Element Magic Trinity
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六魔将軍現る!
屋敷でジュラとティアが偽一夜に刺されているとはつゆ知らず。
ナツをはじめとする屋敷を飛び出した連合軍メンバー達はワース樹海目前までやって来ていた。
「見えてきた!樹海だ!」
「待てよナツ」
「やーだねーっ」
「1人で先走るんじゃない」
「お前連合軍の意味解ってんだろうな!?」
「解っていたとしても否でも、バカだな」
1番前を突っ走っていくナツにグレイとエルザ、アルカが声を掛けるが、ナツは止まらない。
ヴィーテルシアはぼそっと呟いた。
「ちょっと・・・!皆、足速すぎ・・・」
「お姫様抱っこしてあげようか?」
「僕は手を繋いであげる」
「オレから離れんじゃねーよ」
「うざい!」
そしてこんな状況でもホスト感満載でルーシィに声を掛けるトライメンズ。
ルーはそんなトライメンズを一睨みし、ナツを追いかける。
「み、皆さん・・・待ってください・・・」
屋敷に来るまでにも走り、ここでも走り。
今いるメンバーで1番体力を消耗しているアランは息を切らしながらも何とかついていく。
「ウェンディ!ココロ!もたもたしない!」
「だってぇ~」
「みんな、足速くて・・・」
「オイラも頑張るからね!」
ウェンディとココロの手を引きながら走るシャルル。
ハッピーが何か言うが、聞いちゃいない。
「!」
「何?」
すると、突然視界が暗くなる。
走る連合軍を、大きな影が覆った。
「!」
「おわっ!急に止まるんじゃねぇ!」
「ぐおっ」
突然暗くなった視界に響く音。
思わず足を止めたナツにグレイがぶつかり、地面へと倒れた。
「おお!」
空を見上げたエルザが声を上げる。
「魔導爆撃艇クリスティーナ!」
「すげぇ!」
「あれが噂の・・・天馬!」
その大きな影の正体は上空にあった。
青い天馬が所有する、天馬を模した魔導爆撃艇、クリスティーナ。
想像以上の迫力に、メンバー達は歓喜の声を上げる。
――――――が、その声は一瞬にして消え去った。
「え!?」
「何!?」
ルーシィとルーの驚愕の混じった声が響く。
その視線の先には、クリスティーナ。
「そんな・・・」
―――――――突然爆発を起こす、天馬の姿。
「クリスティーナが・・・!」
驚愕している間にも、天馬は爆炎に包まれる。
大きな爆発音と共に炎が燃え、煙が起こり――――――
「落とされたァ!」
そのまま重力に倣って落下し、爆発を起こした。
「どうなっている!?」
「んな脆いモンなのかよ、クリスティーナってのは!」
何の前触れもなく爆発し落下したクリスティーナにリオンとアルカが驚愕しながら叫ぶ。
すると、煙の中から数人の人影が現れた。
「誰か出てくる・・・」
「ウェンディとココロは隠れて!」
「ルー、2人を頼んだぞ!」
「オッケー!」
それを見たアランは2人を近くの岩の陰へと隠れさせ、アルカはルーに2人の守りを任せる。
その間にも煙は晴れ、そこから姿を現したのは――――6人。
「!」
空間に、緊張が走った。
「六魔将軍!」
そこにいたのは、連合軍の討伐対象闇ギルド。
6人全員集合している、六魔将軍だ。
「うじどもが、群がりおって」
司令塔であるブレインは鬱陶しそうに呟く。
続くように、エンジェルが口を開いた。
「君達の考えはお見通しだゾ」
「ジュラと一夜、ティアもやっつけたぞ」
「どーだ」
それを聞いた瞬間、緊張と共に驚愕が走る。
「何!?」
「バカな!」
「有り得ん!」
連合軍の中でも5本の指に入るであろう実力者3人が誰よりも早くやられたと知り、リオンとレン、ヴィーテルシアが叫ぶ。
「動揺しているな?聴こえるぞ」
「仕事は速ェ方がいい。それにはアンタ等・・・邪魔なんだよ」
コブラが口角を吊り上げ、レーサーが淡々と言い放つ。
「お金は人を強くするデスネ。いい事を教えましょう。『世の中は金が全・・・」
「お前は黙ってろ、ホットアイ」
ホットアイが何か言おうとするが、遮られる。
「何か眠ってる人いるんですけど・・・」
宙に浮いている絨毯に乗り、ぐーぐーと寝息を立てているミッドナイトを見て呆れたように呟くルーシィ。
「まさかそっちから現れるとはな」
鋭い目つきでエルザがそう言った瞬間―――――――
「探す手間が省けたぜーーーーーーーっ!」
「!」
ナツとグレイが飛び出して行った。
それを見たブレインは全く慌てず、左手を横に伸ばす。
「やれ」
