とある英雄の学園生活
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第27話 悲しみのアリス
ネイとの食事は疲れた。
ネイとアリスは俺の両脇に座り何かと構ってきた。
アリスを立てればネイがすね、ネイを立てればアリスがすねてと……
アリスはともかくネイはいい年なんだから甘えるなよと言いたかったが、
先ほどの件で負い目がある俺は何も言えなかった。
そして俺達をニャニャと笑いながら見る魔人2人。
イフリートはたまにネイとアリスにちょっかいをかけて楽しんでいた。
シヴァは……なにも言うまい。
とにかく疲れたのだが、それでも楽しい食事だった。
食事が終わり歩いて屋敷に戻ろうとすると何故かネイも一緒についてこようとしたのだが、部下のダークエルフ3人に止められ、市長としての仕事があると言われ連れて行かれた。
連れて行かれるさいに
「また、明日ね〜」
明日?なんで明日なんだ?
朝の校門前で挨拶でもするのか?それともなにかあるのか?
うむ、明日になれば分かることだから気にしないでいよう。
屋敷に戻る途中シヴァが市場で買い物があるのでと言いったので、
俺たちも一緒に行こうかと言ったが、
シヴァ1人で大丈夫と言われ、1人市場の方に向かった。
なので今はアリスを真ん中に右側は俺で左側がイフリートで3人並んで手をつないで歩いている。
最初はアリスと俺で手をつないで歩いていたのだが、イフリートも手をつなぎたいと言い、俺の手を握るのかと思いきやアリスの空いている手を握り歩き出した。
俺がなんで?と目でアイコンタクトすると
なんとなくと笑顔でアイコンタクトをした。
アリスはイフリートに手を握られたことに驚いたが、
すぐに笑顔になりイフリートの手を握り締め、腕を振りながら歩いた。
とても姫様と護衛とメイドには見えないだろうな。
でもいいと思う。これが俺たちの関係なのだから。
15分ほど歩き屋敷が見えてきた。
見ると門の前には2台の馬車と7台の荷馬車が並んでいた。
「キラ、あれなんだろう?」
「ん……」
よく見ると屋敷から荷物が運び出されている。
「どういうことだ、イフリート何か聞いているか」
「何も聞いてないわ」
「アリスもわかんない」
2人は何も知らないみたいだ。
とにかく門の前にいる兵士に聞くか。
「これはなんの騒ぎだ」
「あ、お帰りなさいませ、これは、エルシード様とセイラ様のお荷物を運び出しているところです」
「はあ?」
「エルシード様とセイラ様はクリスティーナ王女のお屋敷に移り住むのでそれで荷物を運び出しているところですが、それが何か?」
なんじゃそれ。
聞いていないぞ、
「あのう、聞いていなかったのでしょうか」
「聞くもなにも、俺たちは未だに他の王女と会っていないのだが」
「え!」
門番の兵士はビックリしている。
そうなのだ、俺たちは未だに他の王女と会っていないのだ。
学園都市にきた翌日、第1王女が住む屋敷に挨拶に行ったのだが、出かけていると言われ、帰ってくる時間を聞いたのだがわからないと言われ、その日は諦めて帰り、翌日のお昼頃にもう一度訪ねたのだが、やはり留守で、前日と同じく帰ってくる時間はわからないと言われたので、そちらの都合のいい時間にお尋ねするのでその時間を教えて欲しいと門番に伝言を頼んだのだが。
「お姉さまたちはやっぱり、アリスと一緒にいるのが嫌なのかな」
先程まで笑顔だったアリスはかなり落ち込んでいる。
「……」
アリスは、姉姫たちと会うことを楽しみにしていたんだぞ。
昔1度だけ会ったことがあると言っていたが、
その時は挨拶しかしていないそうだ。
イングランドを出国する準備で忙しい時に時間を作り俺と一緒に街に出て姉姫たちに渡すプレゼントも用意していたのに
それを……
それを……!!
よくも! よくも! アリスに悲しい顔をさせたな!
ゆるさん!
「イフリート、すまないがアリスと一緒に屋敷に戻っててくれ」
「行くの?」
「ああ、途中でシヴァと合流してから行ってくる」
「わかったわ」
俺はアリスの頭をなでる。
「ちょっと、散歩に行ってくるから、イフリートと仲良く留守番しとくんだぞ」
「え、キラもどこか行っちゃうの」
アリスはギュッと俺の服の裾を握る。
「すぐに帰ってくるから、少しだけ待っててくれ」
「……うん」
不安そうなアリスに
「お土産に可愛らしいヌイグルミでも買ってくるから、いい子でいるんだぞ」
「うん」
俺はもう一度アリスの頭をなで、イフリートを見て頷く。
イフリートも俺を見て頷く。
俺は第1王女たちが住む屋敷に向かった。
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