ローマ帝国
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第二章
「ここが第二のローマになる、新たなローマ帝国のな」
「では、ですね」
「ローマは新しく生まれ変わりますか」
「この街ならペルシアにも東方の民族にもすぐに対応出来る」
どちらもローマの宿敵だ、特にペルシアにはローマは何度も煮え湯を飲まされているがその宿敵にだというのだ。
「いい街だ、ローマはこの街から生まれ変わるのだ」
「キリスト教を認めそのうえで」
「あらたに」
こうしてだった、ビザンチウムはコンスタンティノープルと名前を変えてそうしてだった。
帝国の新たな都になった、そして。
コンスタンティヌスが世を去って少し経ってから再び帝国を揺るがす大きなことが起こった、それは何かというと。
帝国が東西に分裂したのだ、西は西ローマ帝国、東は東ローマ帝国となった。
その東ローマ帝国、ビザンツ帝国の帝都は言うまでもなくコンスタンティノープルになった、この街においてだった。
帝国の者達は高らかにこう言うのだった。
「この街こそがローマの帝都だ」
「そうだな、この街こそな」
「西ローマ帝国はじきに滅びる」
「既にゲルマン人達を抑えられなくなっている」
「内もがたがただ」
「それに豊かな地の多くは我々が持っているからな」
特にエジプトだ、ローマ帝国の穀倉地帯であるこの地域も手に入れていることが非常に大きかった。それでだった。
彼等は自分達こそローマ帝国だと確信していた、そして実際に。
ビザンツ帝国は長く栄えた、西ローマ帝国は程なくして滅びその後は多くの民族、国家が興亡しカール大帝等の英傑が出ても。
戦乱が続き混乱していた、その西側をよそにビザンツ帝国は長く栄えていた。
しかしその栄華も終わる時が来た、やがてビザンツ帝国の宿敵にもなっていたササン朝ペルシアすら滅ぼしたイスラム教徒達がビザンツを脅かしたのだ。
コンスタンティノープルにも何度も迫った、しかし三重の城壁と海に守られたこの都は陥ちなかった。しかし彼等との戦いで力を消耗し。
十字軍、同じキリスト教徒である筈の彼等にも襲われ一度は陥落した。その中でビザンツ帝国は決定的に没落し。
遂にイスラム教徒、オスマン=トルコにより帝国は滅ぼされた。陥落したコンスタンティノープルはイスランプールと名を変えられてオスマン=トルコの都となった。それを見て西欧の者達は冷めた目でこう言った。
「ローマ帝国は滅んだな」
「東ローマ帝国はな」
「これで唯一のローマ帝国は神聖ローマ帝国になったか」
「もっともローマはもう帝都ではないがな」
神聖ローマ帝国は諸侯の力が強かった、寄り合い所帯でありローマやコンスタンティノープルの様な帝都は存在しなかった。
それでだった、彼等は。
「もうローマはないな」
「コンスタンティノープルは第二のローマだったが」
「今のローマは教皇庁でしかない」
「帝都はもうない」
「何処にもな」
彼等はこう考えた、だが。
ビザンツ帝国の皇女の一人がある国に嫁いでいた、その国の名はモスクワ大公国という。つまりビザンツ帝国の血はこの国に受け継がれたのだ。
このことからだ、この国は大公国から帝国を称した。そしてモスクワにおいてイワンという男は帝冠を頭に戴き言った。
「ローマ帝国は我が国だ」
「この国がですか」
「そうなのですか」
「そうだ、ロシアがだ」
彼等の国こそがというのだ。
「第三のローマだ、そして私が皇帝だ」
「ローマ皇帝ですか」
「貴方様が」
「その証に私は正教の教皇でもある」
ビザンツ帝国は皇帝が正教の教皇も兼ねていた、皇帝教皇主義だ。そしてこの国の皇帝もそうだからだというのだ。
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