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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第九十四話 遺伝子の支配

戦場を駆け抜ける自由の名を冠した翼を持つ機体、ストライクフリーダムは敵を薙ぎ払いながら戦線を突破し続ける。ミーティアが無い分、殲滅力には欠けているが運動性・機動力の高さには目を見張るものがあり、キラの乗るそのストライクフリーダムを傷つける機体は未だにいなかった。

「あの機体は――――」

そんな中で、戦場を駆けていたキラはある一機の機体を見つける。その機体はかつてキラ自身も乗っていた機体であり、今自身が乗っている機体にも名が残っている――――ストライクだった。

「連合機!でも、一体誰が?」

連合の残党部隊が四散しつつも一部は独自に行動を起こして戦っていることは事前に知っていた。だが、目の前で単機で戦い続ける機体は明らかに常軌を逸している。実力は本物のエースだと言えるほどのものであるし、機体の性能も改良されているためか決して低いわけではないのだろう。予備バッテリーと思われるものがバックパックのストライカーパックに大量に積まれていた。
だが、何よりキラの目を惹きつけたのは機体の操縦だった。僅かな癖と言っても良い。それがあまりにもキラの知っている人の操縦に酷似し過ぎている。だが、彼はアークエンジェルを守るために盾となり散っていった筈の人物だ。

『グッ、こちとらまだまだやられるわけにはいかないんでね!せめて策が実るまでは!!』

違うのかもしれない。寧ろ違う可能性の方が高いだろう。だが、だとしてもキラは目の前で動いていたその機体を無視できなかった。ストライクを操縦しているパイロットがムウ・ラ・フラガであるという可能性が少しでもあるというのであれば黙って見過ごす理由などキラにはない。

「援護します!合わせてください!」

『なッ、フリーダムだと!一体どういうつもりだ!?』

驚愕しつつもその言葉を受け入れて咄嗟に合わせる。ストライクのパイロットであるネオは、それに奇妙な感覚を覚えるものの、目の前の状況に対処するためにストライクフリーダムとの連携を取った。
周りにいた敵部隊は一掃させられる。ザクはその手に持っていた銃火器やバックパックを破壊され、グフは両手両足を穿たれ、ゲルググは頭部やコックピットを貫かれる。ゲルググだけがコックピットを貫かれたのはそれらの機体だけはネオが落としたからだ。

(甘ちゃんめ……武器や手足を奪ったからと言って抵抗できないわけじゃないんだぞ)

内心でそう思いつつも目の前の圧倒的とも言える動きを見て敵に回すのは得策ではないと思い、一応は救われた側だという事も含めて、ネオは相手にそのことを追求しようとは思わない。いや、そんな些事にかかわっている暇はないからだ。

『フリーダムのパイロット、目的は同じメサイアか?なら手伝え!あの要塞の防御を破壊するんだよ!!』

ネオからすれば相手が誰であろうと構わない。利用できる相手はとことん利用する。そう思い、話しかけたのだが、返ってきた応えは随分と予想していたものと違っていた。

「やっぱりこの声――――フラガ少佐!」

『誰が少佐だ!つーか君何なの、いきなり?フラガ?俺はネオ・ロアノーク大佐だ!』

キラからしてみればストライクの操縦の癖や声から明らかにムウ・ラ・フラガ少佐にしか思えない。しかし、ネオからしてみればいきなり知らない赤の他人の名前を出され、しかも階級も少佐扱いと両者は共に困惑するばかりである。

『チッ、まあそんな事で時間を喰ってる暇はねえ!手伝わないっていうなら俺は先に行くぞ!』

だが、ネオとしてはそんな些事に気を取られるわけにもいかない。そう思ってネオはそのまま進行していき、キラは困惑しつつも目的が同じことから共に行くべきだと判断した。

『船が突破に成功するためには時間までにあのリフレクターを出してるリングを破壊しなくちゃならない。だが……間に合うか』

メサイアの攻略は元々三機と一隻では無理のあるものだ。だが、それでも致命打を与えるための策を考えていた。母艦をメサイアへと取りつかせた後にその母艦を自爆させるのである。ガーティ・ルーにはその為の核も搭載させていた。廃棄された月基地で拾ってきたものの中にはニュートロンジャマ―キャンセラーもある。そして、元々核動力機があったガーティ・ルーには核自体もあり余っている。
勿論、ミラージュコロイドで隠しているからこその策であり、クルーはメサイア到達前にランチで脱出しているはずだ。慣性によってメサイアへと突っ込む無人のガーティ・ルーは発見さえされなければそのままメサイアに特攻することになるのである。

