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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第九十一話 顕現する赤

「それでは、現状はこれ以上オーブに対して過剰な干渉を行う気はないと、それがプラント側の示す意思表示なのですね」

「はい、こちらとしてもこうなってしまってはプラント自身や地球の戦争被災地の支援が優先されるでしょうから――――デスティニープランの導入も親プラント派の地域を中心に段階的な導入が検討されています。尤も……これはあくまで予想であって最終的に我々には判断できることではないのですが……」

プラントに居たカガリは現在プラント側の外交官と話を進めていた。彼らは一応話し合いによって解決しようとしているのだが、現在のプラントの情勢が内乱に近い非常に不安定な状態であることも含めてあまりあてに出来るような話し合いにはならないでいた。

「――――だか――、少――――って言――――――」

「……いったい何だ?」

「少し確かめてきます」

外で話し声、というか一方が主張している声が聞こえ、カガリと外交官は話を止めて何なのかとカガリ尋ねる。相手も分からないらしく確かめることにしたようだ。カガリとしても話がこれ以上煮詰まることはないだろうと判断して外交官を止めなかった。

「ああ、もういいですわ!勝手に入らせていただきます!」

「ら、ラクス様!?」

「なッ!?」

ドアを開けて確かめようとするのと同時に、向こうから扉を開け入って来る。外交官が驚いたようにそれはラクス――――いや、ラクスの偽者であるミーアだった。

「お久しぶりですわ、カガリさん?少しお話がしたいので二人きりにしてもらえないかしら?」

演技なのだろう。カガリはこの偽者のラクスとは初対面であるし、ミーアという個人も全く知らないのだが前大戦で面識がある本物のラクスだという演技を演じているのだ。

「あ、ああ……そ、そうだな!久しぶりというべきなのかもしれないな!?すまないが席を外してもらえ……いや、二人で話せる別室を用意してもらえないだろうか!?」

少々どころかかなり焦っているが、それは突然訪問された側である外交官にしても同じなのだろう。機械のように首を縦に振りながら、抜け目なくサイン下さいと彼は要求していた。
その後、部屋に案内されたカガリとミーアは目の前に紅茶と茶菓子を置かれ、そのまま二人だけで向かい合う。

「えーと、はじめましてというべきなのか、私は?」

困惑していたのは当然カガリの方である。初対面の相手に、そういう演出だとは理解しても久しぶりなどと言われ、挙句話がしたいなどといわれたのだ。

「そうね、私とあなたが会うのは初めてよ。でも、私は貴方の事を事前に少しだけ知っているわ。貴方とアスランが恋仲だったって事も含めて」

「ど、どこでそれを……」

色々と気まずい雰囲気である。オーブの上層部では公然の秘密に近いものではあったが、少なくともプラントでは知られていないはずの情報だ。「この泥棒猫!!」とでも言ってやれば良いのか?などと見当違いな方へと思考が飛びそうになりつつもカガリは冷静に対応していた。いや、表面上は冷静に対応して見せた。

「確かー、誰だったかしら?あの議長のお付きの人?そう、クラウっていう人から教えてもらったのよ!」

クラウ、と言われてカガリに思い浮かべたのはミネルバに居た時に議長の傍に居た人物だった。彼の事をそれ以外で全く知らないカガリとしてはどう反応を返せばいいのか分からない。

「それでね、あの……本題なんだけど、私をアスランの所まで連れてって欲しいの!」

「はあ!?」

とうとう頭がショートしたカガリが思わず叫んでしまったのは、仕方のない事だろう。

「ああ、ごめんなさい!順を追って説明するわ」

叫んだカガリの様子を見てミーアも自分の言った突拍子のないことに流石に叫ばれてしまうのは仕方がないと理解したのだろう。順を追って説明し直した。

「……つまり、あれか?アスランにデスティニープランの正当性を問われて、自分でも分からなくなってきたところでアスランが寝返ったから自分もそっち側につきたいと?そういう事なのか……」

