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魔法少女リリカルフィア(リメイク)

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無印編
  第一話 魔法少女始めたぞ!

暗い竹林の中、一人の少年が走っていた。少年は何かに追われているようである。
少年は一度立ち止まり、来た道を振り返る。すると、そこから現れたのは“黒い毛玉”としか言えない物だった。つり上がった目と裂けた口を持ち“この世界”のどの生き物にも当てはならない姿をしている。そして、そいつは少年に襲いかかった。
少年は手に持った赤い宝石を掲げ“呪文をとなえる”。すると、彼の前面に光る魔法陣が展開され、怪物はそれにぶつかり弾かれた。怪物はそれでいくらかダメージを受けたようだが、倒すことまでは出来ず、そのまま逃げ夜闇に消えていった。
少年はそれを追おうとするが、怪物との戦いで傷を負っていたらしく、そのまま倒れてしまう。そして、少年の姿は小さなフェレットのような生き物に変わった。



朝、一人の少女が目を覚ました。綺麗な銀色の髪に、赤い瞳が特徴的な小柄な少女である。
彼女の名は“フィア・イン・キューブ”。人間ではなく禍具(ワース)と呼ばれる“呪われた道具”がその呪いの強さゆえ、人の性質を得た物だ。現在彼女は呪いを解くために清浄な気の集まるこの場所“夜知家”で暮らし、“フィア・キューブリック”という人間として高校に通いつつ、善行をつんでいる。

「・・・変な夢を見たな。」

フィアは、寝ぼけ眼をこすりながら言った。



布団から出て着替えたフィアは、朝食をとるために居間に向かった。

「あれ、今日は日曜日なのに早いな。フィア。」

朝食の用意をしながらフィアに挨拶した少年は“夜知春亮”。仕事で世界中を旅している父親の代わりにこの家の家主をしている高校生だ。彼は“呪いの効かない”特殊な体質なのでフィア達呪われた道具の持ち主となり、呪いを解くのを手伝っている。

「珍しいですね。いつもならもっとゆっくり寝ているのに。」

春亮の手伝いをしているのは“村正このは”。彼女もフィアと同じ呪われた道具で、かの有名な“妖刀村正”である。そこから黒髪ポニーテールの武士娘を想像するかもしれないが、眼鏡をかけたおさげで巨乳の少女である。春亮の幼馴染でもあり、彼とフィアと同じ高校に通っている。

「変な夢をみたのだ。」

「変な夢?いったいどんな夢だったん。」

フィアの言葉に反応した黒髪幼女は“人形原黒絵”。彼女も呪われた日本人形だが呪いはすでに解けている。見た目は幼女だが、表向きには発育が悪いだけの二十歳の女性と言う事になっており、この街にある商店街“壇ノ浦”という美容室を経営している。

「それよりまず、朝飯にしないか。」

春亮がそう意見すると、一同は賛成した。



「魔法で怪物と戦う男の子?」

朝食をとりながら、フィアの話を聞いて春亮が言った。

「大体そんな感じだ。前にクロエが見せてくれたマンガに出てきた“魔法少女”というやつみたいだったぞ。」

「じゃあ、男の子じゃから“魔法少年”というわけじゃね。」

「ああ。しかし、今回の夢で分かった事があった。」

「何ですか?」

「モフモフは素晴らしいが、モジャモジャは恐ろしいという事だ!」

その言葉に一同はずっこける。

「きっとあの夢は、モジャモジャをモフモフと同じと考え、無闇に近づいたらヒドイ目に会うという警告だったのだろう!つまり、モジャモジャはウシチチの体にぶら下がっているクリーチャーと同じくらいおぞましい物なのだ!」

「何でそうなるんですか!」

いつも通り、夜知家は今日も賑やかだった。




さて、この日は日曜日だが夜知家には特にやる事が無かった。買い物などに出かける予定も無いし、呪われた道具に関するトラブルも無いので、春亮としては家でのんびり過ごしたいと思っていたが…