『ま、やってみせるさ。なんたって俺は、不可能を可能にする男なんだからな』

ネオはそんな事を呟きながらメサイアへと向かっていく。策を成功させるにはまずメサイア周囲に展開されている陽電子リフレクターを破壊せねばならないのだ。ストライクは敵の攻撃を受けながらも戦線を突破しようと進み続けた。







『――――よって、我らはその居城を破壊するためにこれより戦闘に対し、介入を行う』

「アメノミハシラ……オーブからある程度独立した組織だとは聞いていたけど、随分大胆な事をしにきたわね」

ミネルバの艦長であるタリアは開放回線で流されたアメノミハシラの放送を聞いて考え込む。彼らに対してどのように対応するべきか。味方というには立場はあやふやだろう。しかし、手を出さない、無視を決め込む、といった対応をするのも正しいかは怪しい。

「けれど、戦局を変えるにはその存在は大きいかもしれないわ」

少なくとも今現在において直接的に相対するような敵ではない。なら利用するべきだ。どの勢力も実際にそう思っている。ミネルバ側のザフトは邪魔をするのでなければ連合の残党やオーブ、アークエンジェルに対して積極的に攻撃を仕掛けることはしていない。
連合の残党は少しでもザフトの勢力を殺ぎたい、或いはコーディネーターを殺したいのだろう。その為に不利な方は勝手に自滅すると判断して有利な方に攻撃をしている。
アークエンジェルはタリアにはその目的は良く分からないが、彼らなりに戦争を止めようという意志があると理解している。

「味方部隊に通達して。今の放送を行った彼らは目的はこちらと同じものであると判断し、こちらから攻撃を仕掛ける必要はないものとみなします」

つまり、味方だとは思わないが敵と認知するわけでもない。軍人らしい考えだろう。アークエンジェルや連合の残党とは違い、第三勢力としては見なさないが、かと言って擁護する気も更々ない。
判断が下されれば、兵士は理解は早い。上の命令には自身に疑念が生まれなければ従うからだ。そうして動き出そうとした中で、少し離れた場所にいる数機のMSや艦から通信が入る。

『――何――れは――――赤――巨―な――ウアァァァッ!?』

『こちら、ボーンステル!メサイアの新型のMSがこちらの船を……至急この戦域から離れてくれ!この船が落とされれば、次は貴艦が――――ッ!?』

その報告を最後に味方のローラシア級からの連絡も途絶える。同時にその味方が居た方角からも爆発が確認できた。まず間違いなく落とされたのであろう。

「ッ、艦長!戦域から離れるべきです!ミネルバは旗艦です!落とされれば部隊は崩れて敗北してしまいます。ボーンステルの犠牲を無駄にするわけには――――」

「アーサー、もう遅いわ……既に相手はこちらを捉えたみたいよ」

タリアが言ったように赤い機体がこちらに向かってくるのがうかがえる。

「は、早い!?もうこんな所まで!」

「アスラン、任せれる?」

『分かりました艦長。あの機体は俺が抑えます。ルナマリアとショーンを連れて先に!』

そう言ってセイバーが赤い機体と対峙する。ビームライフルを牽制として放つが、相手の速度は全く衰えることなく距離を詰めてきた。

『ミネルバに近づけさせるわけにはいかない!』

そう言ってセイバーはそのままビームサーベルを引き抜いて斬りかかる。しかし、敵はそれを急制動を掛けることで躱した。セイバーの攻撃は空振りに終わり、逆に反撃を受ける――――かに思えたがアスランはそのまま機体を前方に一回転させることで踵落としを決めるかのように攻撃を繋げた。

『流石だな、アスラン。君のそのセンスは素晴らしいものだと思うよ』

『その声は……議長が!?』

上からの蹴りは腕によって受け止められ、接触回線によって言葉を紡いだパイロットがまさか議長だとは思わずアスランは驚愕する。だが、驚いたとしても動きを止めることはない。アスランはそのまま蹴りを入れていないもう一方の足を引き、ビームサーベルを展開させて腹部から肩に掛けて切り裂こうとした。

『そう簡単にやらせんよ』

議長はその攻撃をシールドで受け止め、腹部の拡散ビーム砲によってセイバーに対して反撃を仕掛ける。アスランは咄嗟に蹴りの反動を利用し、後ろに下がりながらMA形態へと変形することで上方へと逃れ、攻撃を回避した。

『議長、貴方は一体何を望んでいるというんですか!平和をもたらすと言いつつも銃を突きつけ、支配をもたらそうという!それで本当の平和が訪れると、本気そう仰る気なんですか!?』