「はい、本当なら貴女に言うような事でもないという事はわかっているのだけど……」

ミーアには自分の持っているコネの中に議長の息が掛かっていないものは存在しないのだ。護衛のSPもマネージャーも彼女の正体を知っている者はほぼ全員が議長の子飼いである。ミーアが自分で動こうにも無理がある。かといって周りには頼れない。となれば外部の人間が一番いいとミーアは判断したのだ。

「はあ、全くだ。私にそんなこと言われてもどうすることも出来ないぞ……」

しかし、カガリを頼られても無理なものは無理である。カガリにも連れていく手段などありはしない。大体もし彼女を連れていけたとしても自分は確実に拉致犯罪者だ。テロリストだと罵られたこともあるが、その点では大いに反省しているし、せめて少しでも責任を取る為にと、こうやってプラントと交渉しているのだが、そんな事になってしまえば総てが水泡に帰す事になる。

「私から言えることは一つだ。アスランを信じてやれ。あいつは不器用だけど自分の決めたことはやり通す奴だ。プラントは議長の方を支持しているが、アスラン達ならきっと何とかしてくれるさ」

カガリはそうミーアを説得して、しばらくの間、アスランという共通の人物を話題に話し合うのであった。







『コーディネーターの兵器。俺達ナチュラルが破壊する!』

『邪魔するんじゃねえよ!雑魚なんかがさァ!』

赤と青の二機が連携しながら戦線を突破していく。ロッソイージスとG-Vはザフトの量産MSを次々と落としていくが戦況は芳しくなかった。それは当たり前のことだと言える。元々たった二機で戦線を突破するという無茶な状況なのだ。落とされていないだけで十分だと言えるだろう。

『アウル、出過ぎるな!落とされるぞ!』

『んなこといったってよ!?』

とにかく敵の数が多い上に四方に囲まれている状況だ。今は連携して当たっていることで何とか戦えているが、時期に耐え切れなくなってしまうだろう。そして、この状況下で最も厄介なのは彼らの立場だった。

『喰らえ!』

エミリオはロッソイージスのスキュラを敵艦のナスカ級を撃ち落とす。だが、落としたと同時に後ろにいたザフトのMS――――ゲルググC型のキャノンがロッソイージスに向けて放ってきた。その攻撃を回避しつつ、ビームライフルで頭部を撃ち抜く。センサーとしての役割を果たしている頭部が破壊された以上、背部のビームキャノンで正確に狙いをつけることは難しいだろう。

『クッ、どこを向いた所で敵というのがこれほど厄介だとは……』

ファントムペインの所属で無くなったとしても彼らの乗っている機体はファントムペインのものだ。つまり、ザフトにとってはミネルバ側であろうがメサイア側であろうが敵であることに変わりはない。イザークのように柔軟に判断を下せる隊長格であるならともかく、一パイロットとしては彼らは敵であるという認識しかなされない。
階級制度のないザフトパイロットはその場の判断を個人で行う傾向にあるが、だとしても判断というのは多数に流されやすいのが人間というものだ。彼らに攻撃を仕掛けないミネルバ側のザフト兵も当然いるのだが、攻撃を仕掛けるパイロットがいる分、どうしても反撃を受けてしまい、自衛行為として攻撃を仕掛ける者もいる。

『ええい。邪魔すんなよ!!』

アウルがビームサーベルで突っ込んできたザクを切り裂くが、別方向から放たれるビームに動きを阻害されてシールドで防御する。戦線の突破は困難かと思っていたその時、彼らの近くに二機のMSが紛れ込んできた。

