とある英雄の学園生活
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第25話 学園都市理事長兼市長 ネイ・イチジョウ 後編
「ネイ……」
殴られた右頬を押さえ立ち上がろうとするとネイは俺の頭部めがけて蹴りが飛んできたので、俺は咄嗟に後ろに下がり蹴りを交わした。
「ネイ、なんのつもりだ、やめろ」
しかし今度は左ストレートを放つが殴られる瞬間に俺は彼女の手首を掴んだ。
「チッ」
女の子なんだから舌打ちはやめなさい。
ネイは左手首を掴んだ状態で右ストレート放つがそれも頬に当たる瞬間に手首を掴む。
「ネイ、いい加減にしないと怒るぞ」
「フン」
両腕の自由を奪われたネイはこともあろうに俺の股間を蹴りあげた。
「%&%$#”$%&&」
言葉にならない痛みが股間からくる
な、涙が出てきた。
しゃがみこんで股間を抑えているとネイは俺の前で仁王立ちしている。
「ネイ……なんで……」
痛みのせいかうまく話せない。
「痛いかしら、でも私の心は30年間痛かったのよ」
30年間放ったらかしだったことに怒っているのか。
だが俺だって30年間わざと放ったらかしにしていたわけでないことをネイは知っているはずだ。
俺の空白の30年間のことやそしてこの世界に戻ってきたことをアルト王が全世界に伝えたのだから。
なのになぜネイは怒っているんだ。
股間を蹴られた俺はうずくまり股間を抑えた状態で恐る恐るネイの顔を見る
怒った顔をしていると思っていたのだが逆でネイは涙を流し泣いていた。
「えええと、ネイ……その、すまなかった」
とりあえず謝る俺。
「ううっ……ぐすん」
「でも、ネイも聞いていただろう。俺は30年間暗黒世界をさまよっていて、1ヶ月前にこの世界に戻ってきたんだ。だから30年間わざと放ったらかしにしていたわけじゃないんだ」
ギラリ
泣きながら俺を睨むネイ。
「そんなの知っているわよ。アルトからの手紙に書いていたから……ぐすん」
「なら、わかるだろう」
「わかんないわよ!30年間は仕方ないとして、1ヶ月前に帰ってきているなら、なぜ私に手紙の1つでも送ってくれなかったの」
なんでそんなことで怒っているんだ。
「アルト王から手紙を読んだんだろう。それに1ヶ月後にはここに来ることも伝えていたから別に……」
「……ううっ」
ネイの涙が止まらないようだ。
必死に腕で涙を拭くネイ。
(綺羅様、ネイのことをもう少し考えてあげてください)
(何が?)
(ホントバカだね綺羅は)
(イフリート喧嘩を売っているのか)
(綺羅様、ネイはあなたの何ですか?)
(……家族)
(家族ですよね。だったら家族である綺羅様が30年間行方不明で、1ヶ月前に戻ってきたら普通の家族だったら会いに行くなり、手紙で連絡するなり本人が直接するのでわ)
(そうか、うんそうだな)
股間の痛みが引き俺はネイの前に立った。
あれ俺がネイを少し見上げる形になっている。
ネイの方が俺より身長が若干高いのだ。
ぐっ……俺もまだ成長期だから伸びるはずだ。
(綺羅)
(綺羅様)
ネイに身長が負けたことにショックを受けている俺にツッコミをいれる魔人2人。
(わかってるよ)
俺はネイの前で土下座をした。
日本の最上級の謝り方……土下座である。
「ネイ、すまなかった。アルト王が連絡していて1ヶ月後に会うから別に連絡はしなくてもいいかと思ってしなかったんだ。本当にすまなかった。反省している」
今回は俺が悪い。10対0で俺が悪い。だから土下座をする。
「ううん、私の方こそごめんなさい。再会を楽しみにしていたのに綺羅は無視して帰ろうとするから」
無視?無視なんかしたか俺……
「あ、生徒手帳に挟んでいた手紙か、すまん」
「ううん、私も名前を書いていれば良かったんだけど……」
そうだぞ、ネイが名前を書いていたら絶対に忘れなかったぞ。
だが名前がわからなかったにせよ、俺が手紙の通りに入学式が終わって待っていたらこんなことにはならなかったんだろうな。
反省しないと。
「ごめんなさい、ごめんなさい、綺羅ごめんなさい」
俺に抱きついてさらに泣き出すネイ。
「殴ってごめんなさい、股間を蹴ってごめんなさい」
「俺の方こそごめんな」
「ううん、戻ってきてくれてうれしいよ」
泣きながらも微笑むネイ。
俺はネイの頬に家族のキスをする。
「ただいま、ネイ」
「おかえりなさい、パパ」
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