チコリ
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第七章
「それでまた向かうんやで」
「そうすればですね」
「そや、ええねん」
「だから今日の私も」
「全力でいけたやろ」
「はい、もうそれこそ無心で」
ウィッグに自分のヘアースタイルを表現出来た、鋏の動きも実によかった。
「いけました」
「それでええんやで」
「順番とかは二の次や」
「確かに優勝出来たらそれに越したことないけれど」
「問題は全力でいけるかどうか」
「迷いなくやで」
「そういうことですね」
このことだ、薫は先輩達に言われてわかった、そしてそうなれたきっかけのことも。
自分の頭のそれに触れてだ、そして言うのだった。
「後は結果の発表だけですね」
「うち等はもう皆終わったさかいな」
「それやったらな」
「もう後はお茶飲んで待つだけやで」
「お昼食べてな」
「そうですね、じゃあゆっくりと待ちます」
終わればもうあれこれ考えても仕方がない、薫は割り切って考えることが出来た。それでこう言ったのである。
「お昼を食べて」
「ほな今日は何食べる?」
「カレーにする?」
「いや、カツ丼やろ」
「ラーメンがええやろ」
今度は昼の話になった、そしてだった。
薫は先輩達とくつろいで結果を待った、そしてその結果はというと。
入賞はしなかった、だが順位はよかった。先輩達はその薫に笑顔で言った。
「新人でその順位はええで」
「中々やるやん」
「これは将来有望やな」
「頑張ったやん」
「意外です」
その順位を見てだ、こうも言う薫だった。
「こんないい順位なんて」
「全力で前に行ったさかいな」
「それでよかったんや」
「そやからこれからもな」
「そうしていくんやで」
「わかりました」
薫は先輩達の言葉に笑顔で頷けた、そして。
家に帰って母にコンテストのことを話した、すると母は娘に明るい笑顔でこう言った。
「よかったわね」
「うん、今回もね」
「チコリのお陰っていうのね」
「お母さんがくれたね」
「チコリって明るい感じの花でしょ」
「うん」
これまで頭に飾ったチコリを手に取って自分の目で見る、そのうえで言うのだった。
「青くて可愛い形で」
「そうでしょ、それに食べても美味しいし」
「いいお花よね」
「明るくてね。そう、明るいから」
だからだとだ、母は娘に話すのだった。
「薫ちゃんにあげたのよ」
「お守りになのね」
「子供の頃からね。何でも明るく出来る様にね」
「前向きになのね」
「後ろ向きだと駄目なのよ」
何かをするにあたって、というのだ。
「前向きにしてこそだから」
「だからだったの」
「そう、薫ちゃんのお守りにしたの」
母は今娘にこのことを話すのだった。
「チコリの花言葉は本来は違うけれど」
「質素、倹約よね」
これがチコリの花言葉だ。花によってその花言葉は違いチコリはそれになるのだ。
「それだったわね」
「ええ、そうよ」
母もその通りだと答える。
「明るさとかそういう意味じゃないわ」
「けれどチコリを見てのイメージから」
「そうだったの」
「そうよ、実はね」
「チコリが明るいイメージだから」
薫はその花を見つつ母に応える。
「私に明るく前向きになってもらいたくて」
「それがよかったみたいね」
「ええ、じゃあこれからもね」
薫は微笑み母にまた応えた。
「このお花私のお守りにしていくから」
「そうするのね」
「ずっとね」
「そうしてくれるとお母さんも嬉しいわ」
「お母さん有り難う」
薫は母にあらためて礼を述べた。
「私このお花があったから美容師にもなれたしこれからも頑張るから」
「そうしていくのね」
「うん、ずっとね」
母に満面の笑顔で言う、そしてだった。
薫はチコリをお守りにし続けた、美容師としてだけでなくその人生で重要な時はいつもチコリを見た。そうして明るく前向きに頑張っていった。
チコリ 完
2013・10・25
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