その一言で、レーサーが目にも止まらないスピードで飛び出す。
そして、一瞬にして2人の背後に現れた。
慌てて振り返った、瞬間。
「モォタァ!」
「ぐああっ!」
「うあっ!」
目にも止まらぬスピードでレーサーは回転し、ナツとグレイは吹き飛ばされた。
「「ナツ!グレイ!」」
ルーシィが叫ぶが・・・何故か声が2重になる。
「ん?」
「え?」
ふと右を見てみると、隣で金髪が揺れた。
茶色がかった目に頭の右側で結えた金髪。
鏡に映したかのように同じ顔の人間が目の前にいた。
つまり、ルーシィの目の前にルーシィがいる。
「ばーか!」
「な・・・何コレェ!?あたしが・・・え?ええ!?」
「クス」
突如目の前に現れた偽物ルーシィに鞭でビシビシと引っ叩かれるルーシィ。
それを見たエンジェルは小さく笑みをこぼした。
「ちっ」
「やるしかねぇな!」
舌打ちしながらリオンとシェリー、アルカが駆けていく。
その前に立つホットアイはスッと自分の目の少し下に左手の人差し指と中指を当て―――――
「愛など無くとも金さえあれば!デスネ」
「きゃああっ!」
「な・・・何だ!?地面がっ!」
「くっ・・・大地猟犬!」
ホットアイの魔法によって突如地面が柔らかくなり、ひっくり返る。
土系の魔法が扱えるアルカはすぐさま土で構成した猟犬を放つが・・・
「世の中金!デスネ」
「っ・・・があああ!」
ホットアイに到達する前に猟犬は柔らかくなって消え、一瞬の油断に攻撃を喰らう。
「がっ!」
「うあっ!」
「ばっ!」
走り出したトライメンズはレーサーのスピードに成す術なく攻撃される。
「舞え!剣達よ!」
エルザは天輪の鎧に換装し、その背後に無数の剣を展開させる。
そして剣をコブラに向かって放つが、コブラは余裕たっぷりな笑みを浮かべたまま軽く避けた。
「くっそぉ!お前何寝てんだコノヤロウ!」
復活したナツの目に映ったのは、こんな騒ぎだというのにぐーぐー寝ているミッドナイト。
「起きろーーーーーっ!」
そんなミッドナイトにナツは勢いよくブレスを放つ。
そのブレスは途中までまっすぐ進み―――――――
「!」
ぐにゃん、と。
ミッドナイトに当たる前で避けるかのように曲がった。
「よせよ。ミッドナイトは起こすと怖ェ」
「!んがっ!」
予想もしていなかった事態に驚愕するナツの背後。
そこにはいつの間にかレーサーが回り込んでおり、左拳を決められる。
「皆さん!くっ・・・」
次々にやられていくメンバーを見たアランは地を蹴って飛び出して行く。
「遅ェよ、小僧」
「っ!」
レーサーが一瞬にしてアランの目の前に現れる。
突然の事にアランが目を見開いた。
が、すぐに体勢を変えてバック転を決め、再び地を蹴る。
「紫電轟雷!」
叫び、拳を握りしめる。
その拳に、バチバチと音を立てる紫の電撃が纏われる。
そして真っ直ぐにレーサーに向かっていく。
「らああああああっ!」
固く握りしめた拳を振りかざした瞬間―――――――
「フン」
「なっ・・・!」
レーサーが消えた。
そして一瞬でアランの背後に現れる。
「遅い!」
「うあああああっ!」
声と共に、鋭い蹴りがアランのガラ空きの背中に決まった。
「アイスメイク・・・」
グレイが造形魔法の構えを取ると、その後ろでエンジェルが連れているぬいぐるみのような2体の生物が飛び出す。
「なっ!」
するとそれはグレイへと姿を変え、グレイを凍らせた。
「ぐああっ!」
「がああっ!」
ホットアイが魔法で柔らかくした地面がリオンとアルカを襲う。
「きゃああっ!」
攻撃を喰らったルーシィが地面を転がる。
「ぐっ、うあっ!」
見えないほどのスピードで攻撃を受けるイヴが倒れる。
「ひいい・・・」
「み、皆さん・・・」
「2人とも大丈夫だよ・・・絶対」
次々にやられていく連合軍メンバー達を見たウェンディとココロは怯えて身を寄せ合い、ルーは不安そうに前を見つめながら呟く。
「つあっ!」
ただ1人倒れていないエルザはコブラに向かって剣を振るう。
が、コブラは余裕でそれを避けた。
その背後からレーサーが拳を振り、それと同時にコブラの連れる毒蛇がエルザを襲うが、地を蹴ってエルザはそれを避ける。
「!」
移動速度を上げる飛翔の鎧に換装したエルザは剣を振るうが、レーサーにも毒蛇にも当たらない。
「ほう・・・これがエルザ・スカーレットか」
ブレインが笑みを浮かべ、呟く。
「見えたデスネ。ネ!」
「くっ!」
素早く動くエルザだが、ホットアイの魔法によって足場を崩される。
「はァ!」