「・・・暇だ。」

そうは思わない者が一人いた。もちろんフィアである。

「なあハルアキ、散歩に行ってもよいか?」

「ん?別にいいぞ。でもあんま遠くには行くなよ。」

「分かっているわい。」

彼女はそのままパタパタと走りながら玄関に向かった。




フィアが出かけてから十分ほど経ち、彼女が帰って来た。

「思ったより早かったな、フィア…」

居間のふすまが開く音を聞き、春亮が振り返ると…

「た、大変だハルアキ!」

フィアが一匹の動物を抱えて立っていた。

「お、お前またそんなの拾って…」

「待って下さい春亮くん。」

春亮は勝手に動物を拾ってきたフィアを叱ろうとするが、それをこのはが止めた。

「どうしたんだこのは。」

「この子、怪我をしています。」

「えっ!」

よく見てみると、確かにその動物は傷を負っていた。

「ホントだ、早く手当てをしなきゃな。すぐ救急箱を持って来るから待っててくれ。黒絵も手伝い頼む。」

「オッケ~。こういう時こそウチの出番じゃね。」




動物の怪我の手当を終えた春亮達は一息をついていた。

「にしても、これって何の動物なんだ?」

ふと、春亮が疑問を口にする。

「イタチの仲間みたいですけどねえ。」

「私が思うに、これはフェレットというやつではないのか。」

「確かにそんな感じじゃけどこんな種類のフェレット、ウチは見た事無いよ。」

それに対し、このは、フィア、黒絵の三人が順番に推測を言った。

「でもまあ、いるんじゃないか。こいつも誰かのペットみたいいだし。」

フェレット(?)の首についている赤い宝石のついた首輪を見ながら春亮が言った。

「とりあえず、怪我が治るのと飼い主が見つかるまでの間、こいつはうちで預かることになるな。」

「そうですね。でもフェレットって何を食べるんでしょうか?」

「ペットショップで聞けばいいんじゃないか?」

そして、このフェレット(?)はここで預かることが確定した。のだが…

「そう言えばふぃっちー、この子は何処で拾ったん?」

黒絵がふと思いついた疑問をフィアにぶつけた。

「家の裏の竹林だ。」

「あそこで?お前どうしてそんな所に行ったんだ。」

「声が聞こえたのだ。頭の中に直接、助けを呼ぶ声が・・・それが聞こえた方に行ったらこいつがいた。」

「声って・・・まさか!」

フィアの話を聞いた一同は、フェレットの首輪についている赤い宝石を見た。

「いや、私も一応確かめてみたが、その宝石は呪われた道具の類ではなかったぞ。」

「じゃあ、フィアの聞いた声っていうのは何だったんだ?」

「私に聞かれても分からん。」

ひとまず、フィアの聞いた声については置いておくことになった。




夜中、皆が寝静まった頃再びフィアの頭の中に直接声が響いた。

『助けて…誰か、僕の声が聞こえていますか。誰か…』

「‼また、あの声だ…」

昼間に聞いた声がまた響き、フィアは慌てて布団から飛び起きた。すぐさま、自室から出ようと障子に手をかけようとするが…

ドゴーン!!

突然、庭の方から轟音が響く。一瞬それに驚き、フィアはその場で転びそうになるがなんとか踏みとどまり障子を開け放つ。
障子を開けたフィアの目に入って来たのは、縁側の向こうにある庭そして・・・そこにいる毛玉としか表現しようのない、謎の怪物だった。

「な、何だこいつは!?」

フィアが思わず叫ぶ。すると、先程の音を聞きいたのか別の部屋から春亮とこのはが、それに離れからは黒絵が飛び出して来た。

「いきなりとんでもないのが来ましたね。」

「でも何か、呪われた道具とは違う感じがするな。」

「道具そのものじゃなくて、それが作り出したものかもしれんねえ。」

春亮達がそれぞれに怪物を分析する。

『助けて…助けて…』

すると、再びフィアの頭に直接あの声が響いた。それを聞いた彼女は声のする場所・・・フェレットの寝かせてあるカゴが置いてある夜知家の居間に向かい、障子を開けた。そこから出てきたのは、例のフェレットだった。すると、それは怪物を見て“しゃべった”。

