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久遠の神話

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第八十話 残る四人その十一

 怪物を上から一閃した、それで全ては終わった。
 怪物は真っ二つになり地に落ちて金塊に変わった。上城はその金塊達の下に降りて樹里にこう言った。
「空を飛べるとね」
「全く違うわね」
「うん、このことは大きいよ」
「空を飛ぶ怪物にもこれからは」
「戦えるよ」
 無事にだというのだ。
「今みたいにね」
「空を飛べる怪物が手強い理由は」
「相手は空を飛べるけれどね」
 だがこちらは飛べない、それでなのだ。
「こっちはだから」
「そうよね、そのせいでよね」
「空を飛ぶ怪物は厄介なんだ」
「けれどこちらも飛べたら」
「どうということはないよ」
 同じ土俵に上がればだ、それでだというのだ。
「そういうことだからね」
「これからはよね」
「うん、無事に戦えてね」
「勝てるわね」
「これまで以上にね」
 そう出来るというのだ。
「それが出来るよ」
「そうよね」
「これでまた僕は経験を積めたよ」
 剣士としてのそれがだというのだ。
「そして強くなった力で」
「戦いを止めるのね」
「終わらせるよ」
 止めるだけでなくだ、そうするというのだ。
「絶対にね」
「そうなのね」
「そう、そうするよ」
 樹里に対して微笑んで述べる、そのうえで金塊を手にしてだった。
 彼は去ろうとした、樹里もその彼と共に。
 しかしだ、その前に。
 上城の前に加藤が出て来た、そしてだった。
 その彼がだ、上城にこう言って来たのだ。
「丁度いいな、剣は抜いたままか」
「加藤さんですか」
「暫く振りだな」
「そうですね、貴方がここに来られた理由は」
「戦いの臭いを嗅ぎ付けたからな」
 だからここに来たというのだ。
「今こうしてな」
「じゃあ僕の今の闘いのことに気付いて」
「戦いには匂いがある」
 そしてその匂いはどういったものかとだ、加藤は語った。
「火薬の匂いにも似たいい匂いだ」
「それでここに来られてですか」
「俺はここに来た」
 そしてだとだ、こう話してだった。
 加藤もまた剣を出した、そして言うのだった。
「はじめるか」
「今からですか」
「逃げたければ逃げればいい」
 加藤は己の剣を構えた、そのうえでまだ剣を手にしている上城に対して告げる。
「俺は逃げる相手と闘うことはない」
「そうですか」
「そうだ、それでどうする」
 あらためてだ、加藤は上城に問うた。
「貴様は」
「僕は戦いを止める為に戦っています」
 上城は加藤を見返した、そのうえで彼に返した。
「ですから」
「俺と戦ってそうしてか」
「貴方も止めます」
「生憎だが俺は他の奴とは違う」
 他の剣士、特に戦いを降りた者達とはというのだ。 
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