戦国異伝
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第百五十三話 雲霞の如くその四
「よいな」
「はい、わかりました」
「それでは」
「越前、加賀においても」
「その様に」
二人もこう応えてだ、そしてだった。
信長は主力を率いて金ヶ崎城に入った、この城に入るのは三度目だったので実に慣れたものだった、そうして。
彼は城内に長政を含めた諸将を集めこう言うのだった。
「ではこの金ヶ崎からじゃ」
「はい、越前加賀にですな」
「兵を進めていきますか」
「そうじゃ、この城に兵糧や武具や集めてじゃ」
そのうえだというのだ。
「攻めていくぞ」
「それではです」
すぐにだ、石田が信長に言って来た。
「若狭、丹波、丹後、近江に美濃等の兵糧や具足を集めますか」
「この城に集めよと達せ」
早馬を送りそうしてだというのだ。
「すぐにじゃ、よいな」
「わかりました」
「馬草も鉄砲もじゃ」
そうしたものもだというのだ。
「わかったな」
「さすれば」
「そしてじゃ」
信長はさらに言う、次に言うことは。
「この城は爺に任せる」
「それがしにですか」
「そうじゃ」
己のすぐ傍、左手にいる平手に顔を向けての言葉だ。
「御主にな」
「畏まりました、それでは」
「この城の留守を頼む」
越前加賀を攻める拠点となる金ヶ崎を定める、このことはかなりの責であることは言うまでもない。平手を信任しているからこそだ。
そのことを命じてだ、信長は他の諸将に言うのだ。
「御主達はわしと共に攻めるぞ」
「そのうえで、ですな」
「二国の門徒共を」
「徹底的に攻める、まずは一乗谷じゃ」
朝倉家の居城だった城だ、今は門徒達のものとなっている。
そしてその城をだ、どうするかというのだ。
「奪い返すぞ」
「では」
「しかし、一乗谷じゃが」
その城についてだ、信長は難しい顔になった。
そしてその顔でだ、こう言うのだ。
「簡単に陥ちた様じゃな」
「ですな、それは」
「簡単に」
「うむ、わしが攻めた時もそうじゃったがな」
一向宗に攻められてもだ、そうなったというのだ。
「だからな」
「あらためてですな」
「あの城はですか」
「越前を治める拠点としてはそぐわぬやもな」
これが信長の一乗谷への見立てだ、それで言うのだ。
「よりよい城がよいやもな」
「では殿」
柴田がここで信長に言う。
「北ノ庄はどうでしょうか」
「あの場所か」
「あの地に大きな城を置きそのうえで」
「越前を治めるべきか」
「そうしてはどうでしょうか」
「そうじゃな、門徒共を抑えてもな」
それでもだとだ、信長は腕を組んで言う。
「越後がある」
「上杉謙信が」
「越後の龍は強い」
その強さは信長も知っている、まだ一度も干戈を交えたことはないが。
あの時のことを思い出してだ、そして言うのだ。
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