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万華鏡

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第五十四話 音楽喫茶その十

「けれどね、漁網とかを引っ掛けるとね」
「怖いんですね」
「ベンツに当てるよりも」
「生活がかかっているだけにね」
 このことは紛れもない事実だ、人は生活がかかっていればそれで人格が変わるし意固地にもなるものだ。
「もう必死だから」
「それで、ですか」
「漁師さんはですね」
「自衛隊なんか敵じゃないから」 
 自衛隊はむしろ絶対に逆らえないのだ。
「自衛隊が相手にするのは外敵だからね」
「あとテロリストもですよね」
「国内にいる」
「そっちは微妙なところがあるわね」
 法整備等の問題で対処しきれていないところがあるのは事実だ、カルト教団のテロリストが問題になった国であるが。
「あと災害ね」
「特に地震ですよね」
「台風もですね」
「海自さんと空自さんは台風からは逃げるわよ」
 船や飛行機が巻き込まれては大変なことになるからだ、この二つの自衛隊は台風からは逃げるだけである。
「陸自さんは向かって行くけれどね」
「陸自さんだけ貧乏くじですね」
「海自さんと空自さんは逃げるのに」
 プラネッツの五人もこう解釈した、実際にそう解釈されても仕方のないことだ。
「酷い話ですよね」
「ちょっとあんまりなんじゃ」
「まあそうかもね」
 先生もこのことは否定しなかった、江田島への合宿に行った身であるが。
「その辺りはね」
「海自さんって見栄えとか凄いですけれど」
「制服滅茶苦茶手入れされてますけれど」
 アイロンは絶対だ、皺一つもダブルラインも許されない。埃一つついてもアウトとされる程である。靴も磨かれている。
「何か陸自さんの方が大変ですね」
「それによく考えたら海軍の誇らしい話ばかりしてましたし」
「ひょっとして陸自さんの方がいいとか」
「そうなんですか?」
「まあうちの学園っていうか八条グループは海軍と縁が深かったから」
 その縁でだというのだ。
「江田島なのよ」
「ううん、陸自さんじゃなくてですか」
「海自さんですか」
「あそこではそういうことは表立っては話さないからね」
 漁師達の怖さ、そうしたことはというのだ。
「水産科ではちょこちょこ出るわよ」
「やっぱり現場に近いからですね」
「だからですね」
「現実は違うのよ」
 学校で勉強していることとはだ、先生は教師として五人にこのことも話すのだった。
「怖いからね」
「そうしたこともある位ですね」
「怖いものなんですね」
「そう、農業でもね」
 こちらでもだというのだ。
「怖い話があるから」
「漁師さんみたいなですか」
「そうしたお話が」
「自然が相手だしね、盗みに来る奴もいるから」
 世の中そうした悪者もいる、そうした相手には容赦は無用だからだ。
「捕まえたら袋叩き位は覚悟しないとね」
「ううん、農家も怖いんですね」
「そうした時は」
「ええ、ただ漁師さんの方が怖いかもね」
 こちらの方がより、というのだ。
「だって海は板一枚の下は地獄だから」
「陸地以上の命懸けの世界だから」
「余計になんですね」
「だから酒瓶で頭を殴られるのよ」
 再びこの話になる。 
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