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八条学園怪異譚

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第五十三話 空手部主将その四

「大体どれ位ですか?」
「そんなに強いんですか?」
「十段が最高位よ、これはどの武道でも同じよ」
 茉莉也はその二人に空手だけでなく武道全体のことを話した。
「初段からはじまってね」
「全部で十段ですか」
「そのうちの八段ですか」
「初段から八段になれる人はどの武道でも僅かよ」
 どれだけ少ないかもだ、茉莉也は二人にこう話した。
「それこそ東大に入るより難しいから」
「そんなに難しいんですか!?」
「東大よりもですか」
「そうよ、かるたで言えば全国大会優勝よりもね」
 二人の部活にも例える。
「難しいわよ」
「ううん、そんなにですか」
「難しいんですね」
「だって、東大は誰でも受けられるでしょ」
 合否はともかくとしてだ。
「けれど武道はまずは初段になって一段ずつ上がっていくものだから」
「それで、なんですか」
「八段までは」
「そうよ、滅多になれないのよ」
 そうしたものだというのだ。
「武道の場合はね」
「ううん、じゃあ一気に八段のテストとか受けられないんですね」
「そういうことは」
「そう、一段ずつだから」
 普通にやっていればだ、名誉で貰える場合もあるがこれはあくまで名前だけだ。
「だから難しいのよ」
「じゃあその人は相当強いんですね」
「本物の強さなんですね」
「そうよ」
 こう話すのだった。
「何でも絡んできたヤクザ屋さん七人をのしたとか」
「うわっ、ヤクザ屋さんをですか」
「七人も」
「らしいわね、ドスとか持ってたらしいけれど」
 そうした相手が七人いても勝てた、確かにこれは相当な実力がないと出来ない。
「それでもなのよ」
「七人を一人で、ですか」
「滅茶苦茶強い人なんですね」
「ええ、鬼とか言われてたらしいわ」
 それがその道場にいる先生だというのだ。
「仮面ライダーみたいだったらしいわよ」
「仮面ライダーですか」
「そこまでの人だったんですか」
 二人も紅茶を飲んでいる、そのうえで強張った顔で茉莉也に応える。
「何かお会いするのが怖いですね」
「殴られたりとかは」
「幽霊だからないわよ」
 実体がないからだ、それはこの幽霊でもだ。
「殴られても透けて終わりよ」
「じゃあそんなに怖がる必要jはないですか」
「そうなんですね」
「そうよ、それに確かに強かったけれど」
 人間時代はそうだった、だがそれでもだというのだ。
「心も鍛えてる人だったから」
「心身共に、ですか」
「鍛えている人だったから」
「健康な精神は健康な肉体に宿る」
 茉莉也はティーセット中段のサンドイッチ、デザート用に中には苺やオレンジをスライスして生クリームを入れたケーキ状のそれを食べながらこの言葉を出す。
「これは宿るかし、だからね」
「宿って欲しいものだ、ですね」 
 聖花は茉莉也の今の言葉に突っ込みを入れた。
「そういうことですね」
「そう、身体を鍛えていてもね」
「心もって人は少ないですね」
「よくいるでしょ、運動部でヤクザみたいなの」
「はい、確かに」
「ああいうのは屑よ」
 茉莉也は実際にそうした輩について忌々しげな口調で述べた。
「人間としてね」
「最低ですよね、暴力を振るう奴って」
 愛実は茉莉也以上に忌々しげな口調だった、子供の頃に男の子達にいじめられてからそうした人間が嫌いなのだ。
「どんな素晴らしいスポーツをしていても」
「何か素晴らしいことをしていてもそれでいい人とかはないから」
「そこでどう自分の心を鍛えるかですね」
「そうよ、空手をしていてもね」
 今回二人が行く道場で行われている武道にしてもだ。 
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