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久遠の神話

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第七十五話 避けられぬ戦いその六

「戦いを降りる」
「無事にですね」
「そうだ、一人は確実にこれで降りる」
「また一人ですか」
「これで三人だ」
 戦いを降りるのは、というのだ。
「そうなるだろう」
「そうですね、有り難いことに」
「さて、それではな」
「戦いを選ぶ剣士は五人ですね」
「そうだな、問題はその五人をどうしていくかだ」
「何かいい考えがありますか?」
 高橋は自分の前に立つ工藤の目を見て彼に問うた。
「工藤さんには」
「いや、あるとすればな」
「誰に対してですか?」
「王さんか」
 中国から来た料理人の彼だというのだ。
「あの人は富を求めているな」
「はい、そうでしたね」
「だからだ」
 それでだというのだ。
「あの人についてはな」
「お金があればいいですね」
「百億だったな」
 それだけあればだとだ、工藤は王自身が言っていたその言葉を思い出して高橋に言う。
「それを戦いで得られればな」
「あの人も戦いを降りますね」
「そうなるだろうな、考えてみればな」
「あの人の場合は比較的楽ですね」
 戦いを降りる為の条件を揃えることはというのだ。
「実にな」
「そうですね、じゃあ」
「一人ずつだ」
 戦いを降りてもらっていくというのだ。
「そうしていくべきだな」
「ですね」
「さて、俺達の話は今はこれ位にしてだ」
 工藤はスペンサーと王についての話が収まったところで高橋にあらためて話した。
「いい時間だ」
「あっ、お昼ですね」
「今日は何を食べる」
「そうですね、お好み焼きなんかいいんじゃないですか?」
 ここで高橋が提案するのはこれだった。
「お好み焼き定食ですけれど」
「いいな、店は猛虎だな」
「はい、そこです」
 高橋は店の名前も出した。
「あそこのお好み焼き量も凄いですしね」
「一枚が座布団みたいだからな」
「美味しいですし安いですから
「よし、じゃあそこにするか」
「はい、そこで」
「剣士の話もいいが何か食わないとな」
「腹が減っては、ですからね」
 高橋は工藤の今の言葉に笑顔でこう返した。
「だからですよね」
「そうだ、戦争も食わないと何も出来ない」
 餓えて敗北した話は枚挙に暇がない、日本にしてもガダルカナルやインパールで苦しんだ経験が二次大戦である。
「だからだ」
「それじゃあ」
 高橋は笑顔で応えてだ、そうしてだった。
 彼等は二人で食事に向かった、そしてそのお好み焼き屋に入ると。
 カウンターに智子がいた、いつもの知的な美貌を引き立てる渋い色のスーツとズボンという格好だ。その服でカウンターにいた。
 その彼女を見てだ、工藤が言った。
「奇遇だな」
「そうですね、しかしこうした出会いはです」
「縁だな」
「そうですね、では」
「話すか」
 こう言ってだ、工藤は智子の右に来た、だが高橋は。 
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