Element Magic Trinity
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
棺桶
4つのギルドが結束し、『打倒!六魔将軍』を誓った一方その頃。
ワース樹海西の廃村に、六魔将軍はいた。
「ここはかつて古代人の都があった。この洞窟は村の神事の際に、巫女が篭り神託を得たという」
「きゃっ!」
「うあっ!」
「ぎゃわ!」
説明をしながらアジトへと入っていく。
それと同時に連れて来た3人をどかっと壁に投げ付けた。
「乱暴にするな!女のコなんだぞ!」
ハッピーが文句を言うが、
「もびゅ」
「ハッピー!」
「むーむー!」
「やめろッ!ハッピーを放せぇっ!」
「フン」
ブレインに顔面を掴まれる。
ウェンディとルーが叫ぶと、ブレインは鼻を鳴らしながらハッピーをポーンと放る。
そのままハッピーは目を回して伸びてしまった。
「ブレイン、この2人は何なんだ?」
「ニルヴァーナに関係してんのか?」
「そんな風には見えないゾ」
「そうか!売ってお金に・・・」
レーサー、コブラ、エンジェル、ホットアイが口々にそう言う。
「まずはウェンディ、こやつは天空魔法・・・治癒魔法の使い手だ」
「治癒魔法だと!?」
「失われた魔法」
「スー・・・スー・・・」
「これは金の臭いがしマスネ」
「こんな小娘が・・・で、この小僧はなんだよ?」
コブラがくいっと顎でルーを指す。
ルーはむっとしたような表情を浮かべる。
「こやつは元素魔法・・・大空の使い手だ」
『!』
ブレインのその言葉に眠っているミッドナイト以外の目が見開かれる。
「元素魔法!?」
「世界を構成する万物の根源を司る魔法」
「大空・・・回復と後方支援、防御なら右に出る者はいないと言われるあれデスカ!?」
「こんな弱っちそうな小僧が・・・」
「何だとぉっ!」
「むっ」が「むかーっ!」に変わる。
怒っていないように見えるが、それを本人に言ったらマジギレされるので何も言わないでおこう。
「!まさか!?」
すると、コブラが突然目を見開いた。
「その通り。『奴』を復活させる」
ブレインは両腕を広げ、宣言した。
「わ、私・・・!悪い人達に手は貸しません!」
「僕だって!そんな事したらティアに怒られちゃうし!」
「貸すさ・・・必ず・・・」
必死に叫ぶウェンディとどこか外れた事を言うルーに、ブレインは余裕の笑みを崩さずに言う。
「ウェンディ・・・うぬは必ず、奴を復活させる」
「え?」
うー・・・と声を上げながらハッピーを抱えて威嚇するウェンディ。
ルーはウェンディ特定の言葉に首を傾げた。
が、ブレインは全く気にしない。
「レーサー、奴をココに連れて来い」
「遠いなァ、1時間はかかるぜ」
「かまわん」
そう言うと、レーサーは『奴』を連れて来る為に出ていった。
「コブラ、ホットアイ、エンジェル。貴様等は引き続きニルヴァーナを探せ」
「でもあの人が復活すればそんな必要はないと思うゾ」
「万が一という事もある。私とミッドナイトはここに残ろう」
「ミッドは動く気がないみたいデスが・・・」
「しゃあねぇ。行ってくるか」
「ねぇ?競争しない?先にニルヴァーナを見つけた人が」
「100万J!のったァ!デスネ」
「高いゾ」
仕方なさそうな表情でコブラは言い、エンジェルとホットアイはどこか楽しそうな表情を浮かべる。
そしてそのままニルヴァーナ捜索へと出ていった。
「一体・・・どんな魔法なの・・・?ニルヴァーナって・・・」
ぎゅっとハッピーを抱き抱えて呟くウェンディ。
その問いに、ブレインは不気味な笑みを表情に残したまま言い放った。
「光と闇が、入れ替わる魔法だ」
「みんな急いで・・・お願い・・・」
「プーン」
一方、ワース樹海の大きな木の下。
そこには毒に苦しむエルザとそれに寄り添うルーシィと召喚されたプルー。
空中に浮かんだモニターにキーボードで何かを打ちこむヒビキと木の太い枝に上って辺りを見回すココロがいた。
「全員樹海に突入・・・完了・・・と。ココロちゃん、そっちはどう?」
「今のところは敵も味方もいないです」
滅竜魔導士は聴覚・嗅覚・視覚が優れている。
その為彼女はここに残って敵の影を探しているのだ。
「君は行かないの?」
