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久遠の神話

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第八十三話 権力者その一

                    久遠の神話
                 第八十三話  権力者
 聡美は連絡をしてから権藤の屋敷の門を叩いた、すると。
 最初に出て来たのは初老の執事だった、彼は聡美の姿を見てまずはこう言った。
「旦那様のお知り合いの方とのことですが」
「権藤さんからお話は」
「聞いています」
 執事は穏やかな微笑みと共に聡美に答えた。
「確かにそう仰っています」
「では」
「はい、それではどうぞ」
 執事はその微笑みで聡美に答える。
「どうぞ」
「わかりました、それでは」
「ただ」
 ここでだ、執事はこう言うのだった。
「大学生とのことですが」
「八条大学に通っています」
「旦那様の後輩になりますね」
 今彼が言うことはこのことだった。
「そうですね」
「ではあの方も」
「そうです、八条大学を卒業されてます」
 まさにそうだというのだ。
「法学部を」
「そうだったのですか」
「ですがご自身で企業を経営されています」
 八条大学出身だが八条グループの企業にはおらずそうしているというのだ。
「詳しいお話はですね」
「はい、権藤さんからですね」
「お会いしたいと仰っています」
 執事は聡美に権藤の言葉も告げた。
「ではどうぞ」
「はい、それでは」 
 こう話してそしてだった。
 聡美は屋敷の中を案内された、案内された場所は客室だった。紫の絨毯と黒檀のソファーとテーブルが置かれている部屋の中に入ると。
 既に権藤がいた、彼はクリーム色のスラックスに白いシャツ、赤いベストとネクタイという格好であった。
 その静かだが整った服でだ、聡美の前にいてだ。
 彼は案内役を務めてくれた執事にこう言った。
「ご苦労、ではこの人だが」
「はい」
「今度私に会いたいと申し出て来た時にはだ」
「こうしてですね」
「遠慮なく私の前に案内して欲しい」
 そうしてくれというのだ。
「是非な」
「わかりました、それでは」
 執事は彼の言葉に頷いた、そしてだった。
 そのうえでだ、権藤は執事にこう言った。
「ところでだ」
「はい、奥様ですね」
「妻は今もか」
「ご自身のお部屋でお子様と共におられます」
 そうしているというのだ。
「刺繍をされながら」
「そうか、孝之は寝ているか」
「そうされています」
「ならいい」
 そこまで聞いて権藤は安心した様子で頷いた、そのうえで言うのだった。
「なら私はだ」
「この方と今からですね」
「話をする、では下がってくれ」
「それでは」
 こう話してそしてだった、権藤は聡美と二人だけになった。二人はソファーに向かい合って座って執事が持ってきた紅茶を飲みながらだった。
 話をはじめる、その最初にだった。 
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