とある蛇の世界録
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月光校庭のエクスかリバー 第一話
前書き
遅くなりましたが、再開します
もし、お待ちしていてくださった方がいましたら、心よりお礼申し上げます。
今日のオカルト研究部の活動は、一誠の家で行われている。なんでも、今日は旧校舎で改築工事が行われるらしいと朧は聴いた。
今は、一誠の部屋で活動をしている――筈なのだが。
「こっちは小学校の時の写真ね」
「あらあら、全裸で海に入ってますね」
「母さん! そんなもん見せんなよ! 朱乃さんも見ないでッ!」
先ほど、一誠の母親が持ってきたアルバムによって、話の方向が捻じ曲がった。
「……イッセー先輩の赤裸々な過去」
「いやぁぁぁぁぁぁッ!!」
小猫の一言で、一誠が完全に沈んだ。床に両手をついて涙を流している。
そんな中、朧といえば。
アーシアとヤトに囲まれて、会話に花を咲かせていた。
「朧さんも、写真とか取らなかったんですか?」
「あぁ、私は無いな。――いや、一度だけあったか。ずっと昔のことだが」
「父上は機械音痴というやつだから、仕方がないよご主人」
「余計な事を言うな、ヤト」
それを見て、苦笑いする面々。
「部長。あれ、そろそろマズイですよね? 百合ハーレムですよ。はじめてみましたよ俺。あんな光景。その辺のとはレベルが全然違いますよ」
「イッセー、諦めなさい」
例のごとく、しっかりと朧の耳には聞こえているが、もう慣れてしまったのでスルーする。
また、それに苦笑いした木場が、一誠のアルバムに手をやり、ページを開いていく。
「木場ぁぁぁ!! お前には絶対にみせねぇぇぞぉぉぉッ!」
「アハハ。いいじゃないか、もう少しイッセー君のアルバムを楽しませてよ」
一誠の最後の叫びを、さわやかに受け流す木場。イッセーが立ち直るためには、まだ少し時間が掛かりそうだった。
それは、一誠が幼稚園の頃の写真だった。パラパラと、ページを捲っている木場だったが、一つのベージでその手を止め、表情を変える。
――それは、憎悪の目だった。
「どうしたんだ? 木場」
だが、そんなことに気付くはずもないイッセーは、笑いながら木場に問いかける。意外にも早い復活だった。
「……イッセー君。これに見覚えは?」
そのページの写真の一つ。
写っていたのは二人の少年と白髪の神父。その後ろに讃えられた一本の剣だった。
「うーん。いや、子供の頃だからもう覚えてねぇや」
「そっか……」
「それなんなんだ?」
憎悪に満たされた目で、一誠に微笑む。
「これは聖剣だよ」
一方、アーシアやヤトと話をしながらも、その会話が耳に入っていた朧は、考えを巡らせる。
「? どうしたんですか? 朧さん」
「……いや、なんでもない」
そんな中で、朧は不適なほどに、不敵に微笑んで、こう言った。
「――ただ、面白いことがおきそうだと思っただけだよ」
と。
□□□◆◆◆□□□
カキーンッ! と、ボールがバットに当たる、軽快な音が鳴った。そのボールは、高く晴天に舞い上がり、一誠の近くへと落ちていく。
「オーライ、オーライ」
一誠の手にはめられたクラブに、ボールがすっぽりと収まった。
「ナイスキャッチよ! イッセー!」
リアスが一誠に声を掛ける。
そして、二個目のボールを手に取り、アーシアに向かって打つ。ボールの速さは大した事は無いが、ボールはアーシアの股を抜け、ライトの守備位置まで飛んでいった。
「あぁっ! む、難しいですね。野球は……」
まぁ、仕方ないだろうと思い。特には口に出さないリアスだった。――すると、聞こえてきたのは、豪快にミットへとボールが収まった音だった。
そちらのほうに目を向けると、そこには投球フォームに入った朧と、それに身構えるヤトの姿。
それは、とても鮮やかで美しいフォームだった。
見学していたいくつかのギャラリーたちも、静かに息を止める。
朧は、ミットを高くあげ、身体をひねる。そのままの勢いでボールを振りかぶって――投げた。
聞こえたのはミットの音――次いで、ボールが空気を裂く音だった。
それは、つまり朧の投げたボールが音速を超えたということなのだが、さきほどの美しすぎるほどに芸術的な投球に目を奪われたギャラリーは、うっとりとした表情で朧を見つめる。
「ふむ、難しいな、ボールを投げる力加減は」
「まぁ、仕方ないよ。父上」
実際のところ、朧が本気を出してボールを投げれば、地球を数十数周回する程度なのだが、その前にボールが摩擦で燃え尽きてしまう。
最初の投球では、実際にそうなった。
リアスは、溜息を一つ吐き、木場に向かってボールを打つ。
高々と、飛び上がったボールは、木場の近くまで飛び、そのまま木場の頭へと吸い込まれていった。
「おーいッ! 木場ッ! しっかりしろよ!」
「……あっ、ごめん」
そのまま、ボールを拾い、ぎこちなく投げ返す。
「どうしたの祐斗? ぼけっとして。あなたらしくないわよ?」
「すいません。大丈夫です」
つい最近の木場は、いつもこんな感じだった。きっかけは、おそらくあのアルバムだろうが。
それを見た朧は、ニヤリと笑い、ボールを投げる。
その球は、いまだに音を追い越したままだったが。
後書き
感想くれると、うれしいです。
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