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久遠の神話

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第七十六話 富を求めるならその八

「是非ね」
「そうですか、それでは」
「それで今からかな」
「今夜どうでしょうか」
 聡美が出した時間はこの時だった。
「今夜の十二時に」
「場所は」
「貴方のお好きな場所を」
 そこは何処でもいいというのだ。
「仰って下さい」
「そうだね、じゃあ近くでいいよ」
「近くですか」
「中華街でどうかな」
 彼が今住んでいるその場所でどうかというのだ。
「あそこでね」
「わかりました、そこですね」
「それではね」
「今夜十二時に」
「それで私の最後の相手は誰かな」
「既に用意してあります」
 聡美は今は落ち着いている言葉で王に答えた。
「今ここに出すことも出来ますが」
「じゃあ出してもらおうかな」
「わかりました、それでは」
 その言葉に応えてそうしてだった、聡美は目の前に一体の怪物を出してきた、それはどういった怪物かというと。
 巨大な一つ目の大男だ、それはまさに。
「サイクロプスか」
「無論レプリカですが」
「確か炎と鍛冶の神へパイストスの助手達だったね」
 よくゲーム等で怪力だけの怪物と思われているが実は違うのだ、神話におけるサイクロプスはシチチアで羊飼いをしている者達もいれば王の言う通りヘパイストスの助手として働いている者達もいるのだ。
 そして目の前の隻眼の巨人はというのだ。
「そちらか」
「あらゆるものを生み出すヘパイストス兄様の助手ですから」
「富もだね」
「含んでいます」
 そうだというのだ。
「百億、この国の価値にして」
「それだけの富を持っているんだね」
「そうです」
 まさにだ、それだけのものをだというのだ。
「ですから貴方がこの怪物を倒されれば」
「富が手に入るね」
「はい」
 まさにその通りだというのだ。
「そうなります」
「わかったよ、じゃあね」
「今夜十二時ですね」
「中華街でね」
 神戸のそこでだというのだ。
「会おうか」
「それでは」
 こう話してそしてだった、聡美は巨人の姿を消した。そのうえで王にあらためて話した。
「貴方にも戦いから降りてもらいますので」
「有り難いね、それは」 
 王も聡美の申し出に心から礼を述べる。
「私も命のやり取り、しかも刃を使ったそれは本意ではなかったからね」
「だからですね」
「うん、その話に乗らせてもらうよ」
 王は確かな笑みで聡美に答えた。
「楽しみに待っているよ」
「では」
「しかし。話が急に動いているね」
 王は話が整ってから聡美にこうも言った。
「近頃ね」
「そうしています」
 聡美の方もその通りだと答える、左右の智子と豊香も無言でいることによって彼女に賛成していることを示している。
 その三人の中心にいてだ、聡美は王に答えているのだ。
「今回の戦いで終わらせたいので」
「剣士の戦い自体を」
「剣士が全て戦いから降りれば」
「戦いはなくなるのかな」
「そうなります。戦う者がいなければ戦いは成り立ちませんね」
「確かにね」
「これまでは私も。長い間」
 神話の頃から、その頃からだったというのだ。 
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