「もう、こんな所まで来てたなんて…」

「なっ…!」

「フェ、フェレットがしゃべった…!?」

それを見て一同は驚くが、怪物はそれに構わず突進して来る。

「モード《カオティック忠盛》!」

すぐさま黒絵が髪を伸ばし拘束する。だが、動きを止められたのは一瞬で、怪物は力任せにそれを引きちぎる。

「行かせません!」

しかし、このはがすぐさま手刀で斬りかかり、怪物の進行を食い止めた。

「う、うそ!?生身で暴走体と戦ってる。」

それを見たフェレットが目を丸くした。

「いや、お前の存在もかなりびっくりだぞ。」

そんなフェレットの発言に、春亮がツッコミを入れた。

「というかお前、あれが何だか知っているのか!」

今度はフィアがフェレットに食ってかかった。

「あ、そうだった。これを…」

すると、フェレットは思い出したかのようにフィアに首輪についた宝石を渡した。

「これを使って下さい。あなたにはあれを封じる力・・・魔法の才能があります。あれを放っておくと大変な事になるんです。お願いします、お礼は後で何でもしますから!」

「ちょっと待て、何を言っているのだ!魔法だの才能だの何なんだか…」

一気にまくし立てられ混乱するフィア。だが・・・

「ふぃっちー、ここはひとまずそれに従っておくべきだと思うよ。」

「こっちはそろそろ持ちそうにありません。これを何とかする方法があるなら早く!」

「・・・わかった。」

苦戦しているこのは達を見て、心を決めた。

「で、これをどうすればいいのだ?」

「それを持ったまま僕の言う言葉を続けて下さい。“我、使命を受けし者なり”」

「ええと・・・我、使命を受けし者なり。」

「“契約の下、その力を解き放て”」

「契約の下、その力を解き放て。」

「“風は空に、星は天に”。」

「風は空に、星は天に…」

「“そして”」

「そして…」

「「不屈の心はこの胸に!この手に魔法を!レイジングハート、セットアップ!」」

〈Stand by ready set up.〉

その言葉を唱え終えると、宝石から機械音声が鳴り、強い光を天に向かって放った。

「やっぱりこの人、すごい魔力だ…」

その光の強さを見て、フェレットは声をもらす。

「な、なんなのだこれは!」

一方フィアは、突然宝石が光を放った事に混乱していた。

「早く!あなたの杖とあなたを守る服をイメージして!」

そんな彼女にフェレットは構わず指示を続ける。

「なっ、急にそんな事を言われてもだな!」

フィアはとっさに考える。まずは自分が通う“私立大秋高校”の制服。そして自分の似姿。

「と、とりあえずこれでよい!」

そして決めた途端、フィアの姿が光に包まれた。

「うわっ!」

彼女のすぐそばにいた春亮は、思わず目をつむる。そして、光が収まった時出てきたのは…

「な、何だこれは!」

先程とは別の服装をしたフィアだった。寝間着は大秋高校の制服によく似たものに変わっていた。違いはネクタイがリボンに変わったのと、足を守るためにブーツを履いている事の他、細部のデザインが異なっている。そして彼女の右手には、面の一つの中央に赤い宝石の埋め込まれた鋼鉄の立方体が先端についた杖が握られていた。

「こ、これは一体・・・」

それを見た春亮は困惑する。

「いけない!」

「ふぃっちー、ハル逃げて!」

その時、怪物がこのは達を振り払い、フィアに向かって突進して来た。

(間に合わない!)

フィアはまだこの杖“レイジングハート”の使い方を知らないのでそう思ったが…

〈Protection〉

レイジングハートから音声が鳴り、フィアの周囲にバリアが展開される。それに弾かれ、怪物は庭を転がった。

「す、すごい…」

その光景を見て、春亮は思わず声をもらした。

「ええと・・・その封印というのはどうすればよいのだ。」

「僕達の使う魔法は術式がプログラムとして組み込まれています。だから攻撃や防御は思うだけで自動的に発動します。」

「なんと言うか、ハイテクな感じだな。」

「でも、封印などの高度な魔法は使うのに呪文が必要になります。」

「そうか、それでその呪文は?」

「心を澄まして下さい。そうすれば自然と浮かんできます。」

「心を澄ます…?ええと…」

フィアはフェレットの言う通りにした。すると、一つの呪文が浮かんでくる。

「・・・これだな。」

〈Sealing mode stand by〉

それに応じて、レイジングハートが変形する。

「いくぞ!“リリカルマジカル 封印すべきは忌わしき器 ジュエルシードシリアル21封印!”」

彼女が呪文を唱えると、レイジングハートから無数の銀色に光る帯が伸びて、怪物に絡みつく。怪物は抵抗しようとしたがそのまま消えて、後に残ったのはローマ数字で21と刻まれた青い菱形の宝石だった。

「早く、レイジングハートでふれて。」

「あ、ああ。」

フェレットに言われ、フィアはレイジングハートで青い宝石にふれた。すると、宝石はレイジングハートの中に収納された。その後、フィアの服は寝間着に、杖は宝石へと戻ったのであった。

「終わったのか?」

「はい。」

春亮の質問にフェレットが答えた。


続く
 
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