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鉄槌と清風

作者:deburu
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7部分:7:必殺ザフィーラ固め


7:必殺ザフィーラ固め

 結果から言えば…ランニングには間に合ったものの、寝不足と魔力を初めて使った事によるダブルの疲れで、顔色が悪いから今日は休んでおけと、恭也にいわれ、体も確かにだるいので結局ランニングは休んだ。
 で、少しでも体動かすために、軽い柔軟だけは、と思って庭でやってたら、連絡を受けていたのか、桃子さんが着て、直ぐに止められて高町家のリビングに拉致され、椅子に座らされた。
 士郎さん、曰く…「疲れがちゃんと取れて無い時に無理をすると、体を壊す」…だ、そうだ。
 結局午前中は、朝食を食べた後、少し眠って、午後何時もと同じ位の時間に、飲み物と、おやつとして翠屋のシュークリームを分けてもらって公園へ。




 待機モードのゼピュロスを首にさげ、何時もの場所で、いつもの用に修行を始める。
 ただ、今日は柔軟を朝して無いので、此処で時間を多めに取って柔軟から入り、基礎の『弾き』と『捌き』を暫く黙々と繰り返す…体がしっかり暖まった所で、枝から吊るした木材を、揺らし始め、『凪』の練習に入る。

 「…すぅー…はぁ…」

 心を沈め、自分の周りに球を思い浮かべる…魔法で行った『凪』あれをイメージする。

 「はっ…っ!」

 球を抜けたものから、『弾き』…『捌く』…昨日よりも判る、目耳だけじゃなく、もっと別な感覚、言葉にしづらいが、第六巻のようなものだろうか、其れで判る…が、それに動きが付いてこない。
 気付けても『弾き』きれず、『捌き』きれない…結果、こーんっ、と良い音を立て、後頭部に木材が当たる。

 「うーん…今の所イメージできるのが、自分の手の届く範囲だから…気付いてからの時間が短いのと、動きに無駄があるって事なのか…?」

 自分で、自分を評価するのは難しい…そもそも、自分の動きが客観的に見れないから余計だ。
 良彦の年齢…9歳…を考えれば、そもそも『制空圏』をイメージできるだけでも十分、体が出来上がっておらず技個々の練りもまだまだなのだ。
 それを指摘してくれる師がおらず、誰かに頼らない事で、少しの歪みができてしまっているのだ。




