いつか必ず、かめはめ波を撃つことを夢見て
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第03話 余裕?ナシゴの実力
「じゃあ、次は二人目の選手に登場してもらうわ」
占いババが言うが、しばらく待って見ても何も起こらなかった。部舞台をぐるりと見回しても何も見えない。だが、ナシゴの耳にはハッキリとすり足で歩く誰かの足音が聞こえてきた。どうやら原作でも登場した透明人間のスケさんだろうとナシゴは自分の耳で拾った情報と、原作知識からそう考えた。
「ふふふっ、もう選手は来ているのよ。二人目の選手が来ているのに、そんなに緊張感をなくしても良いの?」
占いババが、笑いながら言った。どうやら二人目の透明人間の見えないという能力にかなりの自信があるようだった。しかし、原作知識で透明人間だという事を知っているナシゴには、あまり効果がなかったが。しかも、ナシゴには見えなくても、透明人間の隠そうとしている足音、息遣い、動きの音、全てがハッキリと聞こえる。それに、ある程度の位置は気を読んで感じることが出来るのだ。
「では二回戦はじめ!」
ナシゴは後ろに回った透明人間に目線を向けないようにしていると、占いババが勝負開始の宣言をした。ナシゴに向けて、一気に加速して走ってくる透明人間のスケさん。どうやら奇襲をかけて、すぐに試合を決めるつもりだろう。
後ろから来る透明人間に向かってくるりと回って、気配から透明人間の殴りかかる腕を予想でこの辺りかなと、当たりをつけて捕まえるナシゴ。捕まえてしまえばこちらのものと、ナシゴはそのまま首があるだろと予測される所へと手を回すと、その腕を巻きつけて締め上げる。チョークスリーパーホールドを透明人間へと掛けるナシゴ。
ナシゴの身長は、透明人間に比べて小さいので、見た目にはナシゴが空中に浮かんでいるようにして見える。
動き回られなければ、見えなくなっても大丈夫と考えたナシゴは、つかみ技で透明人間に対応したのだった。スケさんの首にかなり極まっているだろう、ナシゴにはうぐぐと苦しむスケさんの声を間近に聞こえる。
すると、ナシゴはちょんちょんと腰のあたりを触られる感覚がした。どうやら透明人間スケさんが参ったというサインとしてタッチアップしたのだろう。ナシゴはすぐに、スケさんを離す。すると、スケさんは走って距離を取るようにした。四つん這いに這いつくばって、ゼーゼーと息を整えるのが見えなくても分かった。
「透明人間のスケさんでもダメなんて、すごく強いのね、あなた」
占いババがナシゴを褒める。予想はしていたが、その予想を上回るナシゴの強さに純粋にびっくりししていた。
転生してからナシゴの身体能力は驚異的な成長を見せていた。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の5感が前世に比べて素晴らしい能力に仕上がっているのだ。しかも気の読み方も独学で習得しており、透明人間の見えないという能力を持ってしても、ナシゴには関係がなかった。今回は、つかみ技で対応したが、動き回られたとしても気を感じることで負けることはなかっただろう。赤ちゃんの頃からの修行の賜物でもあるが、一番の大きな理由としては身体のいじめ方を知っていたナシゴには、修行を効率良く行うことで赤ちゃんから青年期の間をこれ以上ないくらい理想的に鍛え上げていったのだった。
「次は場所を変えて勝負の続きよ。付いてきて」
占いババが、武舞台から降りて、建物の方へと歩く。後ろに続く、ナシゴ。ナシゴは、原作知識から悪魔の便所に連れて行かれるのだろうと考える。
ある建物の中に入り、階段を少し登った所で、占いババが立ち止まる。
「ここから入った先に、対戦相手の選手が居るわ」
扉を開けて、中に入るナシゴ。真っ暗闇を少しの光が漏れている先に歩いて行くと、漫画で見た同じような悪魔のベロが伸びた足場にたどり着く。
「かなり足場が悪いな。底はやっぱり、毒の沼になっているのか」
緑色の沼に、泡がボコボコとなっているのを確認してナシゴが言う。すると観客席からニンマリと人の悪い顔で占いババが言う。
「試合をよすのなら今のうちよ。若いのに死にたくないでしょう?」
「いや、試合は続行でお願いします」
「ふふふっ、それじゃ次の相手を呼ぶわ。戦う干物ミイラくんよ」
占いババが、選手を呼ぶ。ナシゴの向かいの悪魔の口から包帯巻きのミイラが出てくる。彼も原作通りならば、巨体のくせに、かなりのスピードで動くことが可能だということがわかっていたが、たしかに見た目だと最初は鈍重そうな感じを受ける。
「ふたりとも準備はいい? それじゃあ、始めっ!」
占いババの宣言が下された直後、ミイラくんが天井へと飛び上がる。あの体の大きさで、飛び上がることが可能なんて、いかに身軽なのかがわかる。しかし、対応できないほどではないとナシゴは思った。空中で1回転してナシゴの後ろに着地したミイラくんが猛烈なパンチのラッシュをナシゴに向けて浴びせかけるが、すべてをかわすナシゴ。ナシゴが思った通り、対応できないほどのラッシュじゃないということを、ミイラくんに知らせた。
「くそっ、なぜ当たらない!」
「次はこちらからだ!」
ナシゴは宣言通り、拳を一発ミイラくんの腹にめがけて放つ。身長の差から、ちょうど良い高さにミイラくんの腹があったからだ。
「……が……に……」
ミイラくんはそれだけ呻いて気絶し、ナシゴめがけて倒れる。ナシゴは、彼の巨体を片手で受け止める。
「また一発で気絶……」
占いババのつぶやき。圧倒的な力の差に、ミイラくんにかなりの自信を持っていた占いババは、残りの選手がナシゴにかなわないことが分かってしまった。
3人を倒したナシゴは、占いババが用意した残り2人の選手も一発ずつ放った拳で気絶させてしまい、特に苦労することなくバトルを勝ち抜いてしまった。ちなみに、残り二人はナシゴの知らない選手だった。孫悟空のおじいちゃんは、孫悟飯がまだ生まれてすらいないのを考えると登場しないのは分かっていたが、アックマンが居ないことには不満だったナシゴ。ぜひ戦ってみたいと思っていたが、どうやらまだアックマンは占いババと出会っては居ないのか、戦いにはもちろん、名前さえ出なかった。
ページ上へ戻る