Element Magic Trinity
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トリプル ドラゴン
火竜と鉄竜、2頭の竜は1人の敵へと向かっていく。
ただ拳を振るい続け、ラクサスはそれをいとも簡単に避け続ける。
「ぐあっ!」
そして左手に雷を纏い、ナツに雷撃を浴びせた。
それを喰らったナツはガジルに衝突し、そのまま後方へと飛んでいく。
・・・前にガジルが行動を起こす。
「ブレスだ!」
「火竜の・・・」
一声叫んだと同時にナツが息を吸い、頬を膨らませる。
足が上、頭が下状態のナツの背中にガジルは自分の肘を当て、左拳を握りしめた。
「咆哮!」
「鉄竜棍!」
勢いよく放たれたナツの竜をも滅する炎。
その炎をブーストに、ガジルは鉄の棍へと変換させた左腕で突きを繰り出す。
それをラクサスは跳ぶ事で避けた。
「鉄竜剣!」
そこから体勢を変え、左足を鉄の剣へと変えて鋭い斬撃を放つガジル。
それをもラクサスは高く飛翔する事で避ける。
「フン」
攻撃を避けたラクサスはガジルに向かって左掌を向ける。
その手に光が灯り、すぐさま放たれたいくつもの雷の魔法弾がガジルを襲った。
「ぐぉわぁあっ!」
「ガジル様!」
「セルピエンテ、今は行かない方が身の為だ!」
ラクサスの容赦ない反撃にガジルは床を転がる。
それを見たシュランは柱の陰から飛び出していこうとしたが、2頭の竜と最強候補の激しい戦いに入る隙はないと察したクロスがそれを止めた。
「うおおおおおっ!」
「!」
雷の魔法弾を放ち、宙に浮いた状態のラクサスの背後から雄叫びが響く。
そこにいたのはナツだった。
―――――大聖堂の柱を凄い速さで真っ直ぐに駆け上がっている。
「火竜の・・・」
柱から足を離し、頭の上でナツは両手を合わせる。
「煌炎!」
そのまま両手に纏った炎をラクサスに叩きつける。
空中にいたラクサスに避ける術はなく、それを喰らったラクサスは地へと落ちていく。
「鉄竜槍・・・」
その落下地点にいるのは起き上がったガジル。
右手を鋭い鉄の槍へと変え、勢い良く地を蹴った。
「鬼薪!」
そして落下してきたラクサスに向かって凄まじい速さで連続の突きを放つ。
ドッとラクサスは地面に倒れた。
宙から落ちてくるナツと床に立つガジルは素早くアイコンタクトを取ると――――――
「火竜の・・・」
「鉄竜の・・・」
2人同時に大きく息を吸って頬を膨らませ――――――
「「咆哮!」」
同時にブレスを放った。
竜をも滅する紅蓮と鋼鉄がラクサスを襲い、爆発を起こす。
大聖堂の床が砕け、凄まじい魔力と爆風、爆発の際の光が辺りを覆う。
「凄い・・・凄すぎる・・・」
「竜迎撃用の魔法を操る者同士が同じ敵を倒すという目的を持って戦った場合・・・これほどまでに強力になるとは・・・」
柱の陰に隠れてナツとガジル、ラクサスの戦いを見ていたシュランとクロスはその凄さに感動を覚えながら声を零す。
ナツとガジルは2つの咆哮によって発生した土煙を見据えていた。
パラパラと小さい瓦礫が落ち――――――――
――――――――煙の中から、人影が現れた。
「「!」」
「え!?」
「なっ・・・!」
その人影は動く。
煙を切り裂くように1歩1歩足を進めて。
「2人合わせてこの程度か?」
その言葉に、人影に、ナツとガジルの体が震える。
その声の主は煙の中から姿を現した。
「滅竜魔導士が聞いてあきれる」
姿を現したのは、ラクサス。
上半身の服はなく、上半身左側に刻まれた紋章とタトゥーが露わになっている。
そして1番驚愕であり戦慄なのは――その体に目立った傷がなく、ほぼ無傷に近いという事だ。
「バカな!」
それを見たガジルは叫ぶ。
ラクサスは首をコキコキと鳴らしながら足を進めた。
「いくらコイツが強ェからって・・・竜迎撃用の魔法をこれだけ喰らって・・・ありえねぇ!」
そう。
先ほどまでの攻撃は、本来竜を滅する為の魔法。
竜は人間より遥かに強い生き物だ。
だから、人間が竜迎撃用の魔法をあれだけ喰らって倒れていないのはおかしいのだ。
いくら相手が最強候補のラクサスとはいえ、根本的には人間。
本来なら、倒れているのが当然なのである。
「そいつは簡単な事さ」