 そして、昨日と同じようにそれを見ている者達もいた…赤い髪の少女、ヴィータと、青い大型犬(狼)、ザフィーラ。

 「なぁ、ザフィーラ…アイツの動き昨日よりかなりよくなって無いか?」

 「(体の動きはあまり変わらないが…確かに、感知する精度があがっているようだ、それに…)」

 「それになんだよ?」

 「(極わずかだが、拳に風がまとわり付いている…昨日はそんな事は無かったと思うが)」

 「マジか?……ほんとだ、少しだけど殴るのと同時に風が動いてやがる」

 「(それに、魔力も強く感じられる、昨日は微弱だったが)」

 「はぁ?…って、昨日も微弱ながらあったのか?」

 「(気付いてなかったのか?)」

 「んなもん、蒐集もしてねーのに気にしねーっての!」

 「(……というよりも、あの少年が気になって、気付かなかったのではないか?)」

 「な、んなわけねーだろっ!」

 思わず声がでかくなるヴィータ…そして、昨日の繰り返しのように、声に気付いた良彦の視線とヴィータの視線が合わさる。

 「あーっ、昨日の暴力女っ!」

 「誰が暴力女だ、ヴィータって名乗っただろ、この木材頭突きやろー!」

 「好きで後頭部で頭突きしてねーよ、それに俺は良彦だ、八坂良彦っ」

 がーっとお互いががなりあい、又顔を近づけて行く…その二人の間に大きな体を入れ、少し引き離すのは青い大型犬(狼)ザフィーラ。

 「(落ち着けヴィータ、何故いきなり其処まで熱くなる)」

 「(だってよ、なんかこいつ…こう、乗りやすいって言うか?)」

 「って、なんだわんこ…やめろってか?」

 間に入ったザフィーラに気を取られ、一旦落ち着く良彦…それを静かに見つめるザフィーラ。

 「判った、わんこに免じて落ち着こう」

 「わんこじゃねーよ、ザフィーラって名前があるんだこいつには」

 「そうかー、ザフィーラよろしくな」

 大型犬に恐怖もないのか、ザフィーラの頭をなでる良彦。

 「もふもふだな、この時期暑そうだけど」

 「はっ、ザフィーラはそんな弱くねーし、落ち着いてんだよ」

 「あぁ、確かにヴィータに比べたら、天と地ほど落ち着きが違うなー」

 「はぁん、あたしが落ち着いて無いってのか?」

 「落ち着いてる奴は、直ぐ突っかかってこねーよっ!」

 「よーし、判った…てめえはあたしに喧嘩うってるんだな」

 「そりゃこっちの台詞だ、やんのか?」

 「上等、ぶちのめしt、「「へぶっ」」

 再び顔を近づけ、一触即発になった瞬間…ヴィータと良彦の頭にザフィーラの前足が叩きつけられる。

 「いってーな、ザフィーラ何すんだよ!」

 「(先ほどもったが落ち着け)」

 「ってー…犬に静止食らったのは初めてだ、賢いな」

 と、おかしな感心をする良彦、そして…

 「はぁ、なんか疲れた…ヴィータとザフィーラだっけ、一寸待ってろよ」

 「あ、あぁ」

 たたたと、木陰に走って行き持ってきたのは小型のクーラーボックス。

 「休憩すッから一寸付き合えよ」

 「まぁ、別にかまわねーけど」

 クーラーボックスから、取り出すのはあまり冷えてないスポーツドリンクと、翠屋のシュークリーム。

 「ほいよ、良かったらどうぞ…んっ、ぷぁぁ」

 スポーツドリンクを一気にのみつつ、シュークリームを差し出す。

 「くれるっつーなら貰うけどよ、いきなりなんでだ?」

 「昨日ヴィータが耳を使えって、最後言ったじゃねーか、あれで今してる修行が少し進んだんだよ、その礼だ」

 「そんな事言ったか?」

 「(たしかに去り際にいっていたな)」

 「覚えてねーのかよ、じゃぁシュークリーム返せっ」

 「はっ、一度もらったもんは、かえさねーっつの」

 はむっと、食べ始めるヴィータ…次の瞬間…

 「なんだこれ、ギガうまじゃねーかっ!」

 はむはむっと、一気に食いきり…良彦がまだ食べていないシュークリームに視線が釘付けになる。

 「そうだろう、これは翠屋っていう喫茶店の大人気シュークリームだから…な…?」

 視線に気付き、なぜか差し出さねば危険という感覚を抱き。

 「…く、食うか?」

 恐る恐る差し出すと、

 「食う、あんがとな良彦っ」

 と、嬉しそうに笑いながら、奪うように受け取って、あっという間に食べ切ってしまうヴィータ。

 「あ、あぁ…てか、食うのはや、とらねーからゆっくり食えよ!(…笑顔、かわいーじゃねーか、ちきしょー)」

 「美味いんだから仕方ねーだろっ、とまんねーんだって」

 「つか、口、クリームついてんぞ」

 持っていたタオルでクリームをふき取り。

 「おぅ、さんきゅーなっ、ってなにしてんだっ!」

 「クリームふき取ったんだが?」

 「何で、てめえがすんだよ、良彦!」

 「…まずかったか……はっ、まさか、そのクリームまで舐めたかったとか!」

 「ちげーよっ、他人に拭いてもらうと恥ずかしいだろうがっ!」

 「気にするな、俺は大丈夫だ、ちびっ子相手だしな」

 「誰がちびっ子だ、てめえだって、身長そんなちがわねーだろ!」

 一瞬の静止…

 「ヴィータ、お前は言ってはいけないことを言ったっ!」

 「良彦、てめえこそ、わかってんだろうな?」

 そして、対峙…しようとした瞬間、ばしばしっと、叩く音が響き、立とうとしていた二人がバランスを崩し地面に転がると、その上にザフィーラがいい加減にしろとばかり、乗りかかる。

 「(本当におかしいぞ、ヴィータ…何時も以上に激しやすい)」

 「ちょ、どけザフィーラ、重いっ」

 「うぉぉ、どいてくれザフィーラ、俺はヴィータに怒りの一撃をいれねばーっ」

 二人はじたばたと暴れるが、暑さに加えザフィーラの毛皮による加熱で、段々と動きが鈍くなり。

 「おーけい、ざふぃーら…おねがいだから、どいてください、けんかはしません」

 「あっちー、もう無理だざふぃーら、どいてくれ」

 と、降参宣言をきいて、のそりっと二人の上からようやく動くザフィーラ。

 「うぁー…暑い……確かアイスの屋台があた、け…かな、いくかな」

 「まて、あたしもいく…この暑さじゃ…アイスでもくわねーとやってらんね」

 「おー…んじゃ、いくか」

 のそりと動き出す二人、その後を歩く大型犬…だが、アイスの屋台で…注文がかぶり、しかもそれが最後の一個だったため、アイス争奪戦が勃発…しそうになった所を、再びザフィーラ蒸しにされる事を二人はまだ知らない。

 「(こちらも、中々暑いのだがな、これは)」

 と、ザフィーラも思っていたとか、いないとか。
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今回はほぼ、ヴィータとの会話回でした。
次回は、他の守護騎士や、はやてなどもだしてみたいですね。
 
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