少年と女神の物語
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第二十九話
あの後、家族全員で席について、話を聞いていた。
「じゃあ、まずは帰ってきた理由から」
「一つ目は、私の子供達に会うためよ!」
「二つ目は?」
とりあえず、母さんは無視して父さんに問いかける。
こうなった母さんは、いくら対応しても無駄。無視するべきだ。
「二つ目は、久しぶりに家族旅行に行こうと思ったんだ。最後に行ってから四人増えたしな」
「じゃあ、三つ目はなんなのかしら?」
まあ、それだけならこの人たちは帰ってこない。
現地集合にするはずだ、間違いなく。わざわざ一度帰ってくるのも、時間が無駄だと考える人たちが、神代家の両親なんだから。
「三つ目は、武双と後誰か二人に一仕事行って来てほしくてな」
「ん?俺?」
わざわざ俺を指定してくるのは意外だった。
今までにこの人たちから頼まれることは、基本手が空いた人がテキトーに、だったからな。
「ああ、武双は指定だ。ちょっと、面倒な状況でな」
「・・・ああ、それで大体なんでもどうにかはなる俺に?」
「そういうことだ」
まあ、『どうにか』はなっても『丸く収まる』ことは少ないけど。
力技以外、やれるようなことないしな。
「それで、残りの二人なんだけど・・・どうしようかしら?」
「オイ、決めてないのかよ」
「当然よ。この二人は、武双くんのストッパー兼治癒役だもの」
「後の方の理由、どういう意味か分かってるのか!?」
親としてはどうかと思う。
って、元々そういったことを許可してたな、この二人・・・
「立候補、は募っても無駄そうだな。一体何人が手を上げるのか」
「そうね。少なくとも半分は手を挙げるでしょうし」
「・・・内容については、まだ話さないのか?」
それによっては誰が適任、というものがあるかもしれない。
が・・・
「それは、メンバーを決め手から話す」
「その心は?」
「・・・多分、まだそのときではないわ」
「・・・OK」
母さんの瞳の色は、翡翠色に変わっている。
天啓が降りたのだろう。
「あ、そうだわ!皆、体調が悪かったりはする?」
全員、首を横に振った。
「なら、私と隆哉さん対子供達十二人!もちろん、武双くんとアテちゃんは権能を使っちゃダメよ?」
「ちょ、何を言っているんですか!?」
母さんの提案に、アテは驚きの声を上げた。
他にもマリーと切歌、調が驚きの表情を見せているが・・・残りは皆、本気で緊張する。
「せめて、どっちか一人にしないか?」
「何言ってるデスか、ムソウ!?」
「だめよ。すぐに終わらせないといけないもの」
「え・・・?」
「それって、どういう・・・」
事情を知らない四人は俺と母さんの会話に戸惑いを隠せずにいるが、準備を終えた崎姉が四人に説明をする。
「四人が驚くのは最もだけど、実際にはそうでもないのよ」
「と、言うと?」
「母さんも父さんも、すっごく強いのよ。昔、アテちゃんが来る前に全員でかかったんだけど、一人に対してですら、完敗だったわ」
「「「「・・・・・・」」」」
開いた口がふさがらない、まさにそんな状態となっている四人だった。
「そう言うわけだから、切歌と調はイガリマにシュルシャガナを使えよ。アテも、封印外して。権能は使っちゃダメだけど」
「そ、そこまで・・・?」
「そこまで。手を抜く必要はないからな」
そんなことを話している間に、全員の準備が終わった。
「皆準備終わったみたいね。じゃあ、始めましょうか!」
母さんがそう言いながら地下に向かっていくので、全員でその後に続く。
ああ・・・どうなることか・・・
◇◆◇◆◇
「じゃあ、皆準備は出来た?」
「出来たけど・・・本当に大丈夫なの?」
いまだにマリーは信じられないようで、母さんと父さんに聞いている。
「まあ、気にするな。まだ子供達に負けるほど衰えちゃいない」
「そうね。子供達には、まだ負けないわ」
が、二人はそんなこと気にする様子もない。
むしろ、父さんは日本刀を、母さんはレイピアを持ってやる気満々だ。
そして、四人以外の兄妹(姉弟)もまた、武器を持ち、いつでも戦える体勢になっている。
「まあそう言うわけだから、四人も早く準備して」
「・・・分かったけど」
「どうなっても知らないデスよ」
「うん、手加減難しいから」
「私は、手加減できないから」
そう言いながら、アテはブレスレットを外し、切歌と調はザババの双剣を展開、マリーは呪術で筋力、身体能力を上昇させる。
「じゃあ、勝負開始!」
母さんの宣言と同時に、俺が父さんに、崎姉が母さんに特攻を仕掛けるが、簡単にいなされ、元いた位置まで慌てて戻る。
「あー、ダメだこりゃ。俺も少しは強くなったつもりだったんだけど」
「私もよ、武双君。けど・・・」
そう、向こうはそれ以上に強くなっている。
権能を使えばまず間違いなく勝てるけど、それはダメだからな。
「確認は終わり!全員、気を抜かずに本気でかかれ!」
さすがのアテたちも俺と崎姉の様子を見て理解したのか、もうあの二人に攻撃することに躊躇いはなかった。
さて、勝てる気がしないぞ、これは。
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