少年少女の戦極時代
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第74話 ライダーズ・オン・ステージ ③
月花は戦いの最中にあってさえ感動していた。
ヘキサが光実と二人で踊っている。兄妹が手を取り合って最前列で、まるでバレェのように。
初めての時は失敗したコラボレーション・ダンス。それが今日、ここで、実現した。
(ヘキサがずっとやりたかったこと。お兄さんのミッチくんといっしょに踊ること。これを最後までやり通させてあげなきゃ)
ステージに向かおうとするインベスを、片っ端からDFバトンで叩き返す。その中の一体のインベスが客の近くに倒れたことで観客の列が割れた。
「ゲッ」
『あー!』
割れた列の後ろから出てきたメガネの男。これが誰かを知らない月花ではない。
月花は回れ右をして、BGMに負けない大声で叫んだ。
『チームインヴィットさーん! リーダーの城乃内サンここにいますよー!』
「うわこら! 何てこと…っ」
わっ、と駆けつけたインヴィットの女子たちが、すばやく城乃内を取り囲んだ。
わいのわいのと城乃内をインヴィットのステージに連行するマゼンタカラーの女子たち。何のかんのと、ステージに上げられるとダンサーの血が騒ぐのか、踊り始めた城乃内。
月花はそれを見届け、ナックルの援護に走った。 月花はナックルの前にいたインベスにドロップキックを食らわせて着地する。
『ぶじ?』
『この程度で泣き言なんか吐けるか』
『よかった。アッチ押さえたから、もうインベス増えないよ』
『……お前ってサイッコーのクソチビだ』
インベスが月花とナックルに飛びかかってくる。月花はDFロッドで、ナックルは巨拳で返り討ちにした。
すると今度は下級インベスではなく、セイリュウインベスが現れた。
まずい、と月花は思う。このインベスは確か火を吐く種類だったはずだ。
(DFボムで相殺する? だめ、それじゃ後ろで踊ってるヘキサや舞さんたちもあぶない)
セイリュウインベスがカッと口を開く。
だがセイリュウインベスが火を噴くことはなかった。セイリュウインベスの口を塞ぐように白い槍を横薙ぎにした者がいたのだ。
それはバナナの鎧をまとった、赤い騎士だった。
『戦いはまだまだのようだな』
『戒斗!?』
『何でっ? ビートライダーズ抜けたって』
バロンはバナスピアを振り抜き、月花とナックルの横まで下がってきた。
『室井。葛葉のほうへ行け。ここは俺とこいつで十分だ』
『わ、わかった』
月花はバロンとナックルから離れて、ブラーボと戦う鎧武の下へ急行した。
鎧武は戦極ドライバーを何かいじっている。新しいアームズかもしれない。卑怯にもブラーボが武器を投げて邪魔しようとしたので、月花はDFロッドを外してバトンにして投げた。バトンがブラーボの武器にぶつかり、弾き返す。
《 ロックオン・ミックス ジンバーレモン 》
同時に、鎧武のアームズチェンジが終わった。今までに見たことのない、陣羽織を着た武将のようなデザインだ。
『サンキュー、咲ちゃんっ』
鎧武は月花に礼を言ってからブラーボへ向かっていった。相変わらず律儀な人だ。そして、相変わらず彼の背中は頼もしい。
(って感心してる場合じゃない。紘汰くんのフォローしなきゃ)
鎧武とブラーボは少ない観客の列を割って広場から離れて行く。月花も彼らの後を追おうとして――
『ひゃあ!』
顔面から盛大に前に転んだ。背中にセイリュウインベスがぶつかったのだ。
『スマン! 加減間違えた!』
後ろから飛んでくるナックルの謝罪。月花も変身したての頃はそうだったからよく分かるが、何もこんなタイミングで。
ぶつかったことで敵意が移ったのか、セイリュウインベスは月花に牙を剥いた。
月花はドラゴンフルーツの錠前を外し、パッションフルーツの錠前をバックルに嵌めてカッティングブレードを拳で叩き落とした。
後書き
サクッと城乃内を見つけて売っちゃう咲。拙作は舞台を芝生広場=見通しがいい場所に移したので、城乃内にはそんなに多くないけど少なくもない観客に紛れて隠れていたことにしました。
どの作品であっても地味なとこで活躍するのが拙宅のオリ主です。←例)城乃内確保
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