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言う程もてない

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第六章

「誰も声をかけてこないわ」
「横に藍ちゃんがいるからでしょ」
「マネージャーみたいに」
 今度の例えはこれだった。
「それで誰が声をかけるのよ」
「殺人未遂はんみたいな目をしてるのね」
「それで声をかけるって勇気がいるわよ」
「取って食べられそうだから」
 これが周りの言葉だった。
「というか秀幸君のお母さんや妹さんにまでまさかと思うって」
「幾ら何でもないでしょ」
「何で家族までがそこで入るのよ」
「どうした世界なのよ」
「あるでしょ、そういうの」
 しかしだった、藍は彼女達に真面目にこう言うのだった。
「実際にね」
「凄く僅かな例でしょ、妹となんて」
「ましてやお母さんが息子にって」
「あのね、それそうしたゲームの話だから」
「普通はないわよ」
「絶対にね」
 ないというのだ。
「幾ら何でも無茶なこと考え過ぎ」
「家の中は何もないわよ」
「というか藍ちゃん秀幸君のお母さんや妹さんとも仲いいでしょ」
「二人共よく知ってるでしょ」 
 つまり家族公認の仲であるのだ。
「お家にも何度も行ってるし」
「それなら知ってる筈よ、どうした人達か」
「それでそう疑うってのはね」
「幾ら何でも失礼よ」
「よくないわよ」
「確かにそうね」
 言われて気付いた藍だった、そういえばそうだと。
「じゃあそれはね」
「ないってことでね」
「考え過ぎなのね」
 自分で言う藍だった。
「このことは」
「そう、幾ら何でもね」
「それは有り得ないから」
 周りもこう藍に念を押す。
「というか疑えばきりがないわよ」
「そもそもあんたが告白して付き合うまで秀幸君にそんな話あった?」
 クラスメイトの一人が真剣な顔でこう問うてきた。
「そういうお話あった?」
「あっ、そういえば」 
 その言葉を聞いてだった、藍もはっとした顔になった。
 そのうえでだ、こう答えたのだった。
「ないわ」
「でしょ?秀幸君はいい人だし顔もいいけれど」
「それでもなの」
「彼位の人は一杯いるから」
 秀幸の性格と顔のレベルでは、というのだ。そのスタイルもだ。
「普通にね」
「だからなの」
「それじゃあそんなにもてないから」
「もてないの?」
「少なくともあんたが考えている程にはね」
 もてないというのだ。
「私はそう思うけれどね」
「ううん、だといいけれど」
「少なくとも。いつも一緒にいないで」
 番犬の様にだ、最近の様に。
「ちょっと離れてみればわかるわよ」
「そうなのね」
「というか皆言ってるじゃない」
 秀幸の傍にいつもいて周りを監視することはというのだ。
「あんなことしてもわからないって」
「じゃあちょっと見ていたら」
「わかるわよ、むしろ離れた場所から秀幸君の周りを見ていたら?」
 そうすればどうかというのだ。
「そうしたらわかるわ」
「じゃあそうしてみるわね」
 藍はようやく周りの言葉を受け入れた、そしてだった。 
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