Element Magic Trinity
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立ち上がれ!
「うおおおおおっ!」
「らあああああっ!」
火竜と雷竜、2つの雄叫びが響く。
同じ紋章を刻む2人は別の目的の為、敵対する。
「オレの前から消えろ、ナツーーーー!」
「お前はオレが止める!」
お互いが己の右拳に炎と雷を纏い、お互いに向かって駆けていく。
「ギルドは死んでも渡さねぇ!」
ナツは叫び、右拳を強く握りしめる。
「オレ達の、帰る場所だから!」
その目には強い意志が宿り、その拳はその意志を表すかのように強く握られる。
ラクサスの目にもナツとは違う意志が宿され――――――
「だああああああっ!」
炎を纏った拳と雷を纏った拳。
2つの拳は交差し、向かい――――――
「ナツ!」
レビィが叫んだ。
ナツの拳はラクサスに届かず、ラクサスの拳はナツへと届き、殴り飛ばされたのだ。
「ぐっ!」
床に倒れたナツはすぐさま体制を変え、ラクサスを鋭く睨む。
その息は上がっている。
ラクサスの息も上がっていた。
「だらぁっ!」
勢い良く地を蹴り、再びナツはラクサスへと向かっていく。
「この・・・死にぞこないがぁっ!」
向かってきたナツに拳を決め、続けざまに地面に叩き伏せる。
その威力によって床の一部にヒビが入った。
「テメェ如きがオレに勝てる訳・・・」
そこまで言いかけ、ラクサスは言葉を止めた。
「う・・・ぐ・・・ふ・・・」
ガッと床を掴み、ナツは体を小刻みに震わせながら起きあがる。
「ナツ・・・」
「ドラグニル・・・」
そのナツの姿にレビィは両手で口を覆って目に涙を溜め、クロスは痛みに顔を歪めながら呟き、フリードはゴクリと喉を鳴らした。
「ギルドはお前のモンじゃねぇ・・・よ~く考えろ、ラクサス・・・」
切れたのか唇から血を流し、息を切らしながらナツは呟く。
その目には闘志が存在し、その炎は消えるどころか揺れる事さえしなかった。
「黙れェ!」
怒鳴ると共にラクサスの蹴りがナツの腹部に決まる。
「ザコがオレに説教たァ100年早ェよ!アァ?」
耳を塞ぎたくなるような音と同時に繰り出されるラクサスの蹴り。
そしてラクサスは雷を纏った足でナツを蹴り飛ばした。
何の抵抗もなく、ナツは吹き飛ばされていく。
だが―――――――
「!」
――――――ナツはまだ立ち上がる。
「まだ・・・立つのか・・・」
体中に傷を負い、体力がもう限界に近く、相手が自分よりかなりの格上。
そんな最悪の状況でも、ナツは倒れない。
ヨロヨロと、立ち上がる事すら限界だろうに、ナツは立つ。
「もう止めて・・・ティア、ナツを止めて・・・ナツが死んじゃう・・・」
目に涙を溜め、隣に立つティアにレビィは頼み込む。
が、彼女は知っていた。
今自分がすべき行動は、ナツを止める事じゃないと。
「・・・無駄よ」
「ティア?」
「今のアイツには『戦う理由』がある・・・今私がアイツを止めても、ナツは止まらない・・・あのバカは、誰にも止められないの。今は、ね」
一切の迷いもなく言い切るティアの目には、はっきりと映っていた。
彼女がラクサスを天敵として知るように、何かと突っかかってきたナツの事を、彼女は誰よりも知っていたのだ。
(バカよ・・・昔からアイツは大バカよ。だけど・・・そのバカに救われたのは誰だったかしらね)
2年前の『あの日』の事を思い出し、ティアは視線を落とす。
誰の前でも泣かなかった少女に涙を流させたのは、あのバカに他ならないのだ。
ただ目に涙を溜めるだけだった閃光を救ったのは、あの大バカなのだから。
「ガキがぁ~・・・」
尚も立ち上がるナツをラクサスは怒りの表情で見つめる。
「跡形もなく消してやるァ!」
叫んだ瞬間、翳し掲げたラクサスの両手に雷の矛が現れる。
それを見たフリードの表情が変わった。
「よせ!ラクサス!今のナツにそんな魔法を使ったら・・・」
