スーパーロボット大戦OGAnother
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一部「数奇なる騎士」
第07話「一撃の代償」
前書き
前回からどのくらい経ったでしょうか・・・
第7話です。
大変長らくお待たせしました。
一度データが全て消し飛び、復旧に長い時間がかかってしまいました。
申し訳ありません・・・・
そのためか、今回は短く感じる方もいらっしゃるかと思います。
それではどうぞ。
「グルンガスト零式…」
その存在感はライトにも緊張を強いた。
「出てきたか…」
キョウスケも目の色を変える。
それはステークを構えなおすアルトアイゼンが物語っていた。
「キョウスケ・ナンブか…」
ゼンガーもまた斬艦刀を構える。
二者の間だけではない、その周り、即ちアマテラス小隊にも重くのしかかる雰囲気が流れていた。
「…ナナ、ミナミとカチーナ中尉を連れてハガネまで退け。タカヤ、まだいけるな?」
ライトが機体を浮かせる。
「当たり前だろ?」
タカヤが返した。
「ちょっとまって!タカヤのゲシュペンストは」
「俺は、機体じゃなくてタカヤに聞いた、そしてタカヤは答えた。これで背中を預けることができる。」
ライトがミナミの言葉を遮る。
その口ぶりは、いつもより力強いものがあった。
「ちょっと待て!何であたしまで!?」
「機体状況から見るに、マシンガンの残弾も機体そのもののエネルギーも残り少ない。一度補給を受けて戦線に復帰してください。それと、うちの隊の二人を頼みます。」
ライトがそう言ってモニターだけを切る。
「おまっ!…ケッ、しゃーねえな!オイお前ら、ついて来い!」
「は、はい!」
「りょ、了解!」
三人はハガネへと撤退して行った。
「タカヤ、まずは機体状況を教えてくれ。」
ライトがビームソードでガーリオンを串刺しにしながら言った。
「右腕と左脚のサーボモーター、それから胸の装甲板はイカれてる。エネルギーもあと30%切ってる。」
タカヤがコンソールを見ながら告げる。
「…タカヤ、前にやった戦法を覚えているか?アレを応用する。」
ライトが平然として言う。
「応用ってったって…」
タカヤが少し困惑する。
「今回の相手からして撃墜はまず不可能だ。そこで、有効打を打って撤退させる。一撃で決めるのは前回同様だ。やれるな?」
ライトは再び確認を取る。
「…ヘッ、やってやらあ!呼吸はお前に合わせる!」
「よし、しかける。」
***
「…!!」
「…!」
無言のまま、一進一退の攻防を続けるキョウスケとゼンガー。
しかし
「(機体のバランスがズレた…)でぇぇぇえええい!!」
一瞬の隙を突き、ゼンガーが仕掛ける。
「くっ…!」
間一髪、ステークで受け流しつつ距離をとる。
しかし、その行為もゼンガーにとっては十分な隙。
「チェェストォォォォォォォ!!」
横薙ぎからすぐさま構え直し、踏み込みと共に上方から振り下ろされる一撃。
それは、距離をとったアルトを捕らえるにも十分に届く一撃。
「しまった…!」
体勢を立て直すキョウスケだったが、時既に遅し。
しかし、とっさに出した左腕だけが両断され直撃は免れる。
「ぐあっ…!」
それでも一撃が重いことに変わりはない。
アルトの機体は前のめりに倒れてしまった。
「やってくれる…」
コックピット内で呟くキョウスケ。
そこへ
「ぬ…?」
フォトンライフルによる威嚇射撃で、零式周辺に砂煙が立つ。
「ライトか…助かったぞ。」
キョウスケが機体を起こしつつ無線で告げる。
「自分だけではありません。少し見ていてください。」
ライトはそう言うと零式に接近し、チャクラムを発射した。
「ぬ…。」
ゼンガーは零式の左腕を射出してチャクラムを難なく交わす。
「未熟…」
ゼンガーが吐き捨てた。
「…どうかな。」
