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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第九十五話 不意の光

「ハァァァッ――――――!!」

対艦刀を持ったデスティニーが敵のナスカ級を叩き切る。シンは今の現状の立ち位置を考え、遊撃に回るべきだと思い、戦場を駆けていた。右手のビームシールドと収束ビーム砲こそ失っているが、そういった武装以外での補給を必要としない万能機であるデスティニーだからこそ長期的な遊撃というのは可能な行動であり、戦果としては上々だった。

「あの機体……フリーダムッ!?」

そうやって広く戦場を駆け回っていたからだろうからか。シンはストライクフリーダムとストライクが連携して敵を撃ち落としていく様子を発見する。シンとしては非常に複雑な心境を齎した。戦っている相手が基本的にメサイア側に対してのみという事から目的は同じなのだろう。

「また戦場に出て、誰構わず今ある戦いだけを止める気なのかよ……アイツ等はッ!」

逆撫でされた神経を抑えようと自然に唇を噛んで堪える。今のザフトにとってアークエンジェルやフリーダムに対するイメージは、アスランやディアッカのように一部の例外を除き、好意的な印象は全く持っている者は少ない。寧ろ悪感情の方が強いだろう。当然、シンもその一人である。戦場を混乱させ、デイルを討たれ、ロゴスを討とうとした最中に邪魔をした彼らを恨まないはずがない。
元はあちら側にいたパイロットであるアスランが今現在ミネルバにいるという事も、その悪感情に対して拍車をかける要因となっていた。前大戦の英雄の一人であるアスランのように自分たちが正しいと思ってくれている人もいるのに、彼らは戦況を混乱させるばかり。彼らは一体何がしたいというのだと、そういった感情が生まれ出るのもある意味当然だと言えるだろう。

『あの機体は……』

『戦果を上げまくった噂の新型か……この状況を見るにいきなりこっちに撃ってくるって事はなさそうだが……さて、どうなるのやら?』

一方でキラやネオの方もデスティニーを確認する。いきなり攻撃を仕掛けたりしない事からデスティニーがメサイア側でないというはわかる。しかし、だからといって自分たちが立場的には敵であることに変わりはないという事は自覚している。
沈黙が生まれるが、突然デスティニーがビームライフルを正面にいた彼らに構える。ネオは咄嗟に警戒してシールドを構えた。だが、キラはあえて機体を動かさない。ビームライフルの射線が横をすり抜ける様に構えられていたからだ。そして、予想通り放たれたビームはストライクフリーダムをすり抜け、後ろから攻撃を仕掛けようとミラージュコロイドを展開しながら近づいていたゲルググを撃ち抜いた。

「今の俺の敵はアンタ達じゃない……」

正直に言ってしまえば今すぐにでも彼らを討ちたい。実際、何の警告も無しに彼らの後ろにいた敵を狙ってビームライフルを構えたのは、いっそ向こうから攻撃を仕掛けてきたなら反撃できるのに、という思いもあったからだろう。
だが、前にアスランが言ったように戦争はヒーローごっこではないのだ。今シンがしなくてはならないのは彼らを討つなどという私怨を果たす事ではない。そのままデスティニーは彼ら二機を無視して戦場を駆ける。これ以上この場に留まれば抑えが利かなくなる。シンは光の翼を展開し、目立つように移動しながらその場を離れ去った。

『融通を利かせてくれたって事かね……』

茫然としながらネオは呟く。シンのデスティニーは光の翼やそのカラーリングで注目されやすい機体であるが故に敵の注意を引きつけていた。おそらく目立つように戦っているのはわざとだろう。自身が敵を引きつけることで周りの被害を少しでも減らそうとしているのだ。

『なら今のうちに少しでも前進するべきだな』

そういってネオはストライクをメサイアへと向けて進めていく。今だけは目的が一致しているのだ。見逃してくれたというのであれば、こちらとしても全力を尽くすのが当然だろう。

『さあ、勝ちを拾いに行くぞ!』

しかし、ネオのその必死の努力も無為に終わる事となる。まだ発射されるには時間が掛かると思っていた大きな一筋の光が戦場を、そして射線上にいたネオ達の策の要となるはずであろうガーティ・ルーを薙ぎ払った。