「エルザを置いてはいけないでしょ。それにどう考えてもあたしが1番戦力にならないし」
「そんな謙遜を・・・噂は聞いてるよ。3メートルのゴリラを倒したとか、ファントムのマスターを再起不能にしたとか、アカリファじゃ1人で千人と戦ったって」
「尾ヒレつき過ぎ」
正確にはゴリラ―――多分バルカンかエバルーと契約時のバルゴのどちらかだろう―――を倒したのはナツだ。
ファントムのマスターは急所を蹴りあげたからで、結果的に再起不能にしたのはマカロフ。
そしてアカリファじゃ千人もいなかっただろうし、ルーもいた。
「そーゆーアンタは行かないの?」
「女性2人と女の子を置いていけないよ」
「意外と優しいのね」
ここにティアがいたら「ただ優男なだけでしょ」と言われる。
「それに僕の魔法は皆にここの位置を知らせる事が出来る。ウェンディとハッピー、ルーを救出しても、この場所に帰れなかったら意味ないからね」
ルーシィはそれを聞いて目線を上げる。
「ココロは?」
「私はアラン君みたいに攻撃は得意じゃないし・・・いても足引っ張っちゃうだけですから」
困ったようにココロは笑う。
そんな会話をしながら、3人は3つに分かれて六魔将軍及びアジトを探しに行ったメンバーの帰りを待つのだった。
「天空の滅竜魔導士ってさぁ」
一方、ナツとグレイ、ティアの妖精メンバーにシャルルとアランを加えた4人と1匹。
因みにアルカは蛇姫メンバーと、ヴィーテルシアは天馬メンバーと行動している。
人数に偏りが出来てしまう為だ。
「何食うの?」
「空気」
「うめぇのか?」
「さあ」
「それ、酸素と違うのか?」
正直な話今とは全く関係ない事を話しながら走る。
「じゃあ灰の滅竜魔導士は?」
「灰とか灰色のもの。あと、混合色だからか白いものと黒いものもいけるらしいわ。ま、戦う時に周りに灰色のものって少ないからいろいろ食べられるようになってるんでしょ」
「じゃあ、グレイとかアランの髪も食べられるのかしら」
「あ、あはは・・・」
黒髪のグレイと灰色の髪のアランを交互に見たティアにアランは困ったように笑ってみせる。
「ウェンディとココロはナツさんに会えるかもしれないってこの作戦に志願したんです」
「オレ?」
「7年前に滅竜魔法を教えてくれたドラゴンが今どこにいるか知ってるかもしれないって」
「同じ滅竜魔導士でしょ?」
ナツとシャルル、アランが前を、グレイとティアが後ろを走る。
「『天竜グランディーネ』と『灰竜グラウアッシュ』とか言ったかしら」
「!」
「?どうしたティア」
「・・・何でもないわ」
聞いたドラゴンの名前に反応したティアにグレイが声を掛けるが、ティアはふっと視線を逸らす。
「オイ!いなくなったのって7月7日か!?」
「さあ」
「えっと・・・確かそうだったと」
アランが思い出すように少し上を見て呟く。
「イグニールもガジルのドラゴンも、ウェンディとココロも7年前・・・んがっ!」
「バカね」
考え事をしながら走っていたナツにむき出しになった木の根っこが顔面直撃する。
それを見たティアはぼそっと呟いた。
「そうだ!ラクサスは!?」
「じーさん言ってただろ?アイツは滅竜魔導士じゃねぇ」
「ラクサスさん・・・?」
グレイの言葉に出てきた名前にアランは首を傾げる。
「今は破門中だけど、ラクサスって雷の滅竜魔導士がいたのよ、妖精の尻尾に。マスターの話じゃ、子供の時に父親に滅竜魔法が使える魔水晶を体に埋め込まれたんですって」
「そんな魔水晶があるんですか!?」
「驚く事じゃないわ。滅多に出回らないだけで闇ギルドの間とか一部の魔法屋じゃ当たり前の事よ。今ナツの魔力を抽出して魔水晶にすれば出来上がりだし」
普段闇ギルドを始めとする『裏』で生きる奴等を討つ仕事を中心に行うティアはその手の裏で出回る物等には詳しいようだ。
「そういや、アランは何の魔法使うんだ?」
「え?ぼ、僕ですか?」
アランは戸惑ったように桃色の瞳を揺らす。
しばらく黙ると、口を開いた。
「僕は『魔法格闘術』と呼ばれる格闘術を主にしています。拳や脚に属性を持たせた魔力を纏わせる事で攻撃力を上げるんです」
「へぇ~」
「聞いた事ねぇ魔法だな」
「あんまり使用者はいないですからね」
そう言うと、アランは前を向いた。
「・・・」
