八条学園怪異譚
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第五十三話 空手部主将その十一
「それでも見つけたいのよね」
「はい、何かムキになってますけれど」
「自分達でもそう思いますけれど」
「まあ、怖いもの見たさっていうか興味のあるものならね」
人は見つけたくなる、茉莉也はその人間心理も理解してそのうえで二人に話す。
「探したくなるわよね」
「はい、私達そんな感じです」
「それで探してます」
「まあ泉をどうするかはその時に考えるってことね」
茉莉也は二人の言葉をこう理解した。
「それじゃあね」
「はい、それじゃあ」
「今度は」
「百鬼夜行とコンビニ、どっちかにね」
行けばいいというのだ。
「本当にあと少しだからね」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
「ではだ」
大田は二人の話が落ち着いたところで言ってきた。
「君達のこの道場ですることは終わったな」
「はい、ここも泉じゃなかったですね」
「残念ですけれど」
「ではわしはこれから修行をするが」
「えっ、修行!?」
「修行ですか」
そう言われてだ、二人は目を瞬かせて大田に問い返した。
「幽霊になられてもですか」
「修行されてるんですか」
「真夜中の道場で毎日修行している幽霊ね」
茉莉也はここでまた二人に話した。
「それがこの人なのよ」
「いや、それでも今も修行されてるとか」
「普通に凄いんじゃ」
「当然のことだ」
大田は二人の問いにこう返した。
「修行を続けることはな」
「けれど今幽霊ですよね」
「そうなられてますけれど」
「確かに実体はない」
死んで魂だけになっている、このことは紛れもない事実だ。
だがそのことをだ、大田は何とも思わずこう言うのだ。
「しかし魂はある、武道は魂でするものだ」
「だからなんですか」
「今も修行をされるんですか」
「魂の技を磨き心を鍛える」
これが大田の考えだった。
「私はそうしているのだ」
「ほら、さっきもお話に出たけれど」
茉莉也も二人に話す。
「武道は心も鍛えるものでしょ」
「はい、そうですね」
「そのことは」
「だからよ」
それでだというのだ。
「大田さんは今も修行をされてるのよ」
「心を鍛える為に」
「今も」
「心のない武道は武道ではない」
大田はこのことについては怒りさえ見せて言った。
「それは単なる暴力だ」
「その剣道部の暴力教師ですか」
「そういう風になるんですね」
二人もこのことはわかった、心のない武道なぞ武道ではないのだ。まさに単なる暴力に過ぎないのである。
「じゃあ格闘技もですか」
「心がないと」
「腐った輩が行うものは武道ではない」
大田はこうも言い切った。
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