「クソッ、脚部スラスターまで悲鳴(アラート)上げてやがる!?」

『どうした?一矢報いる気なのではなかったのかね?』

「うるせえ!満足に動けない機体一機仕留めれねえテメエがいえた台詞か!」

一機は見るからに限界を迎えている機体であり、武装もビームシールドを時折展開しているのみである。一方でもう一機の機体は明らかに一線を画するほどの巨大な赤いMSだ。

『見るからに指揮官機じゃん。あいつを落とすぜ?』

『待て、アウル!クッ――――』

獲物を見つけたとばかりに敵に突撃するアウル。それをエミリオは迂闊だと止めようとするが、周りの敵のビームによって動きを押さえつけられる。

『貰ったァ!!』

インコムが以前の戦闘で破壊されてしまい、簡易修理が施される際に代替武装として新たに装備したミサイルポッドのマイクロミサイルランチャーを赤い機体に向けて放った。一見それは必殺の攻撃に見えただろう。避けにくいタイミングを狙った上に、敵の意識はまともに戦闘を行えそうにない一機のMSに向けているのだ。
故にアウルは好機と判断した。それは一般的な戦術としては一切間違っていない。だが――――

『私にそのような手は通用せんよ』

ミサイルの存在を察知した赤い機体のパイロット――――ギルバート・デュランダルは反転して腹部の拡散砲が放たれる事で迎撃される。

『なッ、何ィ!?』

そのまま追撃にビームサーベルで切り裂こうとしたアウルは、逆に目の前の赤い機体に正面からメガビームライフルを中央の胸部に狙いを付けられる。巨体故に動きも重いと考えていたにもかかわらず一瞬で反転して迎撃所か反撃まで仕掛けようとしているのだ。驚愕するのも無理はない。

『G-Vか……その機体のデータは有益だったが、最早用済みだ。敵となり、その脅威を我々にふりまくというのであればここで仕留めるとしよう』

メガビームライフルが放たれる。咄嗟に回避行動を行ったアウルは何とか直撃を避けるがシールドごと左腕を破壊された。止めとばかりにもう一発今度はコックピットに向けて放たれようとするが横から放たれたビームによって何とか首の皮一枚つながる。

「チッ、この馬鹿野郎!介入する必要のない戦いに入り込むんじゃねえ!」

マーレが咄嗟にビームシールドから放ったビームで気を逸らすことに成功した。しかし、その攻撃もシールドによって呆気なく防がれてしまった為、これ以上の攻撃を行っても意味をなさない。

『敵からの援護なんて!』

「おい、避けろ!」

議長の乗る赤い機体はビームトマホークを手に取り、アウルの乗るG-Vを切り裂く。その攻撃によってオプション装備であるミサイルポッドが破壊されてしまった。

『下がれ、アウル!その敵は危険すぎる!!』

エミリオが退却の援護をしようと両腕にマウントされていた二挺のビームライフルを取り出して放つ。曲がるとはいえ取り回しの利きにくいスキュラよりも、連射できるビームライフルでの牽制の方が有効だと考えたのだ。だが――――

『戦いは非情さ、その程度の攻撃では私は落とせれん』

メガビームライフルがロッソイージスの持つライフルを撃ち抜く。

『その声は……ギルバート・デュランダル!――――ならば貴様を浄化すれば俺達の勝ちという事だ!この光の槍で!』

『今度こそ落とォす!』

エミリオがスキュラでアウルがビームカノンで同時に挟み込む様に狙い撃つ。前後から放たれたビーム。防ぐことは愚か、躱したとしてもロッソイージスのスキュラは曲がる。落としたと確信していたが、その期待はあっさりと裏切られる。

『これでも落せないのか!?』

「おい、無茶だ!その機体は尋常じゃないぞ!」

スキュラをシールドで受け流し、そのまま半回転することでビームカノンのビームを躱した。その様子を見たマーレは止めようと通信を送るが、彼らにそのような忠刻は意味をなさない。

