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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第九十九話 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ

『ミネルバ?こんな近くに!』

追い詰められつつあったキラ達は偶然にもミネルバ側のザフト本隊の一角といえるミネルバと出会う。

「あれは――――!」

「アークエンジェル……この戦いに参加していると報告では聞いていたけど、実際に見ると複雑なものね……」

ミネルバもアークエンジェルやキラのストライクフリーダム、その他MS隊であるアストレイやムラサメ、リゼルを見て驚愕する。

『随分と役者もそろってきたじゃないか』

クラウもミネルバの登場に少々驚くが、寧ろ好都合だと舌なめずりをする。ザフトの本隊と合流することになったのか、それともミネルバが本隊からずれてこちらに来たのか。どちらにしてもクラウには関係ない。目の前に現れたのであればクラウにとってはそれは最早落とすべき獲物だ。

「艦長、どうするんですか?」

アーサーがタリアにミネルバをどうするべきか尋ねる。味方ではないが、かといって敵とも言い難いアークエンジェル。無視しても問題はない。が、そうするには些か彼らの存在は大きすぎる。

「メイリン、あの艦に通信、繋げれる?」

「え、あ、はい!」

突然の事だが、メイリンも伊達にミネルバのクルーというわけではない。厳しい倍率を誇る最新鋭艦の管制官として配属されたのだ。高いハッキング能力もあることから秘匿性はともかく、彼らに連絡を繋げること自体はそう難しい事ではないかった。

「アークエンジェル、聞こえますか?こちらミネルバ艦長のタリア・グラディスです」

「ちょ、艦長!?何を!」

アーサーが慌てて止めるように進言するが、タリアはそれを目線で黙らせる。若干、いや実際にはかなり脅えて竦んでしまうが、それでもアーサーはハッキリと連絡を取る事は反対だと視線で訴えた。
タリアはそうやって自分の意見を主張できるようになった自分の副官であるアーサーの成長に場違いながらも嬉しく思う。だが、それで連絡を取りやめる気はない。それとこれとは話は別だ。

『お久しぶりです、グラディス艦長。こちらはアークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスです。ご用件は何でしょうか?』

激戦が続く戦場という事もあり、音声のみでの通信が繋がる。タリアは手短に自身の考えを伝えた。

「現在、本艦を含め一部のザフトはメサイアに存在している同じザフトの勢力と敵対しています。事実上、内乱といっても過言ではないでしょう。また、貴艦とは本来であれば敵対関係にあります。ですが、誠に勝手であることを承知の上で我々は貴艦への協力を求めます。
この求めに応じていただいた場合、責任は総て私、タリア・グラディスが持つこともここで宣言いたします」

タリアにとって最大限、いや自らの立場をかなぐり捨てる様な覚悟があって初めてできるほどの譲歩だった。通信を聞いていた者は全員が驚愕する。敵味方としての区別をこれまでハッキリとしなかったミネルバ側のザフトは今、アークエンジェルが協力する条件で味方と認識すると言ったのだ。

『……わかりました。貴官の申し入れ感謝いたします。たとえこの一時となってしまうかもしれない協力関係であったとしても、貴艦等との共闘関係を快く思います。これより我が艦はミネルバの指揮下に入ります!』

マリューとしてもネオという存在なども含めて色々と思考が混乱していたが、この申し出を受け入れない理由はない。彼らミネルバの陣営が前大戦の連合やザフトの様に、何かしらの悪意ある兵器(彼らにとっては核やジェネシス、レクイエムの事)を持って行動したのであれば受け入れられなかったかもしれないが、今のアークエンジェルとミネルバの目指す立ち位置は似たものだとマリューは判断した。

『なるほど……そう来るんだ?人情があるだけでありきたりな艦長だと思っていたけど、中々柔軟な思考も持っているようで……』

タリアとマリュー。両艦長の判断にクラウは思わず称賛したくなる。ある程度の秘匿しかしていない通信などクラウにとってはいくらでも傍受は容易いものだ。そうやってミネルバの近くで戦闘していたことからか、ようやくというべきかもしれないが、ミネルバはクラウの乗るゲルググを発見した。

「あの機体は……」

「ゲルググタイプのようです。ですが、A型やS型と酷似しているものの、どの機体にも既存のものとはデータが一致しません」

アーサーのつぶやきに索敵担当のバート・ハイムが応える。

「各員に警戒するように伝えて……あのカラーリングからして敵はクラウよ」

「えェ!」

『さて、どう動くのが一番いいかな……』

ストライクフリーダム等を相手にしていたクラウはそんな風に呟きながら戦闘を続けていく。







巻き起こる閃光。その光の筋によって貫かれていくMSや艦隊。そうやって散っていった味方は数知れず。多くの者は目の前で起きたにもかかわらず、この出来事が信じられずにいた。

