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戦国異伝

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第百五十一話 四国と三河その三

「よいか、阿波の白池の方からも兵を出しておる」
「では、ですな」
「そこからも兵が来ますか」
「そうじゃ、案ずることはない」
 こう言って城を守っていた兵達を安心させたのだ、これはその通りのことであるだけに余計に彼等の励みとなることだ。
 そして伊予との境のことも話したのだった。
「伊予との境からも兵が来ますか」
「我等の為に」
「うむ、だから讃岐は必ず落ち着く」
 勝ってだ、そしてだというのだ。
「だから次の城に向かう」
「では次の城は」
「一体どの城に」
「十河城じゃ」
 讃岐で最も大きな城だ、そこに向かうというのだ。
「あの城も今門徒達に攻められておるな」
「はい、あの城にも門徒達が攻め寄せています」
「それもかなりの数が」
「だからあの城にも向かう」
 そのうえで門徒達を蹴散らすというのだ。
「さすれば伊予との境からの兵とも合流出来るし白池からの兵とも合流出来るからな」
「では讃岐での戦は十河城を何とかすることですか」
「それが第一ですな」
「そうじゃ、だから向かう」 
 その十河城にだというのだ。
「よいな」
「では我等も」
「共に」
 城の者達も応える、そしてだった。
 彼等は城に僅かな者達を残したうえで元親と共に向かう、紫と青の軍勢が凄まじい速さで十河城に向かう。
 十河城は兵達の話通りかなりの門徒達に囲まれていた、灰色の門徒達とその他にも多くの者達が囲んでいる。
 その彼等を見てだ、元親は首を捻って兵達に言った。
「あれはまことに門徒達か?」
「そういえば見事な刀や槍を持っている者が多いですな」
「弓矢や鉄砲も」
 そうしたものをだ、元親の家臣達も見て彼に応える。
「一向宗は百姓、鍬や鋤を持っているのが普通というのに」
「国人達も全くと言っていい程あちらについておらぬというのに」
 これは信長の善政と取り込み策が功を奏したのだ、その結果四国でも国人達は殆ど一向一揆に加わっていないのだ。
 だが、だ。彼等はというと。
「しかしこれは」
「具足を着けている者も多いです」
「確かに鋤や鍬を持っている者が主流ですが」
「妙に」
「ううむ、わからん」
 元親も首を傾げさせて言う。
「これはどういうことじゃ」
「どうも妙ですな」
「四国にあそこまで鉄砲があるのか」
「我等もそれなりに鉄砲を持っていますが」
 これは織田家に加わっているからだ、長宗我部の兵達も鉄砲をかなり持っているのだ。
 だが、だ。その彼等と比べても遜色ないまでなのだ。
「この数は」
「一体」
「どういったことか」
「当家と同じだけ鉄砲を持っている様ですが」
 織田家と比べて、というのだ。
「これは一体」
「どういうことでしょうか」
「わからぬ」
 どう考えてもだった、今は。 
 しかし考えても埓が明かない、それで元親は今彼が率いている者達に告げた。 
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