『うっさいんだよ!アンタこそ下がれっての!そんなボロボロの機体でうろちょろと邪魔すんじゃねぇ!』

アウルがそう言ってマーレの忠告を無視し、それどころか退かないなら一緒に撃ち落とすとばかりにビームライフルを撃ち続ける。流石にマーレとしてもこれ以上忠告する義理は無い。撃ち落とされても困ると判断したマーレはそのまま撤退していく事にする。

『逃がさんよ!』

『それはこっちの台詞だ!』

マーレを追撃しようとした議長を止めるエミリオ。この大きな獲物を逃すわけにはいかないと考え、アウルと再び連携して落とそうとする。

『そう何度も、何度も、舐められてたまるかよッ!!』

『そうか、ならばいい加減、邪魔しないでもらう為に君達から落とす事としよう』

その攻防は一瞬だった――――何度も撃ちこんでいたビームを全て躱して懐に入り込んだ議長の機体がそのままビームトマホークでビームライフルを切り裂く。必死にすぐさま捨てたビームライフルの代わりに腰のビームサーベルを取ろうとG-Vの右腕を動かそうとしたのだが、議長の乗る機体の左腕で右腕の手首を掴まれた。

『ここで敵を斃さなくちゃ……スティングの仇を討てねえだろッ!!』

自らの意気込みを叫びながらアウルは必死に抗おうとする。前進するためのスラスターを総て全力で噴かすことで敵に体当たりをしようとした。しかし、そうやって無謀な突撃をするよりも、敵の攻撃を防御する手段を確保すべきだっただろう。
がら空きの左側からビームトマホークでG-Vは横一文字に切り裂かれた。

『ぁ……かあ、さん……』

その言葉を最後にアウルのG-Vは爆発し、彼の命は散っていった。

『ウオォォォォ――――沈めッ!コーディネーターァァァ!!』

エミリオが味方を落とされた怒りによる衝動とコーディネーターへの憎しみ、そして何より戦闘に対して冷静な思考を行っている部分が今ならば落とせると判断して切りかかる。両手両足から出る四本のビームサーベルが機体の中央部を捉える。
腕や足の一、二本はくれてやるという気概だ。四本の同時攻撃を逃れる術はない。仮にコックピットを一撃で貫いたとしても相打ちにはなる。まさに決死の覚悟――――良くて腕や足の一本、悪くても結果は相打ち。プラントのトップの首ともなれば自分の命など安い。そして彼が討たれれば戦いは終わる。エミリオは勝ったと確信していた。

『甘いな、戦いとは常に二手三手先を読んで行うものだ』

『ッ!?』

だが、攻撃は全くと言っていいほど通用しなかった。左腕を根元からビームトマホークで切り裂かれ、右腕をシールドで手首を弾く様に飛ばす。振り上げた両足のビームサーベルはスカートアーマー内に存在した隠し腕から取り出されたビームサーベルによって切り裂かれた。
そして、左手と両足を一瞬にして奪われたロッソイージスはそのまま反撃の隙を与えられることもなくチャージしていた胸部の拡散ビーム砲によって破壊され、エミリオもアウル同様一瞬にして散っていった。

『マーレには逃げられてしまったか。まあ行く先の予想はつく。問題はあるまい。それよりも、流石というべきか……この機体、確かナイチンゲールといったな。良い機体だ。私の要求するスペックを上回っている。あのクラウが最強のMSだと豪語するだけの事はあるか』

そう言って、議長の赤い機体――――ナイチンゲールが戦線を突き進む。ここに、ザフトの最強のMSの一機が顕現した。
 
 

 
後書き
というわけで議長の乗る機体はナイチンゲールでした!正直サザビーにするかシナンジュにするかは最後まで迷っていましたけど。
アウルとエミリオは残念ながらお亡くなりになられました。早い話が議長の強さを示すための生贄もしくは当て馬となってしまったのです……。
ミーアとカガリに関しては申し訳ない程度に現状を知らせただけです。彼女たちのおかげで現状を打破するとかいう展開は無いと思います。 
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