『こ、これをたった一機のMSが成したというのか……』

多くの散った艦隊やMSが破壊されるという惨劇は、たった一機のMSに引き起こされたものだ。赤い大型のその機体を見たのは一瞬だった。火線をまるで何事もなかったかのように掻い潜り、すれ違いざまに凶弾を撃ちこんだ。
たったそれだけで次々と落とされていくのだから、運良く生き残った他の味方部隊もやられたことを信じられずにいた。まだ、幽霊や死神が襲ってきたとでも言われた方が納得できるといった風に呆けた顔をしている者もいる。

「クソ、これ以上好き勝手にやられて堪るかっていうんだ!」

それに遅れて追っていたのはマーレのRFゲルググ、そしてアレックのガルバルディβだ。マーレもアレックも共にビームを放つのだが、敵のナイチンゲールには翳めもしない。圧倒的とも言える加速に見失いそうになりながらも追いかけるが、距離を詰めることすら許されなかった。

『このガルバルディとて決して機動力が劣っているわけではないというのに……』

軽量機であるガルバルディβは装備さえ外せば数多く存在している機体の中でも相当軽い機体だ。そして出力も他の機体と比べて決して低いわけではない。にも関わらず敵との距離を詰める事が出来ない。だが、彼らとてただで追いかけていたわけではない。

「そっちに行ったぞ!」

『任せたまえ!!』

そう言ってナイチンゲールの移動していたルート上に現れたのはルドルフのギャンクリーガーである。金色塗装などの無駄に多い装甲やシステムなどのせいで、他の二機に比べ機動力に若干劣るルドルフの機体はマーレやアレックの機体に追随することが出来ないでいた。
だからこそと言うべきか、金色装甲によってミラージュコロイドの探知など索敵能力の高いギャンクリーガーは先行してルートを絞り、先回りしたのだ(無論、マーレやアレックが追跡してこそ移動するルートを絞り込めたのだが)。

『これで!』

『その程度ではな』

正面から相対したギャンクリーガーは放たれたナイチンゲールのメガビームライフルをシールドで受け流し、ランスで貫こうとする。
しかし、相手が悪い。いかに高出力のビームランスであっても、それをあっさりと躱す議長の腕のせいか、有効打を与えることは出来ず、逆に隠し腕のビームサーベルに斬りかかられる。

『ヌォ!?』

情けない叫び声を上げつつ、ルドルフは寸での所で致命傷を避けた。しかし、それでも機体のスカート部に大きく傷をつけられてしまう。

「よし、よく堪えた!」

だが、ルドルフのその攻防はマーレとアレックが議長に近づくまでに十分な時間を稼いでみせた。各機は議長を逃さない為に、Yの字のように議長を取り囲む。

『なるほど、単純だが実力が兼ね備わっている分、有効だな。だが――――』

アレックとルドルフの実力は機体の性能を含め、高く見積もっても劾と同等程度であり、その劾を僅かな時間で撃墜したのは議長自身である。つまり、何が言いたいかといえば――――

『今の私を相手取るにはそれではまだ足りん!』

二人では相手にならないという事である。マーレだけはニュータイプとしての覚醒からか、難を逃れるがアレックとルドルフの機体は腹部の拡散ビームによる攻撃やビームトマホークによって手痛い反撃を受けてしまった。

『おのれ!?』

『ば、馬鹿な!この僕がぁ!?』

しかし、腐っても鯛というべきか。いや、彼ら自身優秀なパイロットであることは覆しようのない事実なのだろう。直撃は回避し、それどころか反撃しようと行動に移している。

『これならばッ!』

アレックはビームを放ち、ルドルフはビームランスで貫こうとする。それに乗じるのは当然マーレ。だが、直前に悪寒を感じたマーレは咄嗟に近くのルドルフを突き飛ばし、自身もその反作用によってその場から離れる。

「避けろ、アレック!!」

叫んだと同時に光の筋――――ビームによる攻撃が何発も放たれた。

『ドラグーンかぁ!?』

『ほう……今のに気付くか。だが、これで残るは二機だ』

マーレに突き飛ばされたことによってルドルフは間一髪の所で攻撃を躱した。しかし、アレックの方は警告が間に合わなかった為に両腕を破壊されてしまう。

『コックピットを穿たれなかっただけマシだと言えるか……フン、言い訳にもならんな……』

真っ先に戦闘不能へと追い込まれてしまった事を悔やむアレック。マーレの咄嗟の警告が無ければ死んでいたであろうことすら想像するにたやすい。それほどまでに今の攻撃は危険なものだった。

「あとは俺とルドルフでやる――――帰還してくれ!」

『分かっている。これではいても足手纏いにしかならんからな……』

そうせざる得ないことに嘆きつつも、アレックは現実を見据えれない愚か者ではない。撤退を素直に受け入れる。先にやられていたのがルドルフなら駄々を捏ねただろうな、などとつまらないことを考えつつアレックは戦線から引き下がった。

