしまいます……」
最後は、俯きながらの小さな言葉だった。その言葉に、リョウは少し頬を掻いた後、いつものように二ヤリと笑う。

りょう「……そか。じゃあ、そう言う事にしとくかね……あー、そうだな。ありがとよ。さち」
さち「は、はいっ!」
そう言って、二人は甲板へと続く階段を上って行く。
リョウには見えていなかったし、痛々しい青紫色のあざだらけの顔の中では分からなかっただろうが、さちの頬はうっすら、紅色に染まっていた。

────

鳩麦「ふぅ(テカテカ)」
蕾姫「ついにやったかw」
レオニス「我慢できなくなったんですかw」
涙カノ「まぁ、割と平和なシーンで……」
鳩麦「いやぁ、蕾姫先生ほど加糖じゃないし良くないですか?はっはっは」
蕾姫「そうか……?」
レオニス「まぁマイルドでは有ったようにも……」
なべさん「さちが良い子だったw」
蓮夜「りょうは鬼だったw」
鳩麦「オイw」

鳩麦「さて!次回は戦闘も終わったしのんびり楽しむよ~w」
蕾姫「ほう?」
レオニス「何するんです?」
鳩麦「まぁ基本クライマックスなので~……ヒロインズトークでもしてみる?」
涙カノ「え゛ッ」
蕾姫「良いんじゃないw?」
レオニス「面白そうですねw」
鳩麦「じゃあ其れとかで、また明日~」
涙カノ「おうふ……」

……続く
 
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