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久遠の神話

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第八十三話 権力者その六

「欲しい、だからだ」
「五日後にまた」
「会おう、それではな」
「夜になりますがそれでもいいですね」
「夜の方が都合がいい」
 権藤、彼にとってもだというのだ。
「誰にも見られないからな」
「だからですか」
「そうだ、五日後の夜の十二時に八条町だ」
 刻限だけでなく場所も再び言われた。
「ではな」
「はい、それでは」
 聡美は権藤の言葉に頷いた、そのうえでだった。
 彼とも約束をした、彼女は確かめてから権藤の屋敷を後にした。権藤はその聡美を見送ってそれからだった。 
 執事にだ、こう言ったのだった。
「では今からだ」
「お食事ですね」
「少し遅いがそれにしよう」
 夕食にだというのだ。
「既にシェフは作ってくれているな」
「旦那様を待っています」
「では今から貰おう」
「冷えていますが宜しいでしょうか」
「構わない」
 権藤は美食家だ、しかし冷えていても食べるのだ。しかも料理にこれといって文句を言うこともないのだ。
「貰う」
「わかりました、それでは今から」
「そしてだ」
「それで、ですか」
「メニューは何だ」
 次に尋ねたのはこのことだった。
「今晩は」
「まずはお粥です」
「粥か」
「それと唐揚げです」
 おかずはこれだというのだ。
「中華粥に豚の肩肉の唐揚げです」
「他にもあるな」
「はい」
「では他のものは」
「チンジャオロースに」
 まずはこれだった。
「そして八宝菜です」
「それもか」
「この三つに加えて」
 さらにあった、今度のメニューはというと。
「豚の焼売です」
「蒸しものも作ってくれたか」
「そうです、デザートはライチを用意していますので」
「楽しみだ、それではだ」
「はい、お楽しみ下さい」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 権藤はその夕食を食べた、そのうえで。 
 自身の寝室に入った、そこには綺麗な白いガウンを着た黒く長い髪の女性がいた。
 歳は彼より数歳若いか、顔立ちは細面で白く細い眉が綺麗なカーブを描いている。睫毛の長い切れ長の二重の目だ。
 唇は大きめで綺麗なピンクだ、白い顔で頬は微かに赤い。
 背は高めですらりとした身体だ、その美女が彼を見て言って来た。
「もうお食事は」
「済ませた」
 権藤は誰にも見せない微笑みで美女に応えた。
「中華をな」
「そうですか、実は私も」
「粥に唐揚げにだな」
「それに八宝菜と」
「粥がよかったな」
「はい、焼売とチンジャオロースも」
 そのどれもだというのだ。
「とても 美味しかったです」
「最後のライチまでな」
「この子も楽しんでくれました」
 ベッドの中に眠っている小さな男の子も見ての言葉だった。 
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