ライトは回避運動を取りながら呟いた。
「なに…!」
警報が鳴り響き、ゼンガーが背後を向いた。
「おおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
タカヤが、背後から高速で迫ってきた。
「くぅッ!」
ゼンガーは機体を反転させる。しかし、最大出力で突撃してくるPTに、反応速度での勝ち目はない。
「ぐああッ!ぐゥゥうおおおおおおおおおおおおおお!!」
途中、ゲシュペンストの右腕が弾け飛ぶ。
「なに!?あの機体…。」
タカヤは、それでも突撃をやめない。
ゼンガーは、確かな「気迫」を感じ取った。
「タカヤ…!」
キョウスケもまた、その気迫に突き動かされた。
***
右腕が弾け飛んだタカヤのゲシュペンスト。
今度は、その左脚が悲鳴を上げた。
「ぐ…ぐぐ…」
タカヤは歯を喰いしばった。
そうしている間にも、距離は詰まっていく。
「…くっ、左腕を射出したのは誤算だったか。」
ゼンガーが一人ごちた。
ゲシュペンストの内部では警報が鳴り響き、左脚から火が上がった。
「ぎ、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
タカヤは意を決し、ブースターペダルを踏んだ。
ゲシュペンストの機体は宙へ浮き上がる。
と共に、左脚が弾け飛んだ。
「チィッ!」
ゼンガーは諦めて回避運動に入った。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
タカヤはプラズマステークをこれまた最大出力で起動し、零式に殴りかかった。
その腕は…
グルンガスト零式の右腕を吹き飛ばした。
しかし、この一撃で全てを出し切ったのか、飛ばされた斬艦刀と同じ方向に吹っ飛び、機能を停止した。
「くっ、斬艦刀が…、!なに!?」
タカヤの一撃を受けきったのもつかの間、今度はリボルビングステークが零式の左腕を襲った。
「残念ながら、敵は二機ではない。それを忘れるな。」
キョウスケだ。
「ぬ…」
ゼンガーがグリップを握りなおす。
そのとき。
「ゼンガー少佐、撤退を。もう十分です。」
ゼンガーにリリー・ユンカースからの通信が入った。
「リリー中佐…、承知した。」
ゼンガーが答え、その巨体は引き上げていく。
「撤退か…」
ライトが呟く。
「追う必要は…、ないな。」
キョウスケも言った。
「自分はタカヤを。」
「わかった。」
会話を終え、ライトがグランバインを地上に下ろした。
「タカヤ、応答しろ、タカヤ。」
ライトが呼びかけるが、反応はない。
「タカヤ…」
ライトがグランバインを降り、大破したゲシュペンストに駆け寄る。
ゲシュペンストからはまだ火花が上がり、所々火を噴いている箇所もあった。
「……」
ライトが外部スイッチを押しても、反応はない。
強制排除スイッチも反応は見られなかった。
「やはり、電機系統は殆んどイカれているか。」
そういいながらライトは、電動ノコギリを取り出す。
「……」
ライトは無言でコックピットハッチを切り始める。
脆くなっていた部分も多く、切断は容易い。
5分かからないうちに切断が終わる。
ライトが思い切り一つ殴ると、ハッチの装甲板は剥がれる様に地面に落ちた。
「タカヤ。」
ライトが、無機質な声で呼びかける。
…やはり反応はない。
そのはずである。
タカヤは気を失っていた。
「…」
ライトは何も言わずにタカヤをコックピットから引きずり出し、背中に背負った。
「…すまない。」
ライトが、そっと呟いた。
***
「タカヤ!」
ヒリュウ改に戻ってすぐ、グランバインの元にミナミが駆け寄る。
「気を失っている。医務室まで運ぶ、手伝ってくれるか?」
ライトがタカヤを床に寝かせて言う。
「ライト…」
「…急ごう、出血するほど頭を強打している。早く処置をしないとまずい。」