フリードの叫びは、空しくも空を回った。
その言葉は怒り狂った雷竜には届かない。
「雷竜方天戟!」
巨大な雷の矛は、真っ直ぐにナツへと向かっていく。
「うう・・・」
「殺す気かぁっ!」
フリードが叫んだ。
「くそォ・・・くそおおっ!」
目の前にまで迫ってくる雷の矛。
が、蓄積されたダメージの大きさはかなりのもので、ナツはその場にガクンと膝をつく。
「イヤーーーーーーーーー!」
「ドラグニルゥゥゥゥゥゥッ!」
レビィとクロスの悲痛な叫びが響く。
そして雷の矛はナツに直撃―――――――――
――――――せず、目の前でカクンと軌道を変えた。
「!」
突然、何の前触れもなく行く先を変えた雷の矛を目で追う。
その先にいたのは――――――――
「うおおおおっ!」
左腕を鉄へと変えた、ガジルだった。
「があっ!」
その凄まじい雷の威力に吹き飛ばされる。
自分も大きなダメージを受けているにも拘らず、ガジルはナツを助けたのだ。
「ガジル・・・」
「ガジル様!」
「鉄・・・まさか、自ら避雷針に・・・」
「身を挺して、レッドフォックスはドラグニルを・・・」
その行動にレビィは呟き、シュランは慌てたように叫び、フリードとクロスは目を見開いた。
「ガジル」
煙と共に倒れていくガジルにナツが声を掛ける。
「行け」
全身を襲う痛みを堪えるような表情、顔を少し歪めてガジルはただ一言言い放つ。
その言葉に―――――ナツの目に怒りと鋭さが戻った。
「・・・いける」
ティアが呟く。
ナツが体を起こすと同時に全身から炎が溢れ、床がめきめきと音を立てる。
「お・・・おのれ・・・」
妖精の法律に雷竜方天戟。
2つの強力な魔法を放った事で、ラクサスは魔力が切れたのか体をがくがくと震わせていた。
否――――それは恐怖かもしれない。
目の前に立ち上がろうとしているナツに対しての、何度倒れても起きあがるバカに対しての。
「火竜の・・・」
その目には怒りと闘志、その顔には怒りと痛みを映し、ナツは駆けだす。
負けられない理由が、戦う理由が、ナツを突き動かしていた。
「おのれェェェェっ!」
ラクサスが叫んだ、瞬間―――――――
「鉄拳!」
「がはっ!」
炎を纏ったナツの右拳がラクサスへと炸裂する。
しかし、ナツの攻撃はこれで終わりではない。
これこそが始まりである。
「鉤爪!」
続けて炎を纏った左足の蹴り。
「翼撃!」
炎を纏った両腕の薙ぎ払い。
「劍角!」
全身に炎を纏い、頭突き。
「砕牙!」
炎を纏った爪を横薙ぎに振るう。
そして、構えた。
「その魔法、竜の鱗を砕き」
「竜の肝を潰し・・・」
「竜の魂を狩りとる・・・」
「滅竜奥義・・・」
レビィ、クロス、シュラン、フリードが呟く。
そして―――――紅蓮は放たれた。
「紅蓮爆炎刃!」
ナツの螺旋状に振るった両腕から、炎の刃が放たれる。
炎が消えると同時に、ラクサスの体は何度か地面を転がった。
その光景にレビィとフリード、クロスとシュランは目を見開き、ガジルは笑みを浮かべ、ティアはふっと口元を緩ませる。
(ラクサスが・・・)
そして転がったラクサスは、気を失い、動かなかった。
(負けた)
それが指すのは、ラクサスの敗北。
それと同時に――――ナツの勝利を示していた。
「オオオオオ!」
そして、声が響く。
戦いに決着がついたのを現すかのように、火竜の雄叫びが響く。
「オオオオオオオオオオオオオッ!」
激闘が終わったカルディア大聖堂。
そこに、ナツの雄叫びが響き渡ったのだった。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
きゃー、もうBOF編が終わる。
そしてついにミスコン結果発表・・・さて、結果はいかに!
感想・批評・ミスコン投票、お待ちしてます。
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