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久遠の神話

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第八十四話 運が持つものその十二

「あの人は今夜ですね」
「ええ、今夜必ずね」
「戦いから降りてもらって」
「願いを適えてもらうわ」
「今度の願いはすぐに適うものではありませんね」
 首相になり考えている政策を実行に移させ日本を導く、そのことはというのだ。
「一朝一夕では」
「政治だからね」
「政治はすぐに実るものではないですから」
「政治の果実jは実るのが遅いわ」
「それこそ何年もかかりますね」
「ええ、そうよ」
 まさにその通りだとだ、智子は答えた。
「そうなるわ、だからね」
「あの人については」
「幸運を備えても結果が出るのは何年も、十年以上も先よ」
「本当に長いですね」
「ええ、それでもね」
「実りますね」
「彼に必要なものは幸運だけよ」
 資質は既にある、それならというのだ。
「最後に決めるものは時として運だけれど」
「あの方についてもですね」
「そうよ、人も神も偶然により大きく動かされるわ」
 神ですら偶然、即ち運には受動的であるというのだ。どれだけ力があっても積極的に決められるものではないのだ。
「運を作り出すことは出来てもね」
「それでもですね」
「ええ、運は受けるものよ」
「神も人も」
「私も運には振り回されてきたわ」
「お姉様もですね」
「運はこの世で最も強い怪物かも知れないわ」
 こうまで言うのだった、運に対して。
「制御出来ないのだから」
「私も運には」
 聡美もだ、運については過去を思い出し困惑した顔で語る。
「これまで幾度も」
「痛い目に遭ってきたわね」
「はい、そうでした」
 こう智子に話すのだった。
「神話の頃より」
「運は本当に神でもどうにもならないわ」
「そうですね」
「幸運の神ですら運を作り出せても運に左右されるわ」
「非常に力の強いものですね」
「ええ、偶然というものはね」
 運即ち偶然はというのだ。
「まさにね」
「だから彼もなのよ」
「運さえあればですね」
「実るわ」
 その願いがというのだ。
「そうなるわ」
「では」
「ただ、お姉様が」
 智子の顔がここで曇った、そして言うことは。
「何としてもね」
「戦いをですね」
「ええ、しようとするわ」
 それでだというのだ。
「彼は願いを適えるには闘わなくてはならないわ」
「勝てるでしょうか」
「そう思うわ」
 智子は冷静な目で話した。
「彼ならね」
「そうですか、それでは」
「私達は今回もね」
「見守るのですね」
「そう、剣士達の最後の戦いをね」
 所謂立会人としてだというのだ。
「そうしましょう」
「わかりました、それでは」
「これで五人ね」
 戦いを降りる剣士はというのだ。 
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