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久遠の神話

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第七十九話 次期大統領としてその七

「降りられます」
「それで、ですね」
「貴方も戦いから降りられますね」
「そうなりますね、では」
「それでなのですが」
 ここでだ、さらに言う大石だった。
「貴方はこの戦いについては」
「どう思っていたかですか」
「そうです、あまり好ましいとは思われていませんでしたね」
「お答えする必要は」
「ありません」
 そのことはこう返した大石だった、そのうえで二人が今話している礼拝堂、丁度十字架の主の前の席で二人横に座り話していたがそこで言うのだった。
「何故ならです」
「神がご存知だからですね」
「神には申し上げていますね」
「無論です。神には全てを申し上げています」
 スペンサーは礼節のある声で大石に答える。
「その羊として」
「ならです」
「貴方に申し上げずともですね」
「構いません」
 そうだというのだ。
「私は」
「そうですか、それでは」
「それに私もです」
 大石、彼もだというのだ。
「申し上げられないことはありますから」
「人にはですか」
「人には必ずそうしたものがあります」
 誰にも言えない、そうしたことがだというのだ。
「ですから」
「申し上げられるのは神だけということが」
 まさにそうしたことはある、人間は誰にでも何でも言えるかというとそうしたことが出来る人間はまずいない。
 だからだ、大石もなのだ。
 それでだ、スペンサーにも話すのだった。
「懺悔でも言えないことなら」
「言わなくてもいいのですか」
「懺悔は神への告白ですが」
「人に話しますね」
「はい、神の僕である我々に」
 牧師も神父も神の僕だ、だが人は人だ。
 人には話せないことがある、それが例え神の僕であろうともどうしてもだというのだ。それで大石は言うのだ。
「話せないこともあります」
「ですから」
「神だけお話して下さい」
 こうスペンサーに話すのだった。
「そうされて下さい」
「わかりました、それでは」
 スペンサーも大石の言葉に頷く、そのうえで今言うのだった。
「その様に」
「では」
「しかし申し上げられることは申し上げますので」
 この言葉はスペンサーから言った。
「戦いを降りることも」
「そのことはですか」
「確かに」
 降りるというのだ、間違いなく。
「そうします」
「ではまた一人ですね」
「戦いを降りますね」
「私で確か四人目ですね」
 戦いを降りる剣士、それはというのだ。
「そうなりますね」
「そうです、四人です」
「戦いを望まない剣士は五人でしたね」
「そうです」
 大石、彼自身に上城と工藤、高橋、それにマガバーンだ。確かに五人である。それに対して戦いから降りた剣士は高代、広瀬、王、そして今から降りる彼スペンサーである。
 この九人だ、戦おうとすることをしないか止めた剣士は。
 しかしまだ戦おうとする剣士達はいる、彼等はというと。
「残るは四人」
「戦おうとする人は」
 スペンサーは静かに大石に応えた。 
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