「うっ!」
そんな状態でもエルザはレーサーの攻撃を何とか防ぐ。
が、今エルザが相手するのはホットアイとレーサーだけではない。
「聴こえるんだよ、『その動き』」
「!」
エルザがその言葉に自分の右腕に目を向ける。
そこにはカプッと噛み付く毒蛇がいた。
ジュル、と何かが流れる音が1つ聞こえ―――――
「はぁ!」
エルザの目が見開かれた。
「そいつの毒はすぐには死なねぇ・・・苦しみながら息絶えるがいい・・・」
「あ、あ・・・」
「がはっ!」
「う・・・あ・・・」
ポロッとエルザの手から剣が離れ、ガクッと膝をつく。
それと同時にナツも倒れ、遂にはその場にいる12人全員が倒れてしまった。
「こんなモンか」
「・・・いや、まだだ。聴こえ――――――」
レーサーが呟き、コブラが何かを言いかけた瞬間―――――
「戦女神よ、罪深き者に断罪の剣を」
透き通るような声が響いた。
彼等は忘れていた。敵は人間だけじゃないという事を。
もう1人、否、もう1匹・・・残っている。
「っ!」
突然降ってきた剣にレーサーは素早く移動し、それを避ける。
その魔法の発動者・・・ヴィーテルシアは金髪紫の目の少女へと姿を変え、手に持つ杖を揮った。
「全てを裁くのは歌姫の聖なる歌声」
魔法陣が展開し、そこから水と軽やかな音が響く。
広範囲に広がるその魔法は簡単には防げない。
・・・のだが。
「ピラーグラウンド!」
「・・・防ぐか」
ホットアイが放った土の柱のような物が魔法を裂き、一瞬にして消える。
ヴィーテルシアは次の手を打つ為に杖を揮った。
「女帝の逆鱗は竜へと具現する」
続いて現れたのは怒声。
響く怒りの声は空を切り裂き、竜へと姿を変えた。
「女帝の業火」
カン、と杖を先を地面に当てる。
その瞬間、炎が大地を駆けた。
「リキッドグラウンド!」
「なっ・・・これまでも・・・!?」
「はぁっ!」
「うぐがあああっ!」
その炎を包み込むかのように、ホットアイの土が覆い被さる。
まさかの事態に目を見開いたヴィーテルシアにレーサーの攻撃が決まり、ヴィーテルシアは地面を転がった。
そして遂に、ヴィーテルシアまでもが倒れてしまった。
「うう・・・」
「強ェ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「おのれ~・・・」
「くっ・・・くそっ・・・」
呻き声を上げる連合軍。
ヴィーテルシアの姿がポフッと音を立てて狼に戻った。
「ゴミ共め。まとめて消えるがいい」
そう言ったブレインの持っているドクロの杖。
その先端に、怨霊のような魔力が集まっていく。
「な・・・何ですの?この魔力・・・」
「大気が震えてる」
「まずい・・・」
「ルー・・・盾、張れるか・・・」
「多分・・・やってみる!」
ルーが岩陰から飛び出し、その左掌に魔力を集中させる。
「風よ、万物を通さぬ鉄壁を・・・」
鈴の音と共に魔法陣が展開し、それは大きく広がって連合軍全員の上に現れる。
「常闇回旋曲」
「大空鉄壁!」
ブレインとルー、2人の声が樹海に響き―――――――
「!」
突如ブレインが魔法を止めた。
その視線の先には――――――
『!』
岩陰に隠れるウェンディと、前に立つルー。
その杖の先から、魔力が消える。
「どうしたブレイン!なぜ魔法を止める!?」
レーサーが問うが、ブレインは答えない。
そして、ポツリと呟いた。
「・・・ウェンディ・・・ルーレギオス・・・」
名を呼ばれ、2人は戸惑ったような表情を浮かべた。
「え?え?」
「何で僕の名前を・・・」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
今回はヴィーテルシアにプチ活躍してほしかった・・・なので活躍。
思ったように書けたのでしょうか・・・。
それと、ナツとティアの件ですが。
多くの人が恋仲にしてほしいと仰りましたが、これは変えません。
ティアの過去がふっ切れて、それでティアの中で何かが変わったとしても、それからすぐに恋に発展する事はまずないです。
17年間背負ってきた過去が消えてしばらく時が経ったって、17年も背負ってきたものが一瞬で消える訳が無いのです。
・・・等と色々考えて、ティアが恋をするとしても、それは何年何十年後と世界だと思うんです。
元々、ティアは孤独を好むキャラですし。
感想・批評、お待ちしてます。
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