虹の軌跡
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第七十四話
虹太郎
「なんだよ、これ…」
一枚の用紙を持ったまま、虹太郎は驚愕した
それは今週末の練習試合のスタメン表だった
そこには
五番 キャッチャー
式島
と書かれていた
虹太郎
「ちょっ、監督、どう言うことですか?」
監督
「どうしたもお前のバッティングにはそれだけ、いや、それ以上の価値があるからだ」
虹太郎
「いやいや、それにしても、本来キャッチャーは加納先輩じゃないですか」
監督
「その加納がお前を推薦したんだ。守備の実力こそまだ見てないが、キャプテンに意見をあそこまで通したのはお前が初めてでな。加納はお前ならこの野球部を変えてくれると思ったらしい」
虹太郎
「そんな…だったらせめて下位打線に…」
監督
「それこそナンセンスだ。1年でキャプテンの球を前に飛ばせる奴は潮見しかおらんかった。その潮見より好成績だったんだ。評価するには充分過ぎる」
虹太郎
「……」
ついに押し黙る虹太郎
現に啓一は今回、七番サード
パワーは虹太郎よりあるのだが、バッティングにムラがあり、打率がそこまで良くないからだ
監督
「ましてや、今回の相手にはそこまで悠長なことは言ってられんからな。格上とは言え、せめて一矢報いるくらいはしたいからな」
虹太郎
「そういえば、対戦相手ってどこなんです?」
聞かずにはいられなかった
とても自然に出た質問だったから
そして、監督の一言で虹太郎の野球人生の歯車が狂い始めた
監督
「王竜学院付属中学だ。心してかかれよ、期待しているからな」
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