戦国異伝
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第百五十二話 近江平定その四
「そこから門徒達に暴れられていたわ」
「しかし城は陥ちていませぬ」
「では」
「近江も勝ったわ」
森も生きていた、そしてだというのだ。
「今から城を攻めている者達を蹴散らすぞ」
「それでは今より」
「共に」
加藤も福島も応える、そしてだった。
彼等は歓声を挙げて宇佐山城に向かった、柴田は将兵達に対して持ち前の大声でこう叫んだのだった。
「さあ、かかるぞ!」
「そしてですな」
「そのうえで」
「そうじゃ、城を囲む門徒達を蹴散らせ」
まさにそうしろというのだ。
「わかったな」
「はい、わかりました」
「では今より」
「与三殿はご無事じゃ」
城はまだ陥ちていない、だからだ。
「何よりじゃ」
「やはり与三殿がおられると違いますな」
「それだけで」
「全く違うわ」
それだけでだというのだ、森がいるだけで。
「あ奴がいればな」
「そうですな、まさに」
「あの方がおられれば当家は違います」
平手程ではないが織田家の古老だ、柴田も一目置く程に。
だからだ、彼もこう言うのだ。
「それだけに失ってはならんかったわ」
「間に合って何よりでしたな」
「急いだかいがありました」
「ではじゃ」
それではとだ、柴田は満面の笑みで己が率いる将兵に問うた。
「わしが今から言う言葉はわかるな」
「はい、ではお願いします」
「その言葉を仰って下さい」
「うむ」
柴田は彼等に応えそうしてだった。
高らかにだ、こう彼等に命じた。
「では掛かれ!」
「はい、それでは!」
「今より!」
皆柴田の言葉に応える、そして。
城を囲む門徒達の軍勢に勢いよく襲い掛かる、それは当然ながら柴田達だけでなく。
織田家の諸将がだった、皆門徒達を果敢に攻める。
普段は物静かな丹羽もだ、抜いた刀を手に馬上で言う。
「よいな、ではじゃ」
「はい、城を囲む門徒達を倒し」
「与三殿を」
「連日連夜の戦でお疲れと聞く」
それでだというのだ。
「早くお助けしてじゃ」
「休んでもらいますか」
「是非」
「うむ、しかし門徒達じゃが」
今戦っている彼等のことはというと。
「殿が仰っておられるな」
「はい、武器を捨てて降る者はですな」
「決して斬るなと」
「女子供でも武器を持っているなら斬る」
その場合は容赦しない、信長はそうした男だ。
しかし武器を捨てるならば許す、信長はそういう男でもあるのだ。
だからだ、今もなのだ。
「しかし逃げる者は追うな」
「それぞれの田畑に帰させて」
「そのうえで働いてもらいますか」
「そうじゃ、あの者達は元々百姓じゃ」
彼等が守るべき者達だというのだ。
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