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久遠の神話

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第八十四話 運が持つものその十一

「権藤さんとのお話をですね」
「ええ、してきたわ」
 まさにだとだ、智子も微笑んで答える。
「さっきね」
「そうですか、それでは」
「十二時に新神戸駅で」
「その線路の上において」
「セレネー姉様が来られて」
 そのうえでだというのだ。
「彼の最後の戦いを経てね」
「そうして、ですね」
「指輪を授けるということをね」
「お話して下さいましたね」
「そうよ、伝えることは伝えたわ」
「有り難うございます」
「お礼はいいわ、私がしなければならないことだから」
 義務を果たしたに過ぎない、だから礼には及ばないというのだ。
 そのことを告げてだ、智子は聡美にこう言った。
「それでだけれど」
「はい、ここで立ち話をしてもですね」
「少し寂しいわ、だからね」
「今はですね」
「動物園にでも行きましょう」
 そこにだというのだ、八条学園の中の。
「そうしてね」
「そのうえで、ですね」
「お話をしていきましょう」
「梟を御覧になられるのですね」
 聡美は智子にこの鳥のことを出した。
「そうですね」
「ええ、梟は私の鳥だから」
「愛着がありますね」
「いい子よ」
 梟についてだ、智子は微笑んでこう言った。
「どの子もね」
「神話の頃からそう仰っていますね」
「私が一人でいる時も」
 梟はというのだ。
「一緒にいてくれたから」
「だから今もですね」
「観に行くわ」
 そうするというのだ、今も。
「そして梟を観ながらね」
「お話をですね」
「そうしましょう。どうかしら」
「ええ、ただ」
「貴女もなのね」
「動物園なら観たい生き物がいます」
 聡美もだというのだ、微笑んでそのうえで智子に答える。
「鹿や熊を」
「山にいる生き物をなのね」
「やはり私は彼等です」
「山に駆ける女神だからこそ」
「共にいたいです」
 そうだというのだ。
「では」
「わかったわ、それではね」
 智子は微笑んで聡美に答えた、それでだった。
 二人でそうした動物達のところに行った、そしてまずは梟達のところに行く。しかし今彼等はぐっすりと眠っている。
 その彼等を観てだ、智子は優しい笑みを浮かべて聡美に話した。
「この子達はこれでいいのよ」
「昼は寝ていてですね」
「それでいいのよ、梟はね」
「夜に目覚め動く鳥だからですね」
「昼は寝ていて当然よ」
 梟は夜行性の生き物だ、だから昼は寝ているのだ。そして智子はそこに愛おしさを感じそのうえで言うのだ。
「むしろこうでないとね」
「梟らしくない」
「ええ、ではこの子達の前でお話をしましょう」
「それでは」
 聡美も応える、そしてだった。 
 聡美からだ、こう智子に言った。 
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