その目に大きな揺らぎと戸惑いがあったのを、ティアは見逃さなかった。
鋭く後ろ姿を見つめ、すぐに溜息を吐く。
考えても無駄な事は考えない主義のようだ。
「な・・・何コレ!?」
『!』
突然1番先を走っていたシャルルが驚きながら立ち止まる。
続くようにナツ達も足を止め、シャルルの視線の先を追いかけた。
その先にある『それ』を見て、ナツ達は目を見開いて驚愕する。
「木が・・・」
「黒い・・・」
「き・・・気持ち悪ィ」
「不気味な魔力を感じる・・・」
焼け焦げて炭のようになってしまった訳でもない。
上から黒いペンキをぶっかけたように。
上から根っこまで黒1色に染まったそこにあった。
「ニルヴァーナの影響だって言ってたよな、ザトー兄さん」
「ぎゃほー。あまりに凄まじい魔法なもんで大地が死んでいくってなァ、ガトー兄さん」
「誰だ!?」
聞こえてきたのは聞き覚えのない声2つ。
全員がそちらに目を向けると―――――――
「ニルヴァーナの影響だって」
「さっき言ったぜ、ガトー兄さん」
「そうかい、ザトー兄さん」
巨漢の猿顔とアフロヘアの猿顔がいた。
それだけではない。
軽く50は超えるほどの男達もいた。
「ちょ・・・ちょっとぉ」
「囲まれてますよ!」
しかもいつの間にか囲まれていた。
シャルルとアランは慌てる。
が、他の3人はというと。
「うほぉ!サルだ!サルが2匹いんぞオイ!」
ナツは的外れな発言をかます。
「こ、こいつ等妖精の尻尾だ!こいつ等のせいで・・・あの2人、思い出しただけで・・・」
「オオ!もう1匹増えたー!」
「アンタは落ち着きなさい・・・2人って事は、ルーシィとルーにやられた雑魚かしら?」
更にテンションを上げるナツを横目で睨んでからティアは淡々と呟く。
「六魔将軍傘下、裸の包帯男」
「ぎゃほおっ!遊ぼうぜぇ」
くるくると指を回してそう言うザトー。
「傘下・・・ってまさか、六魔将軍の傘下ギルドが樹海に集結してるのか!?」
「敵は・・・6人だけじゃなかったっていうの・・・!?やられた・・・」
予想外の事態に慌てるシャルルとアラン。
が、そんな事では全く驚かない3人がここに。
「こいつァ丁度いい」
「ウホホッ、丁度いいウホー」
「運が良かったみたいね」
「え!?ちょっ、皆さん!?」
「何言ってんのアンタ達!」
これだけの数の人間。しかも全員魔導士。
囲まれているにも拘らず、ナツ、グレイ、ティアは全く慌てない。
こんな事は日常茶飯事・・・とまではいかないがよくある。
それに「邪魔する奴はぶっ飛ばす」が常識のようになっている彼等にとっては何の問題もない。
「拠点とやらの居場所を吐かせてやる」
「ま、簡単には教えてもらえないでしょうし、力づくでね♪」
「今行くぞ!ハッピー!ウェンディ!ルー!」
氷が割れるような音を鳴らしながらグレイが言う。
ティアが珍しく楽しそうな笑みを浮かべる。
ナツがぐりんぐりんと腕を回した。
「なめやがって、クソガキが・・・」
「六魔将軍傘下、裸の包帯男」
「死んだぞテメーら」
睨み合う妖精の尻尾と裸の包帯男。
人数では明らかに不利だが・・・。
「こ、この人数を相手にするんですか・・・?」
「何なのよ妖精の尻尾の魔導士は・・・今の状況解ってるのかしらっ!」
その頃、青い天馬のレンとイヴ、ヴィーテルシアは――――
「黒い一角獣!?」
「何で奴等がこんな所に・・・」
「ま、邪魔をするなら潰すまでだがな」
その頃、蛇姫の鱗のリオン、シェリー、ジュラとアルカは――――
「これは一体・・・」
「囲まれているだと!?」
「こんなに伏兵がいらしたなんて」
「なァに、驚く事じゃねぇさ。んなの日常茶飯事、慣れっこだっての!」
そしてこの男は――――
「ちょ・・・わ、私・・・皆とはぐれて・・・1人に・・・いや、だから決して怪しい者では、メェーン」
一夜は1人、レン達とはぐれていた。
「重てぇ・・・」
一方、六魔将軍拠点の洞窟では。
「これじゃスピードが出ねぇぜ」
「主より速い男など存在せぬわ」
レーサーが身の丈を遥かに超える大きさの棺桶を担いで帰って来ていた。
その棺桶には鎖が巻かれており、形は十字架だ。
「ひっ」
「棺桶!?」
「ティアの方が速いよーだっ!だって君のは魔法でしょ。ティアは自分の力だもんね!」
