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久遠の神話

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第七十六話 富を求めるならその三

「してみればいいよ」
「おいおい、そこでそう言うのかよ」
「僕は人は殺さないから」
 このことは守るというのだ。
「料理以外ではね」
「料理の時は仕方ないよな」
「料理はね、人が生きる為に素材を殺さなければならないものだよ」
 こう中田に話すのだ。
「だからその命を貰い受けて美味しいものを作る」
「けれど殺人はか」
「それは罪だからね」
 こう考えているからだというのだ。
「私は戦いでも人は殺さないよ」
「前は仕方ないとか言ってなかったかい?戦うのなら」
「確かに言っていたね」
 王は自分の言葉を否定しなかった、過去はそう言っていたし考えていたというのだ。だが今はどうかというと。
「それでもね」
「今はか」
「そうは考えていないよ、あの時は強がっていたけれど」
「人は殺せないんだな、あんたには」
「間違ってるからね」
 つまり罪だというのだ、殺人はだ。
「しないよ、絶対に」
「そうか」
「私は元々生き残ればいいから」
 そうした考えだからだというのだ。
「戦うにしても誰も殺したくないよ」
「それも難しいと思うがね」
 剣士同士の戦いはまさに互いに生きるか死ぬかっだ、そうした戦いだからだというのだ。
「それでもなんだな」
「百億があればそれでいいし」
 それだけあれば充分だという額のだというのだ。
「それでいいと思っているからね」
「じゃあ百億手に入ればか」
「戦いも降りるよ」
 目的を達すれば、というのだ。
「もうね」
「そうか、じゃああんたが戦いから降りることを祈るよ」
 中田はここまで聞いて笑ってこう述べた、今は餃子で炒飯を食べている。これも日本人独特の食べ方である。
「俺の為にもな」
「君の為にもだね」
「敵は少ない方がいいからな」
 口の右端を歪めて笑ってみせての言葉である。
「百億手に入れなよ」
「そうしたいものだね」
「ちょっと大きな額だけれどな」
 実際は少しどころではない、百億となると相当な額だ。
 だがそれでもだ、彼等はなのだ。
 それでだ、こうも話してであった。
 王は中田の炒飯をラーメンや焼き餃子をおかずにして食べる食べ方を見てそれでこんなことも言ったのだった。
「一つ思うけれど」
「俺の食べ方だよな」
「中国の北の方ではラーメンは主食だからね」
「餃子もだよな」
「水餃子ね」
 中国の北部、淮河から北ではそちらが主流だ。焼き餃子は東北の一部の料理なのだ。
「それだからね」
「あれも好きだけれどな」
「今は焼き餃子だね」
「そっちだな」
「広州では蒸し餃子だよ」
 王の故郷のそちらではそうなるというのだ。
「あちらは点心、飲茶だけれど」
「こうして餃子で炒飯を食うことはか」
「麺にしてもね」
「主食で主食を食うってことになるからか」
「ないね」
 日本独自の食べ方になるというのだ。
「日本人にとっては主食はあくまで御飯だね」
「ああ、うどんとかはならないな」
 特に関西ではそうなる。奇しくも工藤達が智子と話したことだった。 
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