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久遠の神話

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第八十四話 運が持つものその十

「普通のものならな」
「普通は、なのね」
「大きな企業の経営者程度はな」
 今の彼の肩書き程度は、というのだ。
「私位になるとな」
「けれど一国の宰相になると」
「なることも難しく総てを果たすことはより難しい」
 それが宰相の座だというのだ。
「それがわかっているからこそだ」
「貴方は戦いを選んだのね」
「剣士にならなければ別の手段に訴えていた」
「権謀術数ね」
「そちらにも自信がある」
 権藤は智子に淡々として話していく。
「経営者としては使っていないがな」
「既に使っているのではないのね」
「使わずともここまで出来る自信があったし実際にやってみせた」
「正攻法でいったのね」
「正攻法が実は一番成功に近くしかもリスクが少ない」
 これが権藤の見立てだ、手段を選ばないことも選択肢に入れていても出来る限りはそうするというのである。
「だからこそだ」
「それでなのね」
「経営者としてはだ」
「正攻法だったのね」
「資金の調達はまずは株で行ったが」
「ギャンブル性が高いと思うけれど」
「的確に読めばあれだけ確実に多くの収入を得られるものはない」
 権藤にしてみればそうだというだ、どの企業の株が何時どれだけ上下するのかを見極めれられればというのだ。
「的確な情報収集、そして分析を行えばな」
「株で資金を得られるのね」
「そしてどの事業にどれだけの資金、どういった人材をどれだけ投入すればいいかもだ」
 見極めれば、というのだ。
「企業はやっていける」
「天才的ね」
「天才は一パーセントの才能だけがあればいい」
 エジソンの言葉だ、権藤もまたこれを言ってみせるのだ。
「後は努力だ」
「貴方も努力なのね」
「人が力を備える為にはな、最初から備えていようともだ」
「努力をしなければならないのね」
「そうだ、一パーセントの才能さえあればだ」
 後は九十九パーセントの努力だというのだ。
「私はそれをしただけだ」
「そして経営者になったのね」
「その通りだ、私の会社を大きくした」
「それは正攻法で出来たのね」
「人を見抜く目にも自信がある」
 そのことについても、というのだ。
「企業の経営は問題ない」
「けれど首相になると」
「私の企業とは大きさがまるで違う」
「日本全体、そしてね」
「世界だ」
 日本の相手は世界だ、そのことを考えると確かに一企業とはその大きさが全く違っていた。権藤もそれがわかっているからだ。
 それ故にだ、宰相になるにはだったのだ。
「より多くの力が必要だったのだ」
「そういうことね」
「権謀術数を使っても正直だ」
「自信がなかったのね」
「足りないと思っていた、だから剣士になったのだ」
「けれど運も手に入ることになる」
「大きい、ではな」
 智子の顔を見据えて言う。
「今夜だ」
「楽しみにしているわ」
 智子も権藤の顔を見て応える、そうした話をしてだった。
 権藤の前を後にした、そのうえで大学にいる聡美のところに向かった。
 聡美は丁度講義を終えて校舎から出たところだった、そこで智子を見て自分からこう彼女に声をかけた。 
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