棺桶に怯えるウェンディ。
ハッピーは驚愕し、ルーは的外れた事を眉をつり上げて言い放つ。
「ウェンディ、ルーレギオス。お前達にはこの男を治してもらう」
「わ、私・・・そんなの絶対やりません!」
「僕だってやらないよっ!ティアにマジで怒られる!」
「そーだそーだ!・・・ってルー、そういう問題じゃないでしょ」
やっぱり的外れた事を喚くルーにハッピーは呆れながらツッコむ。
「いや、ウェンディ。お前は治す。治さねばならんのだ」
「またウェンディだけ・・・?」
そう言いながら、鎖を解く。
ルーが不思議そうに首を傾げて呟いた瞬間、棺桶が開いた。
「!」
その棺桶の中にいる青年を見て、ウェンディの表情が驚愕に染まった。
目を見開き、その目は信じられないものを映すように揺れる。
そこにいるのは、ウェットな青い髪の青年。
顔の右側に赤い紋章があり、着ている服はボロボロになっている。
「この男は『ジェラール』。かつて評議院に潜入していた。つまり、ニルヴァーナの居場所を知る者」
そう。
その青年の名は『ジェラール・フェルナンデス』。
かつては『ジークレイン』として評議院に潜入し、評議院を破壊した大悪党。
楽園の塔ではナツやティアと大激闘を繰り広げ、塔の崩壊と共に姿を消した、エルザの昔の仲間。
そして・・・ナツやティア、エルザにとっては因縁の相手でもある。
「ジェラールって・・・え?え!?」
「どういう事・・・?ジェラールって・・・あの・・・」
名前は知っているが面識のない2人は戸惑いを隠せない。
が、戸惑っているのは2人だけではない。
「ジェラール・・・」
「知り合いなの!?」
「えぇっ!?」
ウェンディは小刻みに震えながら、呟いた。
「エーテルナノを大量に浴びてこのような姿になってしまったのだ。戻せるのはうぬだけだ。恩人・・・なのだろう?」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
・・・久しぶりに書く事が無いですね。
じゃあ、最近多い事について。
ナツとティアの件。
「ティアを他の人と恋仲にしないでください」・・・の意見が多いです。
どうなるかはまだ解りません。もしかしたら誰かを好きになるかも知れないし、一生恋せず生きていくかもしれないし。
そして全ての判断は私緋色の空がします・・・当然の事なのですが。
だから皆さんの意見通りになるかも知れないし、私個人の意見である『ティアと付き合うとすれば、自分で前に進め、進む事に手を借りないティアの不器用さを知り、前に進む為に引っ張る訳でも押す訳でもなく、平等に横に立てる人間』と恋仲になるかもしれないです。
もしそうなった場合、多少気に入らなくてもお許しください。
・・・元々、考えてたんです。
この作品ははっきり言って百鬼憑乱より人気が高いです。
でもそれは「私の作品」が人気なのか、「ナツとティア」が人気なのか・・・と。
勿論ナツとティアを書いているのは私なのですが、「ナツとティアの絡みが無くなるとそこまでの人気がない作品」だとすれば、それはあの2人の人気に凭れ掛かってるような感じがするんです。
何て言うのかな・・・作品自体は大した事ないけど、この2人は特別、みたいな感じでしょうか。
それでもいいと思ってたんです。最初は。でも、書いていくうちに疑問になって。
それで、改めて『ティア』と向き合ってみたんです。
私は最初、どんなキャラを作ろうとしていたんだったか思い出す為に。
そして初心に帰れました。
クールで、でも厳しさと優しさを平等に持っていて、孤独が好きで誰かと関わる事を極端に嫌う・・・。
それを考えた時、思いました。
「このキャラが『他人』を『恋人』にする訳が無い。するとすれば、それは奇跡に等しい」と。
恋人になれるとすれば、それは長い間関わって傍にいて彼女自身心を許している人物。
・・・さて、そんな人がいるでしょうか?
クロスやクロノといった家族以外で・・・考えた結果、まだそこに到達するキャラはいません。
『まだ』なのでいずれは出てくるかもしれませんが・・・。
私的には、嘘偽りなく正直な嫌味を吐ける相手がいいと思うんですけどね。
その方がティア自身も楽でしょ?
感想・批評、お待ちしてます。
長文失礼致しました。
ページ上へ戻る