「ええい、アスランの奴を放っておけというのか、貴様は!」

「落ち着け、イザーク。俺らの目的はメサイアを止めることだぜ。その為に態々アスランは囮になったんだ――――だったら、俺らのやるべきことは何かわかるだろ?」

長距離移動によって疲弊していたイザーク達がミネルバでエネルギーと弾薬、シールドの補給を行っている間、敵の新型であるナイチンゲールが現れたのだ。ミネルバはアスランにそのMSを任せ、先に前進したという。その報告を聞き、イザークはすぐさまMSでアスランの援護に駆けつけようとするが、それをディアッカに止められる。

「くっ、分かっている……少しでも早くメサイアを落とすぞ。補給は済んだだろうな」

「おう、当然だろ?俺だってあいつ一人に任せるわけにはいかねえって思ってるしな」

止めようとしたディアッカの言葉に同意しがたい部分はあるものの、指揮官としてはそうするべきだと納得し、彼はメサイア攻略の為に出撃する。高性能機であるセイバーの性能とアスラン自身のパイロットを認めているからこそ、アスランが容易く落とされるはずはないと納得したのだ。

「ジュール隊、ついて来い!あの要塞を落とすぞ!」

MSに乗り込み、再びイザーク達ジュール隊は出撃する。メサイア側のザフトは主力となる部隊を欠いていると言っても良い。最新鋭機であるレジェンドやデスティニー、その下位の機体であるデスティニーインパルスといった機体は既に落とされてしまった。
残っている最新鋭機も議長のナイチンゲールやクラウの乗っている機体、それに足されるリゲルグなどの機体だろう。

「邪魔だァッ!」

だが、言ってしまえばそれらの機体はイザーク達が乗っているようにミネルバ側にも存在している。イザークのリゲルグが二機、三機と襲い掛かってきた敵を呆気なく撃ち落とし、切り倒していく。
数ではメサイア側、質ではミネルバ側といった風に戦況は固まりつつあると言えるだろう。だが、そう言った戦局を大きく変える武器を持つか持たないかが彼らとメサイア側の最も大きな違いだった。

「なッ、メサイアが!?」

『どういうことだよ、発射までの時間はまだあった筈だろ!?』

突如放たれたネオ・ジェネシスの三射目。予想はされていた事態だ。だが、ミネルバ側の多くはこう思っていた。予想していた時間よりも早いと。戦場を突き刺すその光はこちらの部隊を切り崩す。
その様子にイザーク達も大いに混乱していた。発射されたタイミングは一射目と二射目の時にあったインターバルと大きくずれが存在していたからだ。明らかに二射目と三射目のインターバルの方が短かったのだ。

「――――ハッ、全員ぼうっとするな!敵の攻撃が来るぞ!迎撃しろ!!」

イザークが持ち直して指示をすることで茫然としていた味方も我に返り、敵の攻撃に対応しようとする。

『ジュール隊長、これは……』

シホが焦った様子で声を掛ける。一体どういうことだと聞きたいのだろう。イザークは状況を分析して己の推測を口にする。

「おそらく考えられる可能性は三つ。一つ目は全く別の大型兵器によるものだ。だが、これはありえん!」

『ああ、発射された位置は一、二射目と一致してるからな……』

ディアッカも観測されたデータを確認して不可能だと判断する。続く様に同じデータを確認していたシホが発言した。

『二つ目は発射を前倒ししたという事でしょうか?威力の低下、或いは排熱等の問題を無視すれば発射までのインターバルを削ることは出来そうですけど……』

「相手がそんな下策を講じてくると思うか?仮にもメサイアは最重要拠点だ。後の事も考えればそうそうこの発射までの空白時間を軽視することはしないはずだ」

大局が決しているのであればともかく、戦局が五分の現状でメサイアにあるネオ・ジェネシスの発射を前倒しにするなどというのは明らかに下策だ。被害を大きく出したとしても次の攻撃が無いと思わせるだけでこちらの士気が上がり、逆にメサイアの士気は下がる事になる。
となれば、ネオ・ジェネシスの発射が早まった原因はイザークの予想では三つ目になる。

