少年少女の戦極時代
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第73話 ライダーズ・オン・ステージ ②
『紘汰くん!』
『おう!』
『『おおおおおおおおッッ!!』』
月花と鎧武、二人がかりでブラーボに体当たりし、ブラーボを地面に押し倒して押さえつけた。
『ちょ、どきなさいよ!』
『今だ、舞! 踊れ!』
『ヘキサ、お願い――あたしたちの分も!』
舞が、ヘキサが、肯き返してくれた。
改めてチーム鎧武とチームバロンが、前奏のポーズを決め直した時だった。後ろに舞台代わりにかけていた幕が落ちた。
幕の向こうは、黄、マゼンタ、空色、白、黒――様々な色で彩られていた。
今まで誘いをかけたチームだけではない、何組かは自主参加のチームだ。
今や芝生広場の半分はビートライダーズで埋め尽くされていた。
「俺たちも一緒に!」
「黙ってられるわけないじゃないっ」
「みんな――よおっし! 踊ろう!」
舞の一声に合わせたかのように、SEが入る。チームそれぞれが一斉にポーズを決めた。
一瞬の静寂。そしてスピーカーから流れ出す音楽。
ビートライダーズのオールスターステージが、ここに幕を上げた。
光実はチーム鎧武の即席ステージで、舞たちと共にダンスを披露していた。
(紘汰さんが「任せろ」って言ったからステージに立ったけど、本当にこれでよかったのか? 今からでも変身して、紘汰さんや咲ちゃんの援護をすべきじゃないのか?)
音楽がやんだのは、そんな光実の迷いを読んだかのようなタイミングだった。
――彼は知らない。城乃内がスピーカーからプレイヤーズパスを抜き、音楽を止めたことを。
いくら彼らがダンスの才に長けていても、バックミュージックなしには踊れない。ビートライダーズの間に気まずい空気が流れ始める――
「音楽ならあります!!」
飛び出したのはリトルスターマインの一人――碧沙だった。
「碧沙…!?」
「兄さん、手伝ってっ」
チーム鎧武のステージまで来た碧沙は、光実の手を取ってスピーカーへ走った。妹のもう片方の手にはCDラジカセ。
(そうか! ラジカセの音楽をスピーカーでボリューム上げして流せば)
碧沙がCDの曲を今回のものに合わせる間に、光実はコードをラジカセとスピーカーに繋ぎ、ボリュームを調整した。
やがて停まった音楽と同じ音楽がスピーカーから溢れ出した。ビートライダーズが歓喜に沸く。
「踊ろ、兄さん」
ヘキサが手を差し出す。
光実が初めて見る妹の顔がそこにはあった。これがリトルスターマインとしての、「ヘキサ」としての顔。
兄妹ではなく、同じくダンスを愛する者の、ダンサーの貌。
「うん――みんな! 踊りましょう!」
光実はヘキサの手を取った。――迷いは振り切った。今はダンスこそ呉島光実の戦場だ。
若者たちは再び踊り始める。
サウンドに合わせ、チームごとに己の色のステップを踏む。
彼らはビートライダーズ。刻むビートにその身を乗せて舞い踊る少年少女。
後書き
自分でもCDラジカセがこんな形で活躍するとは思っていませんでした。偶然の女神とウロブッチーに感謝<(_ _)> おかげさまで光実とヘキサを自然な形でペアダンスに持ち込めました<(_ _)>
いやーここは本当に熱い展開でした。ベタだと分かっていても泣いてしまいました。おかえりビートライダーズ!!(ちょっとフライングですが///)
原作通りだとちょっと寂しいので、ランキング外な有象無象のチームにも来てもらいました。せっかく会場が広い設定にしたので思いっきりやってもらいました。ユグドラシル・タワーのおひざ元なので、窓際の社員はびっくりして下を見下ろし仕事が進まなかったでしょうww
ページ上へ戻る