「――――追撃を仕掛けなかったのは情けか何かか?」

アレックが下がったのを頃合いにマーレは通信で議長に問いかける。無論、追撃を仕掛けてきたなら全力で抵抗しただろうが、議長の機体の性能とその実力からして抵抗は難しかったはずだ。少なくとも、もう一機位は屠れた筈である。だが、マーレの予想に反して議長は追撃を行わなかった。

『いいや、私は本来学者や政治家であって殺戮者ではない。必要となるなら落とすことに何一つ躊躇いを持つつもりはないが、だからといって無駄に人を殺す必要もないだろう』

「その考え方――――後悔することになるぞ」

そう言ってマーレは一気に距離を詰める。隠し腕やビームトマホークといった強力な近接武装を持っている相手に近接戦は不利だろうが、ドラグーンや拡散ビーム砲、メガビームライフルといった遠距離武器を持っている相手に、距離を取って遠距離戦に持ち込むのも不利だ。
ならば自分の得意なスタイルで戦った方がまだマシだろうと割り切る。

「それに懐まで潜り込めば四方からの攻撃は無理だろう!」

『そうやすやすと、そんな甘い考えが通じるかな?』

議長の言う通り、それは考えが甘かった。そもそも懐に潜り込む前に火線に進路が阻まれてしまう。射撃として放たれる数の多さもそうだが、一発一発の威力自体も高いのだ。特に、メガビームライフルなどは迂闊に正面からビームシールドで受け止めれば貫かれてしまうことだろう。

『貰った!』

とはいえただ手を拱いているだけではない。マーレが正面から仕掛けるのに合わせ、ルドルフのギャンクリーガーによるシールドミサイルがナイチンゲールに攻撃を仕掛ける。格闘特化のギャンクリーガーの射撃武装は無いよりはまし程度のものでしかないが、支援攻撃としてはその役割を十分に果たした。

「これで!」

『なるほど……中々やる!』

ナギナタを横に振るう。その攻撃を議長はシールドで受け止め、ビームトマホークで切り裂こうとした。だが、その攻撃をマーレはビームシールドで受け流す。ルドルフがそこに狙いを付けて貫こうとするが、議長はそれをドラグーンで牽制して動きを押さえた。

『攻撃を受け流したか!』

「その位できなきゃ相手にならねえんだろ!!」

真っ向から防いだのでは断ち切られると判断したからこそ流した。そのまま隠し腕によるビームサーベルの追撃を察知したマーレは、シールドにぶつけていたナギナタを逆に回して持ち手の部分でビームサーベルを防ぐ。

「まだだァ!」

まだ油断はできない。防いだと思わせたその一瞬を狙って、更なる追撃を行ってくるとマーレは予測し、右足で蹴りを入れる。しかし、その動作は隠し腕によって止められてしまい、腹部の拡散ビーム砲がマーレを撃ち抜こうとする。

「今だ、やれ!」

『なんだと!?』

ここで初めて議長が驚愕する。後ろからギャンクリーガーがビームランスで攻撃を仕掛けてきたのだ。ドラグーンによって動きを止められていたはず――――そう思って議長はギャンクリーガーの方に向いて理解する。

『半身を犠牲にしたか!』

ルドルフはあえて攻撃を躱すのではなくシールドを持っていた左腕と左足を犠牲にして突っ込んできたのだ。捨て身のその攻撃はまさに必殺の一撃かの如く的であるナイチンゲールを貫こうとする。

『恨んでくれるな、我が戦友よォ!!』

「勝ったら恨まねえさ!」

ナイチンゲールを貫こうとするその先にはマーレのゲルググもあるが、マーレ自身が攻撃しろと言い切った。ルドルフもマーレも二人が掛かりでの捨て身の攻防――――隠し腕も、拡散ビーム砲もドラグーンも議長の隠していた札は総て出し切った。否、出させ切ったのだ。

二人の決死の覚悟がその刃を敵の喉元へと突き立てる。そうして穿たれたビームランスの一撃。果たして、結果は――――――
 
 

 
後書き
昨日夢で見た謎シーン。

――メサイア内部にて――
シン「やっとメサイアまでたどり着いたぞ!」
デュランダル「待っていたよ、シン」
シン「え、議長!?じゃあ、ナイチンゲールで戦っているのは一体?」

――メサイア付近――
マーレ「馬鹿な!?」
?「私、シャア・アズナブルが粛清しようというのだ!」←ナイチンゲール
キラ「嘘だ!」
?「今の私はクワトロ・バジーナ大尉だ。それ以上でもそれ以下でもない」←百式
アスラン「冗談だろう?」
?「私はキャスバル・ダイクン。デギン・ザビによって暗殺され、志半ばで無念の死を遂げたジオン公国の創始者、ジオン・ダイクンの息子である」←シャア専用ゲルググ

色々と何があったしな状況の夢だった。今思い出しても恐ろしい……。 
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