『人は本質的に支配されることを望んでいるのさ。自由とは理性からの解放であり、法は支配や束縛を指し示す。だが一方で、人は人によって支配されることを嫌う。人が成す出来事はその多くが完璧でないからだ。だからこそ、自分は不当な扱いを受けている、悪いのは自分ではなくそれを利用する他者だと、支配者が悪いと言い、それを討つ事になる』

MA形態に変形したセイバーはそのまま翼のビームブレイドで切り裂こうと不規則に移動しながら突撃する。しかし、議長はその動きを見切り、逆にビームトマホークで翼を切り裂いた。

『グァッ……!?』

『歴史は常にその繰り返しだ。君も見ただろう。そして、共に戦ったであろう?総ての罪はロゴスにあると、そう言っただけで大衆はそれこそが総ての真実だと思い、動いた。実に愚かなことだとは思わないかね?まるで自分のこの手は汚れていないと、正しいことをしたのだと、間違った解釈をする』

大気圏内での戦闘でない為、翼部が破壊されてもダメージは思った以上に少ない。アスランは一度距離を取り直し、収束ビーム砲を構えて放つ。しかし、議長はその攻撃を全く意に介さず避け、そのままメガビームライフルを撃ちこんできた。セイバーはシールドでその攻撃を受け止めるが、出力が高いのか吹き飛ばされてしまう。

『グゥ……ッ!なんて火力だ!?』

たかが一発のチャージすらしていないビームの威力に押し込まれるセイバー。それだけでも驚異的な威力を誇っている事が分かるが、それ以上にその威力の攻撃を連射するという事が異常であり、脅威だった。

『故に、新たな世界を創るために、私自身が武器を取るのだよ。私は人という存在が正義を突き付けれるものだとは思わない。そして、正しいとも――――だが、遺伝子は真実を突き付ける。人が人を支配するときは終わり、遺伝子が人の世を支配する世の中となる。やがて人は、己の在り方を、生き様を、立場を知り、誰も反発をおこそうとはしない世界になる』

反撃も近づくことも迂闊に出来ない。アスランは攻撃を必死に躱すか防ぐしか出来なかった。

『そんな世界は、間違っている!』

だが、だからと言って納得などできるはずもない。アスランはSEEDを覚醒させ、その攻撃を見切り躱す。いくら威力が高くとも、撃っているのは一つしかないビームライフルだ。避けれないわけではない。

『人が人を支配している――――確かに今の世界はそうなのかもしれない。だからと言って、遺伝子が人を支配するなど、最早それは人の生きる社会ですらない!議長、貴方は世界の総てを見てきたと言えるのか!人は共に手を取り合う事も、助け合うことも出来る!その貴方の掲げる理屈は、都合の悪い一面を誇張して拾い上げているだけに過ぎない!!』

『だが、一つの事実として確実に存在していることだ』

攻撃を見切ったアスランは議長の乗るナイチンゲールに近づき、ビームサーベルで斬りかかる。その攻撃はシールドによって防がれたが、セイバーの近接武器はまだ多く存在している。

『人が欲している本当の平和はそんな単純なものじゃない!自由や支配、それ以外にも多くの拠り所となるものが存在して、それが絡み合うのが世界だ!一人一人の望む平和の形は違っているかもしれない。だが、だからこそ、明日を信じて人は生きることが出来る!!』

『なるほど、君の意見も確かに理解できる。しかしだ、ならば私は私自身の望む平和を創るのだと、そう思う事に何の問題ある?』

セイバーのもう一方の手に装備されている実体シールドからビームを展開し、切り裂く様に振るう。しかし、その攻撃も隠し腕から現れたビームサーベルによってシールドに攻撃することで腕の動きを逸らされ、狙いを外された。

『ッ……ビームサーベル!?』

『君も私の創る平和への礎となるがいい』

左手のシールドと隠し腕から現れるビームサーベルによって両腕の攻撃を止められたセイバー。止めだと言わんばかりにナイチンゲールは空いている右手のビームトマホークを振り下ろしにかかる。

『やら、せるかッ!』

ビームサーベルを展開させた足を振り上げ、逆に右腕を切り裂こうとする。それを躱そうと議長は機体を少し傾ける様に躱し、アスランも足を振り上げたことによって機体が傾く。結果、互いの位置が僅かにずれあう事で両者の攻撃が命中することはなかった。

『俺はそんな世界を認めるわけにはいかない……それは平和でも何でもない、緩やかな死を生むだけの社会だ。議長、俺は貴方を止めて見せる』

体勢を崩したことで互いに距離を取る。アスランはビームサーベルを握り直し、決意を新たにするようにそう宣言した。
 
 

 
後書き
何故かアスランの死亡フラグが立ったような気がする……なんか前話で散々フラグのたったアレックより濃厚な死亡フラグな気がするのは気のせいなんだろうか? 
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