| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八十三話 権力者その十

「その時は」
『その時は再びです』
 躊躇なくだ、声は権藤に答えてきた。
『貴方達に戦ってもらうだけです』
「彼に蘇ってもらう為にか」
『そうです、その為にです』
 必ず、というのだ。
『貴方達には』
「私達のことは構わないのか」
『貴方達は罪を犯しました』 
 声は自分の言い分を返した。
『ですから』
「私達は何をしたのかも気になるな」 
 神話の頃の彼等がだ、権藤はこのことも問うたのだった。
「その罪は」
『数多くの人を殺してきました』
「それがかつての私達か」
『その罪によりです』
 彼等は戦っているというのだ、今も。
『魂の罪により』
「私達は戦っているのか」
『彼が目覚めれば』
 その時はというのだ。
『貴方達も解放されます』
「前世のことは知らないが」
 権藤はそうしたことには興味はなかった、彼は信仰はあるにしてもそれ程強くはない。神を前にしてもこのことは変わらない。
 だがそれでもだ、こう言うのだ。
「私はこの戦い自体には興味がない」
『だからなのですね』
「願いが適えばな」
 その時にだというのだ。
「降りさせてもらう」
『そうですか、それでは』
「止めるつもりか」
『そうさせてもらいます』
 声は権藤に強い声で告げた。
『私もそうしなければならないが故に』
「意見は一致しないな」
『そうですね、それでは』
「今からか」
『いえ、まだ怪物を用意していません』
「では後でか」
『後日、また来ますので』
 その時にだというのだ。
『その時に貴方に戦ってもらいます』
「話はわかった、ではな」
『戦いにより発散される力、それを集めてあの肩に注ぎ込み』
 そうしてだというのだ。
『あの方に起きてもらいますので』
「私達の戦い自体が糧か」
『そうです』
 まさにだ、その通りだというのだ。
『ですから是非共』
「因果なものだな」
 権藤は表情を変えない、そのまま淡々としての言葉だった。
「どうにもな」
『貴方達がでしょうか』
「いや、貴方がだ」
 他ならぬ声、セレネーこそがというのだ。
「貴方が因果なものだと言ったのだ」
『私がですか』
「そこまでして愛しい者と共にいたい、そしてそうしなければならないことがな」
『因果だというのですか』
「実にな」
『その様なことを言われたことははじめてです』
「怒ったか」
『いえ』
 怒りはない、そうだというのだ。
『驚いているのです』
「そうなのか」
『私に因果という言葉が当てはまるとは』
「誰でも当てはまる」
 因果、この言葉はというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