「クソ、三味線を弾いていたなァ!!」

二射目そのものが囮だっただけでなく、撃った時間さえも騙すための仕掛けだったという事だ。よくもまあここまで二発目を蔑ろに出来るものだと思えるが、策に嵌った側としてはどうしようもない。インターバルの間隔を一度狂わされた以上、次の発射のタイミングも警戒しなくてはならない。
二度目のインターバルのずれが無いと誰が断言できるだろうか。実際にあるかないかの問題ではない。ハッタリとはそう思わせた方の勝ちである。

『被害状況はどうなってんだよ……クソォ、子細な情報が全く入ってこねえ』

ディアッカは情報を出来るだけ多く集め、イザークは混乱している指揮系統を統一させるように叫ぶ。不意打ちの様に放たれたネオ・ジェネシスだが、幸い被害はそこまで大きくない。
インターバルを読ませないためにメサイア側が味方を大きく動かさなかったのもあるのだろう。放たれた場所は本隊を捉えてはいなかった。それでも影響は大きい、陣形を崩されたせいで、こちらが押し込んでいた敵が立て直し、味方部隊に対して逆襲していく。

『イザーク、不味いぜ!このままじゃあ二射目の時より酷い事態になっちまう!?』

数が多いというのは戦争という状況下においては絶対的に有利な条件の一つである。時と場合においてそれが覆されるという事もあるが、それは下地となる条件が違っている時などにおいてのみ発揮されるものだ。
そして、その数の恐ろしさが牙を剥いた。艦隊は次々と孤立させられ、囲い込まれたMSや戦艦は敵の攻撃によって落とされる。そして、数の差によって戦局が傾き、その天秤は雪だるま式に崩れていく。

「クッ、ジュール隊、味方の援護に回るぞ!とにかく味方を撃ち落とされないようにしろ!!」

こうなってしまえば戦術クラスでの対応しかできないジュール隊は後手に回らざる得ない。イザーク達は各機、個別に行動することで部隊の崩壊を抑えようとする。

『想定通り、作戦に変更は無しだ――――全部隊、攻撃を開始せよ』

そして彼が現れる。一条の光がディアッカの乗るケンプファーの左肩を貫いた。

『グァッ!?』

「ディアッカ!」

ディアッカのケンプファーを撃ち抜いたのはクラウのの黒いゲルググだった。

『人が死に、その悲しみに涙を流す。高らかに悲歌(elegie)を謳いあげるがいいさ』

「貴様ァ!!」

現れたのは初期型のゲルググと思われる機体だ。最新鋭機ではないが機体のスペックとしてはザクと同等以上の筈である。だが、バックパックを取り付けていない事から性能はイザークの乗るリゲルグの方が上だとイザークはそう判断した。
ビームライフルを放ちながら、ビームサーベルを抜き、振り払う。イザークのリゲルグによるその攻撃は並のパイロットであれば反応する間もなく撃墜されただろう。

『一つ一つの動作が洗練されている。優秀なパイロットだと思うよ……だけど、技量が優れているだけじゃ、この機体にはかなわない』

「馬鹿な、パワー負けしているのか!?」

だが、そのイザークの攻撃は呆気なくシールドによって防がれ、そればかりか押し返される。そのままシールドで押し返されたリゲルグは反撃しようとビームサーベルを仕舞い、ビームライフルを再び構えようとするが、始めからシールドを持っていない右手にビームライフルを持っていたクラウのゲルググの方が先に追撃を行う。

『残念ながら今は君等の相手をしている暇はないんだ。俺に与えられた任務は君たちの相手じゃないからね』

「待て!」

押し返して体勢を崩したリゲルグに向けて放たれたビームの威力はかなりの威力を誇っていた。イザークはミネルバでの補給の際に渡されたゲルググのシールドを構えるが、シールドで防ぎきれずビームの命中した部分が融解する。
咄嗟にシールドが耐えている間に逃れることでビームによる攻撃を避けたが、その間にクラウのゲルググに逃れられてしまった。

『イザーク隊長!?』

「グッ、問題ない!それよりも部隊を立て直すのが先だ!」

クラウを逃してしまったことはイザークにとって非常にむかっ腹の立つ事だが、今は自身のその感情よりも優先すべきことがあると判断して部隊の指揮に集中することにした。
 
 

 
後書き
そろそろクラウのターン。 
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