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久遠の神話

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第七十八話 選挙の結果その七

「一回ハンバーガーのチェーン店の偽装でしたね」
「あのことですね」
「はい、番組の中で偽装を告発した社員ですが」
「その社員は役者でした」
 つまり仕組んだ告発、やらせだったというのだ。
「後にキャスターの所属事務所に入った」
「それは完全に捏造ですね」
「紛れもなく」
 その通りだとだ、スペンサーも答える。
「報道番組でそうしました」
「他にも抗議活動でこれだけの人間が集まっていると報道してその数が誤りだと指摘されてもですね」
「数の問題ではないと居直りもしました」
「数を出して根拠にしたのに数を指摘されるとですか」
「そう言って居直ったのです」
「それも酷い話ですね」
「しかしその番組は今も放送されています」
 そのキャスターも堂々とテレビに出ている、責任を追求されることなく。
「今晩も放送されます」
「アメリカですと即刻報道資格剥奪ですね」
 少尉は驚きを隠せない顔で言った。
「絶対に」
「しかし日本ではです」
「そうもならずですか」
「放送が続けられています」
「恐ろしい世界ですね、日本のマスコミは」
 少尉の言葉は愕然とさえしていた。
「そこまでして何も処罰されないとな」
「アメリカでは本当に考えられませんね」
「とてもそこまでは」
 ないというのだ、もっと言えば有り得ない。
「考えられません」
「私は日本のマスコミは世界最低のマスコミだと思っています」
 スペンサーの口調は穏やかだ、しかし言うことは厳しかった。
「まさに」
「そうですね、確かに」
 少尉も記者の言葉を聞きながら応える。
「これが看板記者では」
「たかが知れていますね」
「冗談抜きで共和党のスポークスマンに聞こえます」
 国籍は違えど、というのだ。
「ジャーナリストではありませんね」
「ゴシップやタブロイドはより酷いです」
「そちらもアメリカ以上ですか」
「かつてのハーストよりも遥かに酷いタブロイド紙があります」
 イエローペーパー、イエロージャーナリズムの語源となった社である。日米関係の悪化を煽ったことでも知られている悪名を残しているアメリカのマスコミだ。
「あれよりもです」
「ハースト以下ですか」
「それも結構あります」
 一つだけではないとだ、スペンサーは苦い声で語る。
「残念なことに」
「本当にマスコミの質が悪い国なのですね」
「マスコミ関係者の不祥事も揉み消されることが多いです」
「彼等だけは常に潔癖ですか」
「はい、彼等だけはです」
 理由は簡単だ、不祥事を揉み消しているからだというのだ。
「そして普通に会社にいる場合が多いです」
「先程の捏造報道の件もですね」
「普通の国なら絶対に報道資格が剥奪されますね」
「どちらの不祥事も」
 少尉はあえて言った、その番組での行為はそれに他ならないと。
「それに値しますね」
「そんなことを平然とする人間が信頼されるかどうか」
 サクラを仕込んで内部告発を偽造したのだ、これでは立派な詐欺行為と言われても仕方のないことであろう。
「言うまでもありませんね」
「確かに」
「他にもセクハラや痴漢行為があっても」
 中には不倫行為を強要するものもあるという、所謂枕仕事の噂は残念ながら残り続けている。
「それでもです」
「揉み消されますか」
「これでは腐敗するのも当然ですね」
「しかも情報を独占できますね」
 少尉はマスコミ、あらゆる国のそれの特色を指摘した。 
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