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不老不死の暴君

作者:kuraisu
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第二十六話 水面下の情勢

「ダラン爺になにか用があるのですか?」

ダランに会いたいと言うアーシェにセアは疑問をぶつけた。

「いえ、ですが王墓に王家の証があることを知っていた人です。破魔石についてもなにかご存知ではと」
「・・・確かに聞いてみる価値はありますか」

セアはバルフレアに話しかけた。

「旅の準備は俺と王女様抜きでやっていてくれないか?」
「ああ」

バルフレアが了承し、セアがバザーから離れようとするとバッシュが話しかけてきた。

「君もガリフの里に行くのか?」
「ああ。馬鹿弟子とその友達が心配なので」
「・・・君は面倒事が嫌いだとおもっていたのだが」
「ああ、そうだよ。普段ならヴァンを無理やりにでも止めるだろうな」
「なら何故だ?」
「明確な理由はないが好奇心と言っておこう」

セアはそう言うとアーシェを連れてダウンタウンの方へ歩いていった。
ダウンタウンは元は下層部分にあった倉庫で、2年前の戦争で帝国の市民権を持たないダルマスカ人はこの下層部分に転居させられた。
そんなダウンタウンの入り口付近に住んでいる変なじいさんがいる。
そのじいさんこそものしりのダラン爺である。
セアがダランの家に入るとダランが声をかけてきた。

「おお、セア。一体何処に行っておったんじゃ?」
「ちょっとヴァンたちと一緒に覇王の墓を荒らしてきた」
「ほほう。つい最近王宮の宝物庫から宝を盗み出しおったと思えば今度は覇王の遺産でも盗み出しおったか?」
「・・・一応」

セアは苦笑しながらそう答えた
あの魔人が一応遺産だから盗んだといえば盗んだいえるのだが・・・
セアの答えにダランは軽く笑い、アーシェの方に目線を向けた。

「それで、そちらの女性は誰じゃ?」
「ああ、前に説明した王女様だ」
「アーシェ王女か・・・して、この老いぼれになんのようかの?」

ダランがアーシェに問うとアーシェは偽らず答えた。

「あなたは破魔石というものをご存知ですか?」
「破魔石・・・」

ダランは首を捻って唸っていたが少しすると顔をあげ、アーシェの方を見た。

「破魔石か・・・確か覇王と破魔石に関する伝説があったのう」
「それは?」
「【かつてレイスウォールは神に認められ、剣を授かり、己に与えられた試練を耐え、破魔石によって乱世を平らげた】」
「「・・・?」」

ダランの語った伝説の無いようが理解できず、首を傾げた。
その様子を見てダランも黙り込む。

「意味がわからないな・・・」
「ええ・・・」

アーシェとセアはそういうとダランが

「破魔石に関する伝説はかなり古い書物にしか書かれておらんからの・・・そしてそれらに書かれているのも信憑性があまりない」
「どうしですか?」
「何故なら破魔石に関する話になると必ずと言ってもいいほど【神】という存在が出て、それを誰かに授けたという話しかないのじゃ」
「神・・・か」
「どうしたセア?」
「いや、そういえば覇王も神々に愛されたとか伝説で語られていたなと思ってな」
「そういえばそうじゃのう」
「ところで話が変わるがなんで王家の証が王墓にあるってしってたんだ?」
「書物を読み漁っていたらでてきただけじゃよ」
「さすがだな」
「だてにものしりを名のっとらんよ」

そういうとダランは少し真剣な声で話しかける。

「破魔石のことはひとまずおいといて、今の情勢をお前達は知っておるか?」

ダランの言葉にセアもアーシェもひとまず破魔石について考えるのをやめる。
そしてアーシェが切り出した。

「なにかあったのですか?」
「西のヤクトで西方総軍の第8艦隊が全滅したという話はしっとるか?」

ダランの問いにセアとアーシェは首を縦に振る。

「帝国の発表によれば【事故】らしいがの・・・まぁ、それはおいとくとして、そのせいでヴェインが帝都へと帰った」
「なんでだ?」
「元老院から西方総軍司令としての責任を問われてな」
「相変わらずアルケイディアはソリドール家と元老院の仲が悪いな」

セアの言うとおりアルケイディア帝国ではソリドール家と元老院との対立が100年以上続いている。
主に政治は皇帝が取り仕切っているため、元老院は廃帝権などの権力を持つ事を除けばお飾りに近い。
だから自分達の影響力を強めようと元老院は必死なのだ。

「それにビュエルバの侯爵もなにやら動きがあるようでの」
「おじさまが?」
「表向きは病気療養のためにビュエルバからいなくなったと言っておるが・・・どうやら各地の反帝国組織に働きかけておるようじゃのう」
「どうしてそんなことを・・・」
「ダルマスカに張り付いておった第8艦隊が全滅し、厄介じゃったヴェインも本国へ帰ったからじゃろうな」
「で、今のアルケイディアはどういう状況なんだ?」
「グラミス皇帝は死期が近いらしいからの・・・このままいけばヴェインは元老院によって失脚するといったところかのう」
「ヴェインの動向はなにかあるか?」
「理由はわからんが対ロザリアの最前線にいるジャッジマスター達を召集令をだしたようじゃが・・・」
「帝国軍はどうなっているのですか?」
「アルケイディア軍はダルマスカ地方に駐屯しているガルテア機動軍を除いて平時体制じゃ」
「何故ガルテア機動軍だけ平時体制じゃないんだ?」
「ロザリア帝国に動きがあった」

セアとアーシェが表情を変えた。
アルケイディア帝国の長年の宿敵、ロザリア帝国に動きがある。
ダルマスカ再興を目的とするアーシェにとって好ましい事態ではない。

「ロザリア帝国東部に軍事演習という名目で大軍を集結させておるようじゃ」
「随分と大胆な行動に出たな」
「アルケイディア軍の精鋭が集まっておったリヴァイアサン艦隊が全滅し、【戦争の天才】と称されるヴェインはダルマスカからいなくなってしまったからじゃろう。アルケイディアに隙あらばロザリアが攻め込んできて戦争がおこるかもしれん」
「ただでさえアルケイディアとロザリアの両帝国は犬猿の仲なのにアルケイディアがダルマスカを占領してからは何時開戦してもおかしくない状況だったからな」
「ロザリアからしてみればナブラディアに軍を置きバレンディア大陸進出の足がかりとするつもりじゃったのに2年前の戦争でナブラディアは敗れ、アルケイディアのオーダリア大陸進出を許してしまったからのう」
「表向きはヴェインは本国に戻り、侯爵は病気でビュエルバにいなくて、ロザリアは国境付近で軍事演習か」
「だけど水面下では元老院がヴェインを蹴落とそうとしていてヴェインも何か企んでいる。おじさまは反帝国組織を束ねていて、ロザリアは何時でもアルケイディアに攻め込んできてもおかしくない状況」
「どう考えても穏やかな状況じゃないな」
「更に言うならアルケイディアとロザリアの間で戦争が起これば主戦場となるのは・・・」
「・・・ダルマスカ」

アーシェは自分の無力さに怒り自分の手を握り締めた。
セアはダランの話を聞きあることを思っていた。
もうダルマスカ再興というような一国で収まるような規模の話ではない。
なんと表現すればいいのかわからないがガルテア連邦崩壊の時に感じたものと似ている。
恐らくこれは時代が動く前触れなのだろう。
その先にあるのが二大帝国のどちらかの栄光か、それとも二大帝国が力を失い再び群雄割拠の時代へともどるのか。
あるいは・・・
新しい時代の訪れをセアは予感していた。  
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