ガジルの言葉にラクサスは笑みを浮かべる。
「ジジィがうるせぇから、ずっと隠してきたんだがな」
そう言うラクサスの開いた口。
そこから覗く犬歯が小刻みに震え―――――――
「特別に見せてやろう」
ギリッ、と。
まるで牙のように鋭く尖った。
「ま・・・まさか・・・」
「ウソだろ?」
続くように、その両腕に鱗のようなものが現れる。
それが現し、示すものはただ1つ――――――。
それを見た瞬間、2人の顔は驚愕一色に染まった。
「雷竜の・・・」
息を大きく吸い込むと同時に、雷が集まる。
それを見たナツは目を見開き、叫んだ。
「お前も滅竜魔導士だったのか!?ラクサス!」
その問いに答えは出なかった。
否――――言葉での答えは出なかった。
「咆哮!」
その口から放たれたのは、強力な雷のブレス。
荒ぶる感情をそのままブレスにしたかのような激しい雷は、迷う事無くナツとガジルを襲った。
「あああああああっ!」
「ぐあああああああっ!」
そのブレスは1人で放ったもの。
が、その威力は先ほどのナツとガジル、2人のブレスと同等、もしくはそれ以上の力を持っていた。
「っ・・・くあっ!」
「!セルピエンテ!」
その衝撃は距離のある柱の陰にいたクロスとシュランにも及んだ。
吹き飛ばされそうなシュランをクロスが受け止める形で助け、何とかその場に踏み止まる。
「っ――――――!」
「クロス様!」
「俺はいい・・・ドラグニルとレッドフォックスは!?」
体中を襲う痛みに顔を歪めるクロスをシュランは心配そうに見つめるが、クロスはその後ろに見えるナツとガジルに目を向けた。
「ドラグニル!」
「ガジル様っ!」
慌ててクロスとシュランが柱の陰から顔を出すと、ブレスの通った床は砕け、その周りの床にも亀裂が入っていた。
そしてその砕けた床の上に、2頭の竜は倒れている。
「あ・・・うあ・・・」
「くうう・・・」
苦しそうに呻く2人の体を時折細く小さい雷が走る。
「まだ、生きてんのかよ」
床に倒れ呻く2人に対し、吐き捨てるように言うラクサス。
「うう・・・」
「か、体が・・・麻痺して・・・」
何とか立ち上がろうとするナツとガジル。
が、先ほどのブレスによって体が痺れ、動けない。
「いい加減くたばれよ」
ラクサスが言い放つ。
「お前らもエルザもミストガンも、あの口の悪ィ女王様も、ジジィもギルドの奴等もマグノリアの住人も・・・」
言葉を紡ぐ。
ラクサスの体が怒りを溜めこんでいるかのように震え―――――――――
「全て消え去れェェッ!」
感情全てが爆発したかのように、ラクサスが叫んだ。
その瞬間、ラクサスから凄まじい量の魔力が溢れ出す。
その魔力は両手へと集中していく。
「な、何だ・・・このバカげた魔力は・・・」
膨大で強大。
凄まじいという言葉が何よりも似合うであろう魔力に、ガジルの体が自然とがくがく震える。
「怖い・・・あの方は・・・恐ろしい・・・っ!」
ぺたんと座り込み震えるシュランの目にはうっすらと涙さえ浮かんでいた。
「この感じ・・・じっちゃんの・・・」
「ありえん・・・まさかこれは・・・マスターの・・・」
ナツとクロスは、ラクサスが放とうとしている魔法に覚えがあった。
否、正確にはガジルとシュランも知っている。
術者が敵と認識したもの全てが標的。
温かく、優しい、全てを包む聖なる光。
今や伝説に数えられる、マスターマカロフの超絶審判魔法。
妖精の尻尾が創られてから代々存在する、妖精三大魔法の1つ。
聖なる光で闇を砕き、討つ。
その魔法の名は――――――――――――
―――――――――――――妖精の法律。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
ふと思った事。
ヴィーテルシア、どこ行った・・・?
そして考えた。
きっと今はマグノリアの隅から隅まで駆け巡り、自力で歩けなさそうな重症者達をギルドに運んでいるだろう・・・と。
ごめん・・・ニルヴァーナ編では活躍の予定だヴィーテルシア。
感想・批評・ミスコン投票、お待ちしてます。
やっぱりトップ3しか決まらない・・・まぁいいか。
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