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久遠の神話

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第七十九話 次期大統領としてその六

「そうしてくれるか」
「わかりました」
「そういうことだ」
 大統領はスペンサーに告げる。
「それではな」
「はい、それでは」
「君にはいらぬ苦労をかけた」
 戦いへの労いの言葉だった。
「本当にな」
「いえ、お気遣いなく」
「そう言ってくれるか」
「軍人は命令に従うものです」
 プロフェッショナル、それに基づく言葉だった。
「ですから」
「悪いな、それでは」
「通常の駐在武官に戻り」
「そうして勤務してくれ」
「わかりました」
 声で敬礼する、そしてだった。
 大統領はふとだ、こうしたことも言うのだった。
「今かなり虚脱しているが」
「そうなのですか」
「落選したからな」
 虚脱の原因ははっきりしていた、まさにそれに尽きた。落選とは即ち政治家にとっての敗北だからである。
 それでだ、今はそうなっているというのだ。だが。
 それでもだ、彼はこう言うのだった。
「だがその中でもだ」
「その中でもですか」
「考えている、これまでのネオコンの政策はな」
 つまり彼の政策、これはというのだ。
「間違っていたのかもな」
「だから選挙に負けたというのですか」
「そう思いだしている」
 これが彼の今の考えだった。
「アメリカの国益を求めていることは正しいな」
「そのことは」
 スペンサーはあえて言わなかった、大統領に政治的な発言を軍人として言うことはそのまま自分の党派を決めかねかいからだ。
 それでだ、今はそれを避けてあえて答えなかったのだった。
「どうも」
「そうか、言えないか。そうだな」
 大統領もスペンサーのそうした事情を察してだ、あえて聞かないことにした。
 それでだ、こう自分で言うのだった。
「その国益の求め方や富裕層重視、他国への配慮が足らないか」
「そうお考えですか」
「そう思いだしている、まあこの話は聞かなかったことにしてくれ」
 オフレコ扱いだというのだ。
「ではな」
「はい、それでは」
 こう話してそしてだった、大統領は電話を切りスペンサーは日常に戻った。そして一人で任務が終わったことを実感したのだった。
 その任務のことについてだ、彼は誰にも言うつもりはなかった。少なくとも領事館の中においてはである。
 しかし外では違う、彼は大谷の教会に赴き静かな声で述べたのだった。
「これで私もです」
「戦いから降りられますか」
「はい、先程領事館においてです」
 大統領に言われたことを話した、そしてだった。
 そのうえでだ、こう言うのだった。
「私は後は正式にです」
「戦いを降りて」
 そしてだとだ、大石も言う。
「普通の軍人としてですね」
「生きるつもりです」
 こう答えるのだった、大石に。
「このままで」
「そうですか、では」
「戦いから降りる方法は」
「女神の方々の前で剣を置かれ」
「そしてですね」
「そうです、戦いから降りると言われれば」
 それでだというのだ。 
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