ライトに言われ、ミナミがタカヤを見る。
応急処置で包帯が巻かれているものの、その包帯にすら血が滲んでいた。
「あ…あぁぁ…」
ミナミが崩れ落ちた。
このままタカヤが死ぬのではないか。
そんな思いがミナミを支配していった。
「ライト!タカヤくんは…!!」
ナナもやってきたが、状況を把握し切れていない。
「ナナ、ミナミを頼む。」
ライトはそう言って立ち去った。
「…うぅぅ…ぐぅ…ッ!」
ミナミが悲痛な嗚咽を零す。
ナナはただ、その弱り切った姿を見て抱きしめるのだった。
「…ッ…」
タカヤの眉が動き、表情が険しくなる。
「タカヤ?…タカヤ!タカヤ!!」
ミナミがその様子を見て、必死でタカヤの肩を叩く。
頭の傷口からは、まだ出血している。
血に染まって真っ赤になった包帯が、それを物語っていた。
「ミナミ!ナナ!」
リョウト、それからタスクが担架を持って現れた。
「リョウトさん、タスクさん…」
ナナが駆け寄った。
「!ミナミ、落ち着いて。今医務室へ運ぶから。」
リョウトがミナミを止め、タスクも駆け寄る。
「こいつは…、流石、あのグルンガストに一撃ぶち込んだだけのことはある。よっこらほいっと!」
タスクは一人でタカヤを持ち上げ、担架に乗せた。
「よし、リョウト!そっちを!」
「わかった。…それじゃあナナ…」
「はい、後は任せてください。」
ナナの返答を聞き、リョウトはうなずいて担架を運んでいった。
***
「……」
ライトは一人、ヒリュウ改の甲板にいた。
「……」
やはり、無言のまま、じっと、機体残骸の回収作業を見ていた。
「…ゲシュペンスト…」
ポツリ、とライトが呟く。
「ここにいたのか…」
「…」
「シラヌイ。」
アダムだ。
「…タカヤの容態は?」
「ああ、出血は止まったし、手首の捻挫と各部の打撲だけで、一週間もすれば復帰できるそうなんだが…」
「乗る機体がない、と?」
ライトが言った。
「その通りだな。少なくともヒリュウには…」
アダムが苦笑する。
「…自分はまた」
「ん?」
「自分はまた、タカヤに無理を強いたのかもしれません。」
ライトは無機質に、それでいてどこか悲しそうに告げた。
「…無理を強いたのは、お前じゃなくこの戦いだ。だから、私にお前を責める資格はない。」
アダムが言う。
「確かに、今回のことがベストな選択かと問われれば、私はNOと言う。しかし、通信を聞いていた限り、ハスナカをもう一度、本当の意味で奮起させたのはお前だ。そのことは、誇ってもいい…それを忘れるな。」
アダムがライトの背中を叩いた。
「……」
ライトの口元が、数ミリ動いた。
***
「…っは!」
タカヤの意識は、今度は現実で覚醒した。
「あ…、ぅ、ああぁ…いててて…」
タカヤは頭を抱える。
「ん?気がついたのね。」
ラーダがベッドに歩み寄った。
「…ラー…ダさん…、あれ、俺…死んでなかったのか…」
「何言ってるのよ、ライトがヒリュウまで運んでくれたのよ?」
ラーダが笑った。
「ライトが?…じゃあ、俺のゲシュペンストは?」
タカヤが上半身を起こす。
「…さっき連絡があったけど、とても艦では修理できないそうよ…」
「そんな…」
タカヤが俯いた。
「そう気を落とさないで…、今は怪我を治すことに専念しましょう?」
ラーダはそう言って席を立った。
「……また、俺は…」
タカヤは、またベッドに身体を寝かせて、そう一人ごちた。
後書き
第7話、ご覧いただきありがとうございました。
自分でも今回は、まさか序盤からあんなこと(データ消し飛び)になるとは思ってもみませんでした。
などと、言い訳がましくなるのもいけませんね。
さて今回はタカヤ負傷とゲシュペンスト大破と、踏んだり蹴ったりなタカヤくんでしたが、次回は・・・?
というわけで次回もお楽しみに!
ページ上へ戻る